ミガトヒラア ～死後の世界は神代の世～

第24話トランプ2

「一回のゲームでいくら貝が動いても、精算は一番最後にするから終わりまで諦めちゃダメだよ」

　先ほどの説明通り、最初のディーラは氏家が行う。

　追加したジョーカーを含めたトランプの束をシャッフルし、時計回り順に氏家から1枚ずつカードが配られていく。54+6で60枚となったデックは丁度4人で割り切れる枚数となり、一人15枚の手札には裏面が違う例のジョーカーが所在の在り処を明確にしていた。

　★1stゲーム

　俺の手札

　C3,H5,S8,D8,C9,D10,CJ,CQ,HK,CA,DA,H2,C2,OJ×2

(S＝スペード、H＝ハート、C＝クラブ、D＝ダイヤ、NJ＝ナチュラルジョーカー、OJ＝オープンジョーカー)

　このゲームに限り、D3を所持している和田からのスタートとなった。(D3から切る必要は無し)

　和)C6→今)D10→武)SQ→氏)CK→和)SA→今)PASS→武)PASS→氏)PASS…/

　和)S7,H7→今)S8,D8…/

　今)H5→武)C7→氏)H8…/

　氏)S456→和)PASS→今)CJQ,OJ→武)PASS→氏)PASS…/

　今)C9→武)DJ→氏)HQ→和)D2→今)PASS→武)PASS→氏)PASS…/

　和)H9,D9→今)CA,DA→武)PASS→氏)PASS→和)PASS…/

　今)C3→武)D5→氏)D7(縛り)→和)DQ→今)PASS→武)DK→氏)PASS→和)PASS…/

　武)H34,NJ→氏)S10J,OJ→和)PASS→今)PASS→武)PASS…/

　氏)C5→和)C8…/

　和)S3,D3→今)H2,C2→武)PASS→氏)OJ×2…/

　氏)D4→和)HJ→今)OJ…/

　今)HK(上がり)→武)HA(縛り)→氏)PASS→和)OJ…/

　和)S2→武)NJ…/

　武)H6,D6→氏)PASS→和)PASS…/

　武)H10,C10→氏)PASS→和)PASS…/

　武)S9(上がり)…終了

　●結果(革命無し)

　一位：今泉（+10）+10

　二位：武石（+10）+10

　三位：氏家　残り1枚（-10）-10

　四位：和田　残り1枚（-10）-10

　最初のゲームは一位で上がる事が出来たが、大きな金額が動く事はなく大人しい結果に終わった。

「いきなり一位なんて流石だね、今泉くん」

「ほぼ平らだがや。嬉しくねーわ」

　氏家の皮肉めいたコメントを受け流すと、席順の関係で最下位となってしまった和田がデックをシャッフルしカードを配り始めていた。

　★2ndゲーム

　俺の手札

　S3,H3,H6,C6,D7,H8,D8,H9,S10,H10,SJ,DJ,SQ,HA,OJ×1

　和)C78910JQ→

「おい、コレは革命になんのかて？」

「階段はあくまでも階段だよ、何枚出そうがね。それでこの場合だけど、出された階段と同じ枚数の階段でないと返せないんだ」

　和田が出した5枚階段に対する俺の質問に氏家が答えた。

　普通のルールだと4枚以上の階段は革命扱いになる事が殆どだと思う。しかしこの鬼大富豪では同じ数字のカードを4枚以上出して初めて革命になるのだ。

　→今)PASS→武)PASS→氏)PASS…/

　和)D5→今)DJ(縛り)→武)PASS→氏)DA→和)PASS→今)PASS…/

　氏)H7→和)D9→今)HA→武)PASS→氏)D2→和)PASS→今)PASS…/

　氏)CK2,OJ→和)PASS→今)PASS→武)PASS…/

　氏)S5,H5,C5,OJ(革命)→和)PASS→今)PASS→武)PASS…/

　氏)S9→和)S7(縛り)→今)S3→武)OJ…/

　武)S2,H2→氏)C3,NJ…/

　氏)S4,D4(上がり)→和)PASS→今)PASS→武)D3,OJ…/

　武)SA,CA→和)C4,D4→今)H3,OJ…/

　今)SQJ10→武)S86,OJ→和)PASS→今)PASS…/

　武)HQ,DQ→和)PASS→今)H6,C6→武)PASS…/

　今)H1098→武)PASS→和)PASS…/

　今)D8…/

　今)D7(上がり)…終了

　●結果(通常革命×1)…レート2倍

　一位：氏家（+120）+110

　二位：今泉（+80）+90

　三位：和田　残り4枚（-80）-90

　四位：武石　残り3枚ジョーカー×1（-120）-110

「すごいすごい！何であの手札から勝ちに漕ぎ着けるの！？」

　いちいち鬱陶しいなこいつ。ゲームの度に俺の結果の感想を語るつもりかよ。死んでくれねーかな。

　大体、今の発言は失言だろ。俺の手札が見えねーと出てこねー台詞だぞ。だけどそれも奴の手の内かも知れない。提案されたこのゲーム、招待されたこの会場、人数合わせのこの二人、全て氏家が用意したものだ。一寸たりとも気を抜けない。

　卓上で起こる一挙手一投足に全神経を集中させる為に、カナビスに火を着け頭のギアをトップに入れた俺の後ろでは、あんずと桃子が談義に華を咲かせていた。

「ももこさま、たくちゃんたち何してるんですか？」

「トランプゲームだよ、あのカードで勝負するのー。たくやくんの正面に座ってるまさきくんはトランプ大好きなんだってー」

「たくちゃんは勝ってるんですか？」

「今のところ、2回とも勝ってるよー」

　彼女たちの会話を、俺の耳は聞くともなく捉えていた。

　★3rdゲーム

　俺の手札

　D3,C6,D6,S8,H8,D9,C10,HK,CK,DA,D2,NJ×1,OJ×3

　武)H7,C7,D7→氏)SQ,HQ,DQ→和)PASS→今)PASS→武)PASS…/

　氏)C4→和)C5(縛り)→今)C10→武)CQ→氏)PASS→和)C2→今)PASS→武)PASS→…/

　和)H4,D4→今)C6,D6→武)S9,C9→氏)PASS→和)S10,D10→今)HK,CK→武)PASS→和)PASS…/

　今)D3→武)S4→氏)S7(縛り)→和)SK→今)PASS→武)PASS→氏)PASS…/

　和)S6,H6→今)S8,H8…/

　今)DA2,NJ→武)PASS→氏)PASS→和)PASS…/

　今)D9,OJ×3(革命＆上がり)→武)PASS→氏)PASS→和)PASS…/

　武)C2→氏)CA→和)H9→武)H5(縛り)→氏)PASS→和)OJ…/

　和)CJ,DJ→武)H3,C3→氏)PASS→和)PASS…/

　武)SA,HA→氏)S5,H5(縛り)→和)PASS→武)PASS…/

　氏)SJ,NJ→和)PASS→武)PASS…/

　氏)C8,D8,OJ×2(革命)…/

　氏)DK…終了

　●結果(通常革命×1、革命上がり×1)…レート100倍

　一位：今泉（+2000）+2090

　二位：氏家（+2000）+2110

　三位：和田　残り2枚（-2000）-2090

　四位：武石　残り2枚（-2000）-2110

　好配牌のおかげでレートを引き上げる事には成功したが、下位2名の奮闘もあって金額の移動は最小限に抑えられた。しかし逆に言えば、たった2枚で貝2000も稼ぐ結果となった。これこそが、この特殊なルールの大富豪の醍醐味だろう。

「そいやー氏家に聞きたい事あるんだわ」

「何だい？？」

　何故今ここでこんないけ好かない奴とトランプゲームに興じているかというと、俺のやりたい事、俺が多々良場で作りたい物を実現させる為に必要なヒトたちへの対価を稼ぐ為だ。氏家は10名程必要だと言っていたが、どれほどの貝があれば事足りるのか確認しておかなければならなかった。そんなの初めに聞いとけよ。

「俺はこれでどんだけ稼げばええの？」

「そうだねえ…、貝50000くらいはあった方がいいんじゃないかな…？」

　今勝っている分は貝2090、残り7ゲームでおよそ48000程勝たなければならない。1ゲームあたり7000弱…。相当強気なゲーム運びをしなければ到達出来ない金額だ。そもそも俺の手持ちは貝200しか無い。負けたら明日はねーぞ。

　自分に喝を入れつつ、これまでのゲームからわずかばかりの違和感を俺は感じ取っていた。

「それより今泉くんが大負けしたらどうやって支払ってもらおうかなッ？」

「そん時はケツの毛を1本、貝100で買い取ってくれや」

「オーケー！そうしようッ」

　ええ……。