5ー11

「こうして相対するのはいつ以来かな」

 モルガナは目の前のエリザベスに問うた。

「そうですね。ブラド様とツェペシュ様がご誕生された、記念式典以来かと」

「そうか。最近の話だな」

「そうですね。私たちにすれば、何十年という歳月は最近ですから」


 国は、念願の王子誕生で湧いた。しかも双子で姫の誕生にも大いに賑わった。

 国中が祝した。双子の誕生を。ブラド公の後継者誕生の吉報を。

 ブラド公から携わった勅命。

 モルガナは王子の教育係に。

 エリザベスは姫の教育係にそれぞれ任命された。


 記念式典では二人の魔術を披露する催しがあった。

 何もない場所から、火や水、風を生み出したり、宙に浮いて見せたり、岩石から土人形ゴーレムを作り出したりと、式典に出席していたブラド公やお妃に大臣たち、民衆の喝采を浴びたものだ。


「さて、この場では何で勝負するかのう」

 モルガナが思案していると、

「単純に魔法力で決着をつけるのには刻が足りません。私たちにとっては永遠でも、主様やブラド様はそうではありませんから」

「ならひとつ案がある。ここにもうじき一人の少女がやってくるだろう。その少女に判断してもらうというのはどうだ」

「ブラド様が連れているあのお嬢さんですね。構いませんが、あなたの方が不利じゃありませんか? 私はあのお嬢さんとがある」

「このモルガナに死角はない」

 誰にものを言っている? と、言わんばかりにモルガナは自信ありげに誇らしく笑うのだった。

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