ところで貴方は誰ですか 2




恵一の声に、萌はハッとした顔を見せた。

そしてまた、何もないところをにらむ。

しばらくにらみあいは続いているようだったが、根負けした幽霊がついに折れたらしい。


携帯を肩と頬との間に挟み、萌は両手を空けた。

左手を広げ、右手の人差し指で左手のひらの親指から小指へ、すっと線を引く。



「見覚えある形だ。夜にLINE聞かれたときの。この人、あのときのフードの人だと思う」



「俺も。兄さんに言われて気が付いた。こいつのあかぎれのある手、俺が視た手と似てる。茶封筒を兄さん家のポストに入れてたあの手だ」



「うん」



あとはこのまま、この男の家に行ければ、より確実だ。

恵一に宛てられた茶封筒と黄色い百合の便箋が見つかれば、点に思えていたものが完全な線になる。

表札や写真などを見ることができれば、その他にも、わかることがあるかもしれない。


恵一は男が立つであろう場所に体を向け、じっと見つめた。

この男が「茶封筒」であるならば、手紙に書いてあったことが真実ならば、少なくとも自分の敵ではない……はずだ。

正体不明のストーカーから、守ろうとしてくれていた訳だから。


それに気になるのだ。

なんで今、そんな姿・・・・になっているのか



「家へ案内してくださいませんか」



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