第2話 銀賀テポと団道ミサ
貯蔵庫の管理人と言っても、やることは割と簡単。
住人から金を搾り取って経営するだけである。
ほかの国だともっと小難しいことが多いのかも知れないけど、我が国は我が国。そんでもって私達はミサイル。そう難しいことを考える必要はない。
だから、普段は貯蔵庫周りを歩いたり、テレビ見たり爆発しない程度に飛んだりとか。あんまりやることは多くなかったりする。
……我が国の国民よりいい生活してる、は禁句だ。
「あ、テポ」
と、見慣れた赤毛を見つけて足を止める。
……そして、偉い人に廃棄で通報しようか数秒悩んだ。
カメラを持って見た目幼女を盗撮する見た目グラマラス……犯罪の香りしかしない。人間なら即お縄だ…あ、縄じゃないけど紐なら巻いてた。これで捕らえて突き出すかな。
「テポ」
「あら東風ちゃん。ごめんなさいね今いいところなの」
「おい」
「やだ蹴らないで起爆しちゃう」
「爆発しちゃうぞー?」
「ちょっと、手元がブレるじゃない」
「やめろって遠まわしに言ってんだよ」
一度本当に拘束した方がいいかもしれない。こいつ危険だ。
……銀賀テポ。見た目はトランジスタグラマーとか言うらしい。一日過ごせば判るこいつの性格は―――ドスケベ。少なくとも盗撮するくらいには。
「仕方ないわね…ほら見て今のミサちゃん。綺麗に撮れてるでしょー」
「消しなよ」
「なんで?」
「あんたそれミサに見つかったら逆に揺すられるよ」
「悪くないと思うけど」
駄目だこいつ。両刀って言うのか、どっちもいけるタチだから余計に面倒。奇行を止めるのが難しい相手。
「みっともないし…見てて不快」
「どんなプレイしたって私の勝手でしょ? 好きにさ・せ・て」
「……でも貯蔵庫内での行動は私の管理下でやって」
どうにかして止めたくても止まらない。自分勝手が過ぎる。
「でももっと激しーぃのもいいわよね。コンギョ! って感じで」
「激しく行って爆発しろ」
「嫉妬?」
「物理だよ」
惚気ている…と言うかスイッチが入るとテポは人の話を聞かなくなる。自分の欲望に忠実すぎるから止めようにもブレーキがない。
話に夢中になっていたところへ、被害者やってくる。
「何をギャーギャー騒いでんの?」
「あらミサちゃん」
「こいつがあんたを盗撮してた」
「ちょっと、そんな直球に言わなくてもいいじゃない」
盗撮は事実だしミサが被害者なのも事実。当人に報告するのは当たり前…だけど、まともな答えが返ってくるとも思えない。
「ちょっとそのカメラ貸して」
「はーい」
「どーんそれ取ってこい」
「コンッ……!?」
予想通りと言うか、ミサは受け取ったカメラを遠くに放り投げた。当然テポは慌ててそれを追いかける。
…団道ミサ。徹底的なまでのサディスト。深紫の肌。夜道で出会いたくないミサイルランキング堂々たる1位のこいつが、何も考えていないわけがない。
―――あ、テポが爆発した。
「………」
「……おかしいやつをなくした」
「おい」
一応、ミサとテポは恋人の筈である。一方的でなく本当に。
だがこんなことが絶えない。どういうカップルだ。
「どうすんのよあれ、アンモに見られたら」
「それは東風が責任取って」
「いやいやあんたが犯人でしょうが」
「アンモなら大丈夫だって」
少なくとも、娘が犬の如く走らされ爆発したという滑稽な死に方を許容する親は中々いないと思う。
アンモは切れると空から沢山降ってくるなんて逸話があるし、怒らせたらどうなるかわからない。
よし、ここはどうにか逃げ
「…何の音?」
「…あー」
上から何か音がする。嫌な予感しかしないが。
……一つの全長は50メートル。そしてあのコマみたいな体型……
あ、アンモだ。
そう思った時には、既に私も誘爆していた。
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