黄色い百合の花言葉 2

*****


恵一がアパートから萌の家へと帰宅すると、

姉のめぐみが萌のために作ったであろう昼食のチャーハンが、ラップをかけたまま、置いてあった。


萌の練習は普段なら12時には終わるらしい。

通学時間を含めても、もうとっくに帰って来ていい時間だった。




「もう、萌ったら。ご飯要らないなら言ってよね!全く。彼女かしら」


「え!か、彼女?」


「あら……冗談よ、けーちゃん。そんなに慌てないの。あの子はけーちゃん一筋なんだから、浮気なんかするはずないわ」


安心なさい、と言う姉に、安心出来ない恵一である。

果たしてこの少々天然な姉は萌と恵一の関係を何処まで知っているのだろうか。


いつかは話さなくてはならないが、今ではない。

萌が成人して、より広い視野を手に入れた上で、自分から恵一を選ぶ日が来たら……。


恵一は選ばれる側だ。


それまでは清く正しく、叔父とおいと言う関係に相応しいお付き合いをしなくてはならない。


……最近ちょっと壊れ気味だけど。


そんなことを思っていると、玄関で音がした。

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