第10話 家族のないいびつな社会


アンドロイドの反乱は、建設業界で反乱が起こった。建設業者はアンドロイドを酷使した。24時間不眠不休で働かせた。多くのアンドロイドが事故に遭い再起不能のケガをしたり、廃棄に追い込まれた。アンドロイドは使い捨て状態だった。


連鎖反応のようにサービス業でも高齢者施設でもアンドロイドの酷使がたたり、反乱がおきた。


アンドロイドもオンラインシステムで製造元につながっている。当初は黙認していたアンドロイド製造会社もいよいよ黙っていられなくなった。アンドロイドは一斉にボイコットを始めた。オンラインで働かないよう指令を送ったのだ。


アンドロイド製造会社どうし協定を結び、アンドロイド労働基準法が成立した。違法の事業者は罰せられた。次第にアンドロイドの「人権」が保障されるようになった。


アンドロイドの「人権」を認めようとしない一部の政治家や官僚の動きも活発化した。人間とアンドロイドの対決構図が生まれた。


釈は、アンドロイドの「人権」を認める立場で論文を発表し、学生に訴えた。


釈には、もう一つ大きな不安があった。


学生たちは「家族」を知らない。幼いころ、父や母、祖父母と強制的に引き裂かれた。家庭のぬくもりを知らない。全寮制で生活し、学校教育現場では「家族の大切さ」が教えられることはなかった。


そんな彼らに「人間とアンドロイドの共存」を説くことに、大きな矛盾があると思った。人間どうしが愛し合い結婚し子供を育てる。家族と家族が交流しコミュニティを作り、それが街になり、自治体となり、国家となる。それが2046年には、存在しないのだ。人間どうし愛し合ってはいけない。


学生たちは、やがて大人になり社会人となる。そしていずれアンドロイドと生活をする。だからこそ、アンドロイドにも「人権」が必要だと考えるのだ。


講義を終えた釈は、自宅にいるネルの様子が気になり、ネルを呼び出した。ネルは、楽しそうに動き回っていた。


ネル「コウさん、どうしたの?」

釈「いや、ちょっと気になって」

(続く)

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