第121話 白馬の王子さま? は、人魚の姫へと不満を漏らします。(6)

 告げ、嘆願をしてきたのだ。


 それも? 僕の頭を愛おし気に優しく撫で、頬ずりしながらハグと抱擁までしてくれながら労りをしてくれる。


 そう、僕の傷ついていた心を癒してくれる。


 ……どころではない。


 僕自身が世間の荒波に耐えきれなくなり溺れ死んだことを忘れていくくらい。


 僕の人魚の姫さまは、童話の如く。白馬の王子さまである僕を優しく包み、労ってくれるのだ。


 だから嬉しい。嬉しい僕。僕だったけれど。


〈ドン!〉と。


 あっ? だよ。


 だって? 地面からいきなり音──!


 それも? 何かかが倒れた音がしたのだ。


 だから僕は「えっ?」と、驚嘆を漏らし。倒れた者を確認する。


 すると僕の人魚の姫さまがね? 夫である僕への熱く優しい抱擁をする行為をやめて。その場に倒れこんでしまった音だったのだ。


 と、なれば?



 僕は自身の顔色を変えて、シルフィーヌを抱きかかえる。


「シルフィーヌ! シルフィーヌ! どうしたの! しっかりして! シルフィーヌ!」


 と、絶叫を交じりの声音で、僕は自身の大事な財宝、宝物へと声を呼びかけるのだ。


 何とか、目を覚ましておくれ。シルフィーヌ。お願いだから……と願い。願を込めて、僕の人魚の姫さまへと声をかけ続けるのだ。


 この漆黒の闇に覆われた空間の洞窟内に、僕の声が響き、外まで木霊するぐらいにね。僕はシルフィーヌの名を呼び叫び続けたのだった。



 ◇◇◇◇◇

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