顔の見えない男
顔の見えない男 1
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「へくしょいっ!……あ〜、寒っ」
カサカサと鳴る枯れ葉を蹴散らして、恵一は一人、夜の公園を歩いていた。
3日間の研修はあっと言う間に終わり、長谷川との約束通り品川で飲んだ後は、こうして帰路に着いている。
謎のストーカー男が自宅付近に出没する限り、恵一は自分の家には帰れない。
品川からは、電車を乗り換えることなく、東海道線一本で萌の家の最寄り駅まで移動できた。
楽でありがたいのだが、思っていたより早く着いてしまった様で、レモンサワー三杯と梅酒のお湯割二杯による
恵一は酔ってぽや〜っとした頭でもって、
「未成年のいる家に酔っ払いが帰ると言うのは、やはりあまりよろしく無いだろう」と、結論を出した。
その結果が、夜のお散歩と
蹴散らした落ち葉はカサカサと鳴る。
足に触れていない落ち葉も、風に吹かれてカサカサと鳴る。
他に音のしない夜の公園で、「カサカサ」だけが幾重にも重なって、近くから、遠くから、響いていた。
月が明るい。
耳の先と頬骨の上が冷たいけれど、その分、空気が澄んでいた。
ふと、空から視線を戻すと、何となく地面のとある一点に目が吸い寄せらた。
枯れ葉が歩道の縁石に沿って、薄く広がって集まっている。
その濃淡のまちまちな枯れ葉のオレンジ色の中に、ぽっかりと二つ、黒い穴が空いていて、そこだけ歩道の地面が見えていた。
それは何だか、人の足跡のようだった。
誰かが立っている場所に落ち葉が積もり、その後足を引き抜いた様な、そんな具合だ。
恵一の髪を揺らし、冷たい風が吹く。
枯れ葉が舞い上がり、乾いた音を立てながら、
カラカラ
カラカラ
カラカラカラカラ
そのうちの数枚が、二つの穴の元へ流れて行った。
流れて行って不自然な場所で止まる。
誰か立っていれば、足首と
恵一以外、誰もいない公園で、見えない何かに引っかかって、枯れ葉は空に浮いている。
空中に、
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