第111話 人魚の伯爵令嬢さまは押しかけ女房?(3)

「えぇ、えええ~。どういうことなのですかぁあああ~? 人魚の姫さまぁあああ~と、言うかぁあああ~? あ、あなたのお腹に、ぼ、僕の子供がいるってぇえええ~。どういう意味~? 意味なのですかぁあああ~?」と。


 僕は驚愕、驚嘆を、声を大にして叫ぶ、叫ぶのだ。


 まあ、当たり前のこと、というか? 普通男性(ひと)は皆そう、思う筈だ? だってさ? 僕は、人魚の姫さまの不満や愚痴、嘆きの通りならば。他界──。冥府、黄泉平坂、極楽浄土……。




 実際僕自身も今の今と、いうか? 先程まで、人魚の姫さまの大変に柔らかく、この世の者ではないのではと思われる程の、居心地と安らぎを与えてもらっていた。彼女の膝枕の最中では、桃源郷にいる天女さまに膝枕をしてもらっている最中だと、ばかり思っていたぐらい。


 僕自身が他界していたのだと思っていた。いたのだよ。ッて?



 ──あっ? そういえば僕? 自分自身の死に逝く寸前の大変に幸せなひと時……。僕の夢幻だと、ばかり思っていた天女さまとの艶やかなひと時……。妖艶、官能的なあの戯れ、交わり、昇天などは、全部現実の世界──。僕の妻だと申し、自身のお腹に子ができたかもしれないと。弱々しく女々しい僕を叱咤琢磨──気合を入れる為に荒々しい暴力──。叩く(はたく)、叩く(たたく)、殴りを繰り返しながら。僕の顔の表情、大きさを変え、変化させようとしている人魚の姫さま、妻だと申している彼女とのラブラブ的、夫婦的な繋がり、交わりだったのかもしれない。と、僕自身が脳裏で思うと、己の顔色が一気に変わる。


 そう、変化をするのだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る