第58話 駄女神の血統!? 誰ですぅ、今日のタイトル考えたのは!
レイアの場を考えない叫びにダンテ、リアナだけでなく追いかけてきていた兵士達も巻き込み、当の雄一までが目を点にさせる。
「はぁ?」
兵士達を助けるように現れた雄一が肩から力が抜けた様子で青竜刀を肩に乗せる。
驚きから復帰したアリア達もマジマジと雄一を見つめると被り振る。
「ユウ様はそんな品のない笑い方をしませんの! もっとエレガントに……」
「何を言ってんだよ! オトウサンは悪戯を楽しんでるような笑い方をさ!」
「違う、ユーイはガハハって笑う」
突然現れた雄一を無視してスゥとレイア、ミュウは顔を突き付けて主張し合う。
置いてけぼりを食らうダンテとヒース、リアナ、そしてデングラが同じように顔が触れるように寄せ、呆けている雄一達を横目に話し始める。
「何ですか? ここには馬鹿しかいないんですか?」
「僕はユウイチさんと会った事ないんだけどレイア達が言うような感じなの?」
「間違いでもないんだけど、そんなユウイチさんの反応を普通に見てたのはアリア達ぐらいだよ。普通はあんな感じなのをアリア達はほとんど見てないから」
「そうだよな、俺様もユウイチ様はあんな感じだったしな。でも、ちょっと軽薄というか……」
そう、アリア達の前の雄一は他とは違う反応を示す事が多かった。
家での父親と職場の父親が別人のようだったりするアレのようなものである。
ダンテはアリア達と行動する事も多いがテツとセットで巻き込まれるようにして男の顔をする雄一に連れ回される事もそれなりにあり、あのような表情をするのを見る機会があった。
そのように見る機会があったダンテだからこそ分かる。
「うん、デングラの言うように僕もそう思う。僕が知っているユウイチさんはもっと……」
何やら言いかけていたダンテの言葉を遮るように黙っていたアリアが光魔法、ライトボールを1つ生み出すと呆れるように呆けている雄一に放つ。
呆け方が酷かったのか慌てて避ける雄一の頬にライトボールがかすり、頬に赤い線が付けられる。
「てめぇ……!」
怒りに火が点いた様子の雄一の目力が強まり、放ったアリアが小さな呻き声を上げて身を守るが口許には小さな笑みが浮かぶ。
「やっぱりユウさんじゃない。ユウさんなら余裕で避けるのは勿論、弾くのも受け止めるのも簡単にやってのける。でも決定的に違うと感じさせるのはそこじゃない」
強い視線で睨むように見つめるアリアの傍にレイア達、3人娘も集結する。
「ユウ様は対峙する相手が敵であれば死を覚悟させ、訓練の相手には山に戦いを挑むような大きな懐を感じさせる気迫を感じさせるの」
「だな、オトウサンはお前みたいに虚勢を張るような薄っぺらな気を吐いたりしない。オトウサンの気をアタシは肌で覚えてる!」
「がぅ、お前からご飯の匂いしない……これ、大事!」
そう言うと4人はそれぞれの武器を抜き放ち、身構える。
アリア達の様子に苛立つのか歯を見せ、自身を覆う気を膨れ上がらせて誰の目にも映る白い気を立ち昇らせる。
雄一とは違うとは確信するアリア達ではあるがその気の大きさに額に嫌な汗が滲み始める。
アリア達の背後にいたダンテ達4人もそれに抗うように歯を食い縛る。
「満更、馬鹿ばっかりじゃないみたいですね。約一名、最後まで貫いた馬鹿もいますけど」
「あの4人だからね。ユウイチさんが手を焼くお転婆さんはこうじゃなきゃ」
雄一の愛情をもっとも注がれたと言っても過言ではない少女達は見た目では誤魔化されない。
もっと本質的な部分に惹かれ、ホーラと違い、最初から雄一が帰ってこないという考えが一切、この4人にはない。
だから、上っ面で雄一を見たりしない。
ダンテとヒース、そしてリアナもそれぞれに身構えて雄一、兵士達に向かい合う。
そして、シリアス顔したデングラが自然な動きで物影にムーンウォークするようにしてスッポリと収まる。
それに気付いたダンテが呆れ顔で声をかける。
「デン、何してるの?」
「ダンテ、俺様に戦闘力を期待するな! 俺様に出来るのは逃げる事だけだ!」
格好悪い事をドヤ顔で言い切るデングラに頭が痛いと額を押さえるダンテにリアナが「放っておきましょう」と告げる。
大刀を構えるヒースも放たれる気に目を細めながら唸る。
「本物のユウイチさんじゃないかもしれないけど、あの人、強いよ!」
その言葉に頷くダンテに合わせるように目的地にしてた場所の辺りから強い光と共に何かの鳴き声が響き渡る。
光と鳴き声にその場にいる者達の目が向かい、ダンテは下唇を噛み締める。
「くそう、やっぱり単発じゃなかったか!」
同じように悔しがるリアナが向かいたい方向に目を向けるとイヤラシイ笑みを浮かべた雄一がその進路を塞ぐように立ち塞がる。
「そうか、お前の目的はアレか……確かにお前なら出来るって聞いたな」
目的を見透かされたリアナは悔しげに足下を踏み抜くように踏みつける。
振り返ったスゥがリアナに質問してくる。
「どういう事なの?」
「この奥の魔法陣を潰す事と別にここに魔物が現れなくなるようにする術がゼグラシア王家の女の血にはあるのです」
スゥの質問に悔しげに答えるリアナをアリア達も見つめる。
元々、人身御供をしただけで魔物が鎮静化していたという話に大きな疑問があった。
たった1人の娘でどうして数日だけなら、ともかく、何年もおとなしくさせてこれたか。
それはゼグラシア王家の女の血に流れる魔払いの血統があった為である。
雄一がゼグラシア王国にやってきて、当面の魔物を倒した後、祭壇のあるこの地下を調べた結果、どうやら昔は大量の血、と言っても成人であれば少し疲れる程度の血を用いて、魔物が発生しやすい場所のここを短い間、聖域のようにしていたとリアナに伝えていた。
だが、その事を知った時のリアナは幼く、必要な血を抜き出せば万が一があると雄一が判断して成長するまでは定期的に魔物が発生していないか見に来ていた。
その事を伝えたリアナにアリアが眉を寄せる。
「ユウさんは色んな場所で色々してる」
「ええ、そのおかげで私はここに存在して、今はその術も理解してます」
「そんな方法があるのにどうして人身御供を……はぁ……」
わざわざ人身御供を実施した理由に想像が付いたスゥが溜息を零す。
血を捧げて封印したというより、命を賭して封印したという方が有難みが増し、罪を共有するように共犯者の感覚に陥れ、コントロールしやすくする為だと分かったからであった。
スゥの心情を理解したリアナが頷いてみせる。
「ええ、そんなところでしょう。やり方は大きくなったらユウイチ様から教わる予定でしたが、事前に調べておいて良かったです」
本当は教わる時に独自に予習しておいて出来るところを雄一に褒められたかったという少女らしい理由があったが、物事とはどう転ぶか分かったものではない。
勿論、雄一は意地悪したのではなく体が出来てないリアナが勝手にやらないように後廻しにしていただけである。
リアナもその心配りには気付いていたので覚えても勝手にやらないと自分を戒めてきたが今日、その禁を破る覚悟をしていた。
アリア達もそこまで聞けば、自分が何をすべきか理解すると通せんぼする雄一を睨みつける。
「どうにかしてアイツを突破する!」
「作戦会議は終わったか?」
青竜刀で肩をトントンとする雄一が睨みつけてくるアリア達を嘲笑うようにこちらを見ていた。
一応、話しながらも雄一の動向をチェックはしていたが逸る兵士達が命令を待つように振り返るのも無視してアリア達に好きにさせていた。
それがおかしいと意識のほとんどを雄一に割いていたヒースが聞く。
「どうして僕達に時間を与えていたんですか? 待ちたい理由が何か?」
「まあな、お前達の作戦会議を静観した理由は遊んでた訳じゃない。確実性を増す為に好きにさせてた……ほら、後ろを見てみろ」
そう言われたアリア達は引っかけかと一瞬疑うが背後から沢山の足音がするのに気付いて慌てて振り返る。
振り返った先には前にいる兵士より多い数が居り、その先頭には身なりの良い褐色の肌の男が立っていた。
「オヤジ!」
「馬鹿親父」
デングラとリアナが同時に声を発する。
褐色の肌の男はデングラとリアナの父、グラ―ス国王であった。
そんな2人に反応を見せないグラ―ス国王は雄一に向かって頭を垂れる。
「お待たせしました」
「遅いぞ、凡夫! すぐにリアナを捕えろ。他の奴等の妨害など無視してな」
「なっ!」
その言葉に絶句するアリア達に前後から一斉に兵士が駆け寄り、アリア達を無視してリアナに一直線に走る。
慌ててリアナを守ろうとするアリア達であったが、人が川の流れのように襲いかかるのに耐えるのに必死で一瞬でリアナを囲む。
身構えるリアナが絶望するように下唇を噛み締めて構える。
しかし、一斉に襲われて小さな体躯は押さえ付けられ、羽交い締めされて身動きを封じられる。
「よし! すぐに祭壇に連れていき、魔物に捧げてしまえ」
そう雄一が命令し、それに従う兵士。
「リアナ!」
アリア達が名を呼び、リアナの傍に駆け寄ろうとするが残った兵士に道を塞がれる。
「クソッタレ!」
近くにいる兵士を殴りつけるレイアの悪態が響き渡る。
引きずられ、祭壇に連れて行かれるリアナの瞳に涙が滲む。
救おうとした兵士にこうして連れて行かれ、そして、何より雄一に救われた命が失われようとするこの現状が許せなくて悔しくてしょうがない。
「リアナを連れていかせん!」
逃げるしかしないと豪語したデングラであるが気配を消して手が届きそうなところまで近寄るが肉の壁に遮られてあっさりと撃退される。
「ユウイチ様……」
自分の無力さに嘆くリアナのいつもの心の支えである雄一の名を呟くリアナの頬に優しい風が吹きつける。
その地下に相応しくない優しい風に驚き、溢れそうになってた涙が引っ込むと同時にリアナを中心に青い旋風が撒き上がる。
「うわぁあああ!!」
兵士が紙クズのように吹き飛ばされる青い旋風の真ん中に白髪のエルフ、アルビノの特徴の赤い瞳を細める少年がリアナをお姫様抱っこして雄一を睨みつける。
「やっと見つけたぞ!」
「ちぃ、もう来たか!」
舌打ちする雄一。
登場した信頼する兄、テツを見てアリア達は喝采を上げる。
「テツ兄!!」
喜ぶアリア達を余所に抱き抱えられているリアナは雄一を睨みつけるテツを見上げる。
「こ、この人が北川家、長男、テツ……兄様?」
頬を紅潮させる熱を持て余すようにリアナは自分の口を両手で隠すようにして熱い視線をテツに向けた。
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