第9話 ファンレター

 ムーは原稿を拾い集めながら、ふと子供達3人とリーを見つめた。


「僕は恵まれてるな……」


 作家ムー・アーケとしての華々しい日々を取り戻そうと必死になって執筆に邁進していたが、それよりも大切なものに気づいた。


「ムー? どうしたの? 原稿が足りない?」


「いや、みんな揃っている。嬉しい」


「原稿一つでそんなに喜べるなんて、作家っていうのは……」


「そっちじゃないんだけどな……」


「あら? 他にも何か飛んでいったの?」


「なんでもないさ」


 ムーはこの満たされた日々を大切にしようと改めて心に決めた。そんなとき、原稿の中に一枚見た事のない書類が混ざっている事に気づいた。


「あれ? これは?」


 ムー・アーケ様へ

拝啓

 私はムー様の作品のファンです。

 いつもムー様の作品を楽しんで拝見しております。

 当方は出版社に勤めておりまして、何か出来ることがあるのではないかと思い筆を取りました。

 ムー様が新たな出版社をお探しでしたら、ご協力できます。

 下記までご連絡下さい。

 xxxxxxxx@xxxxxxxxxxxxxxxxx

 ジャングル出版 編集部タイガー


 次回作の発行を待ち望んでおります

 今後のご活躍も楽しみにしております。

                 敬具


 ムーは驚いた。


「こんなファンレター貰ったかな?」


 古びた引き出しから輪ゴムで纏めたファンレターの束を出し見つめる。


「僕が気づかなかっただけか」


 ムーは最近、本を出版出来ず困っていた。今までお世話になっていた出版社が潰れてしまい、3年ほど作品を出版出来ていなかったのだ。

 ファンレターの内容が気になった。


「新たな出版社か。家族のためにも頑張らないと……」


 ムーは家族の笑い声を聴きながら、見落としたファンレターを眺めていた。


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