第82話 異世界料理道

今日は学校が休みで、リーンと一緒にジュリエッタを訪ねてみる事にした。手配書の取り消しに尽力してくれたので、お礼をしに行こうと言ったら、リーンは「それはいい考えね。ジュリエッタにも久しぶりに会いたいわ。」と嬉しそうに答えてくれたのだ。

そして、道中にポポやピピのいる教会にも寄っていく事にした。


教会は前よりも綺麗になっている気がした。そして、教会の前では2人の職人が2mくらいの岩を削っていた。

俺はその職人たちを横目に教会の入り口へと近づき、扉を開いた。

中にはシスターがおり、俺に気付いたようだった。


「これは、アギラさんとリーンさんじゃないですか。お久しぶりです。」

シスターは笑顔で迎えてくれた。


「これは、食料です。みんなで食べてください。」

お金にも余裕があるので、俺は教会に食料を持ってきていたのだ。


「ありがとうございます。」


「あれから変わりはありませんか?」

あれから、奴隷業者が来たりしていないかが心配だった。


「そうですね。最初の頃は奴隷業者がまた取り返しに来るかと思って、ピピと新しく預かった子供たちは隠れて過ごしていたんですが、特に何事もなかったので、今では皆と変わりなく過ごせています。それに、ある方たちから援助もありまして、もし取り返しに来てもお金で何とかなりそうです。」

どうやら、俺以外にも教会に援助した人がいるようだった。その時、俺はジュリエッタの事が思い浮かんだ。もしかすると、ジュリエッタの父親が援助をしたのかもしれない。


「もしかしてジュリエッタのプラダ家からですか?」


「ええ、そうです。それに加えてマヤカ様という教皇様からからも寄付を頂いたのです。」

やはり、ジュリエッタから何かしらの援助があったようだった。それにしてもマヤカというのは何者だろうか。教会の関係者であろうか。


「マヤカという方は?」


「それが、新しい宗教を作られてその布教に努めていらっしゃる方なんですよ。私もその方の教えを聞いて感銘を受けました。今の教会の制度はお金を中央に納めなければならないのですが、その方がおっしゃるにはそんな事をしなくても天国へ行くことができるという事なのです。人は助け合えば、何も持たずとも幸せになることができるのです。私はそれを聞いてハッと気づかされました。そして、いろいろ聞いていくうちに私はマヤカ様の作られた新しい宗派に改宗する事にしたのです。ちょうど外で作っているのが新しい神の彫像らしいのです。なんでもマヤカ様は神の啓示を直接受けたとおっしゃっていました。あの方の考えは本当に素晴らしい。これからどんどんと改宗する方が増えるんじゃないでしょうか。」

相当そのマヤカという人に心酔している様子だった。その人の事を饒舌に熱弁するさまをみれば、それを察するには容易だった。


「へー、なんか凄そうですね。」

あれか。中世に起きた宗教改革がこの世界でも起ころうとしているのだろうか。俺とは関係なさそうなので、あまり興味がなかった。

「それで、ポポや子供たちは今どこに?」

もっとその人の事を語りたかったのかシスターは少し残念そうな顔をしていた。

「たぶん、釣り竿を持って出かけたので、湖にいると思います。是非会って行ってください。みんな喜ぶと思います。」


「わかりました。それでは。」

俺とリーンは教会を出た。

横を見ると岩の中央当たりが削られて、人の腕と胴体の部分が右半分程出来上がっていた。あれが神か・・・・岩を削ってできる芸術作品に俺は感心をした。上手いものだ。


「裸の像なのね。どんな神様なのかしら・・・」

リーンが俺に言った。

キリストの像などは上半身が裸だったりしたはずなので、俺には違和感はあまりなかった。

「また出来上がる頃にでも一緒に見に来ようか?」


「そうね。一緒に行きましょう。約束よ。」

どうやら、リーンは神様とやらに興味を持ったようだった。



湖に到着すると、そこでは子供たちが集まって釣りをしていた。

ポポは俺があげた釣り竿を使っていた。そして、他のみんなも木で自作した釣り竿を使って釣りをしているようだった。

最初にポポが俺に気づいた。

「あっ、アギラの兄ちゃん。リーンの姉ちゃんも。」

それを聞いた他の子供たちもこちらを向いて、俺たちのそばへと駆け寄ってきた。


「久しぶりね。みんな。元気にしてた。」

リーンが皆に聞いた。

「元気だった―!!」「俺もー!」「私もよ。」「僕も♢」「見て―、こんなに釣れたよ。」「こんなのも捕まえたんだ。」

子供たちは口々に話した。

ポポはバケツの中の魚を嬉しそうに俺に見せた。そして、もう一人の男の子は別のバケツの中に入ったドロドロのゼリーのような物体を見せてくれた。

「・・・これはスライムね。」

バケツを覗き込んだリーンが呟いた。


スライムは子供でも倒せる弱い魔物であるが、この辺りで見かけるのは珍しい気がした。

「どこでこれを?」

バケツを持っていた男の子は村の反対側を指さした。

「あの辺にいたから、みんなで捕まえたんだ。」

「私がとどめをさしたのよ。」

少女が誇らしげに言った。

「俺スライムなんて初めて見たよ。」

「俺も。」「私も。」

この辺りはあまり魔物がいないので、みんな初めてスライムを見た様子だった。


「あっ、あの・・・・」

ポポは何かを言いたそうにしていた。


「どうしたんだ?」


「この魚で何か料理作って欲しいんだけど・・・兄ちゃんの料理、忘れられなくて・・・」

「俺も食べたい。」

「私もー。」

「あの至福の時間が忘れられないわ。」

子供たちは口々に俺の料理を切望した。


「私も久しぶりにアギラの料理が食べたいわね。」

リーンも俺の料理を欲しがった。


「あっちも久しぶりに食べたいですにゃ。」

お前は朝に食っていたな・・・


みんなから熱望されて俺のテンションは上がっていた。

「よし。じゃあ、何か作るか。」


皆は俺が作っている間釣りをして、さらに魚を釣っていた。リーンも一緒に楽しんでいるようだった。

俺はバケツにあった魚とアーサーに預けている調味料で魚を使った料理を作った。それを食べた皆は俺の料理を絶賛してくれた。


このオリハルコンで作った料理器具は素材の旨味を最大限に引き出しているのは確実である。工房で聞いた話からすると、これを作った時にそういった特殊な力を付与した可能性がある。だから、この道具を使えば俺は料理の道で成功してしまうかもしれないのだ。


俺は調子に乗っていた。

「これも調理してみるか・・・これも使っていい?」

俺はスライムを指さして、子供たちに聞いた。

「えっ?」「スライムって食べれるの?」「不味そう。」

どうやら、スライムを食べるという文化はないようだった。

「どうせ捨てるから、使ってもいいけど・・・」

スライムの入ったバケツを男の子は俺に手渡した。


さて・・・どうやって調理するか・・・ひとまず鍋に入れてじっくり弱火で煮てみるか・・・

俺はスライムを鍋にいれて、鍋の中で弱火でコトコトと煮込んでみた。

そして、5分ほどしてから蓋をあけた。煮込む前は緑色をしていたスライムは煮込むことで黄色く変色をしていた。

俺は少し冷ましてから、一つまみちぎってみた。その弾力は煮込めば普通は溶けてしまいそうなものだが、何故か煮込む前よりも強くなっていた。

俺は少しの量を口の中に放り込んだ。

それを見た子供たちの顔は何故かしかめっ面をしていた。俺がスライムを食べるのを見たくないのか目を瞑っている子供たちもいた。

俺は少し舌の上に置き、ゆっくりと咀嚼した。


・・・うまい。


驚いたことにスライムはとても美味かった。噛み切った時の感触は餅のようで、その味はモンブランとチョコを合わせたような甘味と苦みを含んだ独特の味わいであった。

「これは美味しいぞ。」

俺はうなった。

「マスター、あっちも味見していいですかにゃ。」

アーサーの口に1つまみ放り込んだ。

「・・・ちょっと噛みにく・・・うまいにゃー。なんですかにゃ、これは・・・まったりととろけるこのほのかな甘み、どういう事にゃ・・・」

アーサーの食べる様子をみた子供たちは恐る恐る鍋からつまんで口の中に入れる。

「スライムってこんなに美味しかったの・・・」

「うまっ。」

「なんだこれ。」

どうやら、子供たちの味覚にも美味しいと感じられたようだった。こんなにも美味しいのに、どうしてこの世界ではスライムは食用とされてこなかったのだろうか。俺の調理器具はそこまでの性能があるのだろうか・・・


「スライムって事を知らなければ、完全にデザートとしていけるわね。なんでこんな美味しいのかしら。アギラは味の魔術師ね。」

リーンが2口目を口に運びながらつぶやいた。


もしかすると、この世界で魔物を食べるということは前の世界で昆虫を食べるのと同じようなものなのかもしれない。バッタはエビの味、蜂の幼虫はウナギの味、カミキリムシはトロの味がすると聞いた事がある。しかし、美味しいと言っても抵抗があってあまり食べようとは思わない。それと同じで魔物を食べるというのはこの世界では抵抗がある事なのかもしれない。


しかし、俺にはその抵抗があまりなかった。魔物料理というのを極めるのも面白いかもしれないな。この時俺はそんな事を考えていた。

そして、俺はあることを思いついた。

「アーサー、ドーナツを出せ。」

「あと少ししかないですにゃ。貴重ですにゃ。」

アーサーはドーナツを出すことを渋った。

「また作ってやるから、早く出せ。」

「わかりましたにゃ。絶対に作ってくださいにゃ。」

俺はアーサーが取り出したドーナツに鍋の中のスライムを塗ってみた。そしてそれをみんなに渡した。

「うまーーーい!」

「うんま!」

「なにコレ?」

「この甘味と苦み、そしてもちもちの食感とサクサクの歯応えはまるで味覚と触覚の宝石箱やー!」

「おいしいわ!」

「こ、こ、これは最強の組み合わせにゃ。」

みんなの喜ぶ顔が俺の次なる創作魔物料理への探求心を刺激した。


スライムの種類で味は変わるのだろうか。ふとそんな事が頭をよぎったが、この近辺にスライムはいないのですぐに試すことはできない。子供たちも同じような事を考えていたようだった。

「スライムがこんなに美味しいなんて・・・」

「これはもうスライム狩りをするしかない。」

「そうだ。スライムを狩ろう。」

「一狩り行こうぜ。」

「スライムってどこにいるんだ?」


「スライムがいるところには他の魔物も大抵いるから危ないわ。あんまり無茶しちゃ駄目よ。」

リーンは子供たちに注意した。

それを聞いた子供たちは納得した様子だった。そして、少しの間子供たちと遊んで過ごした。

その後、シスターの分のドーナツを渡して、俺とリーンはジュリエッタの家へと向かう事にした。



ジュリエッタの家の手前にある鉄柵の門で鈴を鳴らすと召使の一人がやって来た。

名前を告げて、少し待つと快く俺達を中へと迎え入れてくれた。

門の中には馬車が止まっていた。召使の話によれば、来客が来ているという事だった。忙しそうなら今日はジュリエッタに会うだけにする旨を伝えると来客の方が俺に会いたいと言っているという事だった。

バレンタインという名前の子爵だそうだが、俺とリーンはどちらも聞いたことがない名前だった。


俺達はジュリエッタの父親とそのバレンタインが話し合っている部屋へと通された。


「お久しぶりです。手配書が取り消された件は本当にありがとうございました。」

俺はジュリエッタの父に会うなり礼を述べた。


「いや、礼を言うのは私の方だよ。アギラさんとリーンさんがしてくれた事を考えれば、私はそんなに大した事はしていないさ。本当にあの時は私達と領民達を救ってくれてありがとう。」

ジュリエッタの父は頭を下げた。

「それに、君たちの事は私以外にも無実を訴えるものがいたようだよ。中央の調査官の中にも君たちの無実を信じているものもいたみたいだ。だから、私の方も上手く動くことができた。」

どうやらダン以外にも俺達の無実を分かってくれる人がいたようだった。

俺はお礼も言えてジュリエッタにでも会おうかと思っていると、ジュリエッタの父はさらに話を続けた。


「それで、実は君達に相談したいという人がいてね。ちょうど先刻さっき君達の事が話に出てたところだったんだよ。そんな時に訪ねてくれるなんて、本当にびっくりしたよ。」

そう言って、対面に座っていた男の人を紹介した。

「こちらはバレンタイン子爵だ。」


「お初にお目にかかります。バレンタインと申します。是非あなた方の御力を貸していただきたいのです。」

座っていた男は立ち上がり俺たちにお辞儀をした。

俺達も少し頭を下げるとバレンタインは話を切り出した。


「私は1000人程度の領民がいる土地を任されています。そして、そこは果樹園を営むものが多く、それで生活を成しているものが多いのです。しかし、最近それを荒らす魔物が出没するようになったのです。始めは駆除していたのですが、次から次へときりがありませんでした。私たちは原因を突き止めるために調査に乗り出したところ、ある森からその魔物が大量に生み出されているのがわかったのです。そこで、原因の解決に乗り出したのですが、上手くいきませんでした。冒険者ギルドに依頼するもいまだに解決には至っていないのです。そんな時、私はプラダ侯爵の話を思い出したのです。私の現状がプラダ侯爵から聞いていた話と似ていたので・・・」

何か言いにくい事があるのか、そこで声が小さくなった。バレンタインはジュリエッタの父と目線を合わすと、ジュリエッタの父は小さく頷いた。それを見たバレンタインは話を続けた。


「実は私には18になる娘がいるのですが、パーティーで宰相の3男であるハリスという者に目をつけられたのです。私の娘は婚約者がいるので、そのハリスの誘いを当然断りました。それからしばらくしての事だったのです。私の領地に魔物が現れるようになったのは。なので、同じような境遇を切り抜けたと噂されているプラダ侯爵の元へこうして参った次第です。そこであなた達の話を聞いて是非、御力を借りれないか思案している時に御二人が来たのです。是非、御力を貸していただけないでしょうか。」


「ジュリエッタも宰相の息子に目をつけられていたのですか?」

俺は初耳だったので、尋ねた。


「そうなんだ。あの時は不幸が重なったと思っていたのだが、バレンタイン子爵の話を聞いてみると、もしかすると魔物の発生はハリスが何か関わっているような気がしてならない。もしよければ彼も助けてあげてもらえないだろうか。私からもお願いする。」

ジュリエッタの父はまたも頭を下げていた。


「私たちに任せなさいよ。ちゃちゃっと、そんな魔物は退治してやるわ。でしょ。アギラ。」

リーンはやる気満々であった。


「わかりました。その魔物が発生している森とやらに行けばいいんですか?」

リーンもやる気になっているし、懇願されてしまえば仕方がない。俺は魔物を狩ることにした。


「ありがとう。何でも森の中に魔物の親玉がいるらしくて、そいつを倒せば魔物は発生しなくなるらしいんだ。」

バレンタインは俺の手を握り握手をしてきた。

「じゃあ、いつに行きましょうか?」


「お願いできるなら、早ければ早いほど助かります。こうしている間にも領民たちの果樹園がどんどんとやられていると思うと気が気でなりません。」


「わかりました。じゃあ今から行きましょう。案内してください。」

ジュリエッタと遊ぶのは今度でもいいだろう。俺は承諾した。


「流石アギラね。今回は前みたいな失敗は犯さないわ。」

リーンは前に魔力切れした失敗を思い出していた。


「ありがとうございます。馬車で来ていますので、森の近くまでお送りします。」

バレンタインが言い終わった時、部屋の扉が開いた。


「アギラ様!!!」

ジュリエッタが部屋に飛び込んできた。

「今日はどうしてここへ?」


「お礼とジュリエッタに会いに来たんだ。」


「私に会いに来ていただいたんですか。嬉しいですわ。」


「リーンと3人で遊べたらと思っていたんだけど、用事が入ってしまったから、また今度遊びに来るよ。」


「そ、そうなんですか。それは残念ですわ。」

ジュリエッタはしょんぼりしていた。

「また、すぐに来るわ。」

リーンが言った。

「リーンさん・・・実は、二人に相談したい事があったんですが。用事があるのでしたら、また、今度聞いてください。」

ジュリエッタが俯きながら言った。相談事とは何だろうか。

「今でもいいけど。」

俺は言った。

「いえ、特に緊急を要するものではありませんので・・・先に用事を済ませてくださって構いませんわ。」


「そうか。じゃあまた今度。」


「ええ。お待ちしておりますわ。」


ジュリエッタに別れを告げて、俺とリーンはバレンタインの馬車で問題の森へと向かった。

森に着いた時には日が少し傾いて、少し暗くなっていた。

「あそこの森です。」

バレンタインが指さした森の入り口付近には他にも何人かの人がいるようだった。

「おそらく冒険者かと思われます。ギルドの依頼はまだ取り消していませんので・・・」


「わかりました。じゃあ、ちょっと退治してきます。」


「ありがとうございます。どうかお気を付けください。」


「大丈夫よ。私達に任せておけばちょちょいのちょーいよ。」


俺達はバレンタインと別れて、森の入り口付近にいる冒険者達に近づいた。

冒険者たちもこちらに気付いたようだった。

「こらこら、ここは危ないぞ。子供たちが来るような場所じゃないぞ。」

鎧を着て、片手に剣を持った男が言った。

「俺達も魔物を退治するために来ました。」

「そうよ。それに私たちは子供じゃないわ。」

リーンがその台詞を言っても全然説得力がなかった。見た目は子供なのは間違いなかった。


「あんちゃんにお嬢ちゃんよ。早く帰った方がいいぜ。簡単な魔物だと聞いて来たんだろうが、そんなことを思っていたらやられちまうぜ。」

無精ひげを生やしたムキムキのおじさんは俺達に忠告した。

「そんな事思ってないわ。」

リーンが反発した。


「ついて来てもいいけど、私たちの足手まといにはならないでね。あなた達を助ける余裕なんてないからね。死んでも恨んじゃダメよ。」

ローブを着たお姉さんも俺達に忠告した。


「そんな事を言ってあげるなよ。私たち4人いれば余裕で守ってあげる事も可能だろう。」

露出度の高い服を着たお姉さんが他の3人の方を向いて言った。

「君たち、危ないと思ったらお姉さんの後ろから離れないようにしなよ。私が守ってあげるからね。」

何故このお姉さんは水着のような恰好をしているのだろうか・・・

俺はこのお姉さんの後ろにぴったりついて行く事に決めた。


「アギラ。もう行きましょう。私達だけでちゃちゃっと済ませましょうよ。」

リーンは別行動をとろうとしているようだった。

「いや、このメンバーについて行こう。」

このお姉さんの後ろには何か離れられない魅力があるのだ。

「・・・分かったわ。」

リーンは文句も言わずに納得してくれた。


「簡単な魔物って、どんな魔物なんです?」

俺は無精ひげを生やしたおじさんに聞いた。


「そんな事も知らずに来たのかよ? スライムだ。聞いた話では普通のスライムではないらしいぞ。中堅の冒険者たちがことごとくやられているって話だ。だから悪いことは言わない。お前たちは引き返した方がいいぜ。」


「何で私達が引き返さなきゃならないのよ。」

リーンは小さな声でブツブツと言っていた。


「スライム・・・」

俺は呟いた。

そのとき、フードの中でアーサーがピクっと反応を示した・・・


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