顔の見えない男 2

昨年末、一度は幽霊となった恵一だ。経験したから言えることがある。


幽霊は存在するのだ。


目の前のそれが話の通じる奴なのかそうで無いのかはさっぱりわからなかっいが、何だか首の後ろがゾワゾワするし、根拠は無いが怖い。


これは逃げるしかない。


そう判断するのに、恐らく数秒もかからなかった。

酔いの吹っ飛んだ頭でもって作戦を立て、すぐにポケットに手を突っ込んだ。

視界の端に落ち葉まりを捉えながら普通に歩く。


変に走って刺激しても怖いからだ。


けれど、『普通に歩く』というのは、一体どうやってやるものだったか・・・。


視線は?

歩幅は?

歩くスピードは?


考え出すとわからない。


一人葛藤していると、いつの間にか通り過ぎて見えなくなった落ち葉の山がカサリと鳴った。


風は吹いていなかった。


通り過ぎているから、視界に捉えられない。

後ろが怖い。

けれど歩みを止めるわけにはいかなかった。

『普通』に歩いている男は、何も理由がないのに背後を振り返ったりしないのだから。

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