16 ニューカマー


 鍛錬の初日は、結局のところ朝からワイルドボアと戦うことになった。

 ただ、戦闘に関しては事もなく終了した。そう、終了したのだけど、鍛錬ではなく試練がそこから始まった。


「うっぷ……もうダメ……無理、無理、吐きそう……ギブ! ギブ!」


 氷華は両手で口を押えたまま、慌てて洗面所に駆け込んだ。

 おそらく、妊婦が悪阻つわりで苦しむかのように、洗面台に顔を埋めていることだろう。

 当然ながら、僕が孕ませたなんて事実はない。

 意気地なしという病に冒されているが故に、未だ童貞を後生大事に仕舞っている。


「でも、まあ、これじゃ~仕方ないよね……」


 太陽は既に高い位置に達し、既に昼に近いことを告げている。

 今日も天気が良く、気を付けないと熱中症になる可能性もあるだろう。

 そんな炎天下のもと、炎撃で丸焼きにしたワイルドボアの皮を剥ぎ、容赦なく腹を掻っ捌いているのだ。

 そのスプラッタな状況も半端ないのだけど、暑さで起こる悪臭が堪らなく最悪だった。


 彼女が妊婦の如くトイレに駆け込んだ理由は簡単だ。食料確保と魔法の鍛錬の影響だ。

 そう、ワイルドボアを食用とするために解体しているのだ。

 実のところ、包丁なる文明の利器もあるのだけど、料理人を目指している訳ではないので、敢えて魔法で挑んでいる。

 というか、きっと、この大きな獲物を包丁で処理するとなると、一匹を解体するだけでも一日では終わらないだろう。


 因みに、スプラッターな状態にあるのは一匹だけだ。残りの二十匹を超すワイルドボアは、暑さによる腐敗を防ぐために、全て氷漬けとなってもらっている。


「風刃! あっ、斬り過ぎた?」


 巨大な氷のまな板に、ワイルドボアがあられもない恥ずかしい恰好で横たわっているのだけど、おそらく本人が気づくことはないだろう。

 なにしろ、魂は既にあの世に辿り着いているのだ。

 まあ、あの世なんて世界があればの話だけど。でも、この世界のファンタジーぷりを考えれば、あながち在り得ないとも言えなくなってきた。


 それはそうと、吐き気を堪えて食料調達と魔法の鍛錬をしているのだけど、その実、その試みはそんなに簡単な話しでもなかった。

 なんといっても、ワイルドボアは軽自動車ほどの大きさだし、それが二十匹以上もいるのだ。

 この真夏に、それをそのまま氷漬けにしておくのは、いささかどころか大きな問題があるだろう。

 なにしろ、いくら氷漬けと言っても、この炎天下では簡単にではないけど、それほど長く持つことなく溶けてしまうからだ。

 そうなると、氷漬けを維持するのに、氷華が毎日魔法を掛けることになってしまう。そして、ワイルドボアの管理で一日が終わってしまうことになり兼ねない。

 おまけに、それを移動させようにも、僕等の力ではどうにもならないのだ。


 そこで思いついたのが、魔法の鍛錬だ。

 想像力が魔法に連結しているのなら、想像力をよりイメージできるようにしてやればいい。

 そう考えた結果、全てを魔法で行うことにしたのだ。

 もちろん、最初から上手くいくなんて考えていない。

 それでも、氷漬けのワイルドボアが二十匹以上も居るのだ。これを処理する間に、技量が向上する可能性が高いと思う。

 それは整地をした時の経験から明らかだ。


「こらこら! ココア! まだ焼けてないぞ!」


「ニィ……」


 切り出した肉の端切れをバーベキュにしているのだけど、その前で瞳を輝かせていた黒猫もどきがしょんぼりと項垂れた。

 どうやら、心底残念に感じているようだ。いつも元気に立てている尻尾が力無く垂れ下がっている。

 ただ、今回のことでココアが勇者だということが判明した。

 というのも、自分が魔物の毒味をすると申し出たのだ。

 これはまさに勇者と言わずして何と言おう。

 当然ながら、彼女が食べると言った訳ではない。しかし、金色の瞳と涎が止まらない様子は、是非ともご相伴させてくださいと語っているように思えた。

 彼女は得体の知れない食べ物を毒味するという勇者なのだ。そう、黒き勇者が降臨したのだ。


 という訳で、ワイルドボアを殲滅したところで、ありとあらゆる魔法を試みた。


「黒鵜君、そっちは任せたわ。私はお湯を沸かす鍛錬をしてくる」


「了解! あっ、でも、切り分けた肉を冷凍して欲しいから、時々は顔を出してよね」


「分かったわ。それじゃ」


 御座なりな返事を残して、青ざめた顔をした氷華はさっさと逃亡した。


 それでも彼女を責める気はない。

 今は夏だから良いのだけど、冬に水風呂は頂けないと思うのだ。

 そう考えると、彼女の鍛錬は実に有益だろう。


「ああ、向きを変えなきゃ。浮遊!」


 魔法を念じた途端、素っ裸の巨体が少しだけ宙に浮く。


「よしよし、いい感じだ」


 浮き上がったワイルドボアの向きをゴロリと変えて、再び氷のまな板の上に戻す。


「ふっ~~。これって結構疲れるかも……」


 筋力や体力の乏しいというか、この場合、大抵の者はこの巨体を動かすことが出来ないと思う。

 それは、当たり前のことだけど、僕自身にも言えることだ。だから、手始めに浮遊の魔法を会得した。

 未だ覚束ない状態だけど、少なからず使える代物にはなってきた感じがする。


 ここまでくると、もはや何でもありだと自分でも感じているのだけど、できちゃったものは仕方ない。遠慮なく使わせてもらうとしよう。


 こんな便利な魔法だけど、実のところ、とても不思議だとしか言いようがない。

 なぜなら、浮遊できる物とできない物があるのだ。

 多分、イメージに依存しているので、精神的なものだと思う。何度も氷華のスカートを捲り上げようと試したのだけど、とても残念なことに、微動だにしなかった。

 もしかしたら、彼女がスカートに捲り上がらない魔法を使っていたのかもしれない。


 ああ、もし持ち上がったら、魔法の誤操作だと誤魔化すつもりだった。

 ただ、酷い目に遭うのは間違いないだろう。

 そういう意味では、不幸中の幸いなのかもしれない。


「風刃! うわっ、くさっ! うっぷ! こりゃ、失敗したかも……」


 素っ裸のワイルドボアを縦割りにしたところ、腸から発生した臭いで吐き気を催す。

 おそらく内臓まで切り裂いた所為で、臭いが散ったのだろう。


「次からは、内臓を傷つけないようにしなきゃ。飛翔! 炎撃!」


 色々と反省しながらも、異臭を発する内臓を予め掘っていた穴に魔法で投げ飛ばす。

 おまけに、魔法でさっさと焼き尽くす。

 生の内臓を放置していたら、他の魔獣が寄ってきたり、怪しい菌が発生したりするかもしれない。それを懸念して、要らない物は全て焼き尽くすことにしたのだ。


 因みに、この飛翔の魔法は、物体を投げ飛ばすことができるのだけど、心底残念なことに自分を飛ばすことはできなかった。いや、浮遊も飛翔も氷華を浮かび上がらせることはできなかった。


 ちぇっ、ラッキースケベのチャンスが減った……


 それはそうと、骨と肉だけになったワイルドボアのお腹の中を水の魔法で洗っていく。


「あと少し……水龍!」


 コンビニにあった料理本の知識だと、肉は熟成させることで旨味がでるらしいのだけど、そんな贅沢なことを言っていられる状態ではない。ある程度の大きさに切り分けて氷漬けにする予定だ。

 そして、氷漬けにした肉の保存は、コンビニの冷凍庫にぶち込んで終了だ。

 既に電気は通っていないのだけど、完全冷凍したものを詰め込めば、そう簡単に溶けることはないだろう。


「ココア、氷華を呼んできて!」


「……」


「ココア!」


「ウニ……」


 ココアは不服そうな表情で立ち上がるのだけど、その視線はバーベキュに釘付けとなったままだ。


「呼んできた頃には、ちょうど食べられるくらいになるぞ」


「フンニーーーーーーーーー!」


 食べられると聞いたココアが、名残り惜しそうにしていた顔を一変させて建物の中へと消えていく。


「なんとも現金な猫だな……いや、魔物――魔獣か……というか、魔獣なら肉を焼く必要なんてなかったかな? いやいや、そもそも毒味になってなくないか?」


 今更ながらに、ココアが魔獣であることを思い出し、毒味の意味がないのではないかと考え始める。

 それと同時に、懐いたココアを魔物と同じ括りにするのに抵抗を感じて、魔獣と呼ぶことにする。


 そんな彼女が喜ぶ顔を思い浮かべながら、網の上から焼けた肉を降ろし、細かく切って冷ましてやる。


「浮遊! 風刃!」


 サイコロステーキサイズになった肉が宙に浮いている様は、なかなかシュールな光景なのだけど、既にこの光景に馴れた所為か、全く気にすることなく、それをお皿の上に落下させる。


「ん~、間違っても死んだりしないよね?」


 皿の上に転がるワイルドボアのサイコロステーキを摘まんで口の中に入れる。


「ん~、それほど美味しいと思えないけど、拙くもないね……てか、なんにも味付けしてなかったんだ……せめて、塩コショウは要るかな……そうなると……」


 魔物の肉が食べられるとして、塩や砂糖、香辛料は必須だと考え始める。そして、これからは、そのあたりの調味料を確保するのが重要だと記憶しておく。


「呼んだ? どれを氷漬けにすればいいの? って、どうしたの? 難しい顔して……くちゅん! うは~もう~~~ココアは可愛いんだけど、猫アレルギーが……」


「フニーーーーーーーーー!」


「あれ? ココアが怒ってるわよ? どうしたの? くちゅん!」


 どうやら、ココアには摘まみ食いしたことが解るらしい。

 先に肉を食われて所為で怒り心頭となった彼女は、焼肉を盛った皿に向かって勢いよく飛び掛かろうとするのだけど、なぜだかそこで脚を止めて森に視線を向けた。


 次の瞬間、森の中から物凄い勢いで、何かが飛び出してきたかと思うと、ココアのために切り分けていた皿に飛びついた。


「うおおおおおおおおおおおおおお! 肉ーーーーーーー! や・き・に・くーーーーー!」


「な、なんだ!?」


「な、な、なに!?」


「シャーーーー!」


 突如として現れた存在に驚きの声をあげると、ココアは己が食事を横取りされたことで発狂する。

 だけど、その存在は全く気にすることなく、息を吐く間もないほどの勢いでワイルドボアの肉を咀嚼そしゃくし、音が聞こえそうな勢いで嚥下えんかする。そして、料理の感想を高らかに叫んだ。


「うんまーーーーーーーーーーっ! さいっこーーーーーっ!」


「いやいや、君がサイコ系だよね!?」


 少々、精神的に怪しい少女がココアの食事に喰いつくのを見ていたのだけど、僕は驚きが収まったところでボソリと感想を零すのだった。









 ほど好く焼けた肉をココアが嬉しそうに頬張る。

 まさに、至高の時を満喫していると言わんばかりの表情だ。

 少しばかりサイコ系の少女に食われてしまったのだけど、残った大部分を間違っても取られないように警戒しながら食べている。


「フニャ~~~~~~~ン」


 そんな彼女は、まるで「生きててよかった」と言っているのか、嬉しそうな鳴き声を上げた。

 至福と言わんばかりの満足そうな姿に、こっちの心が癒される。

 ただ、幸せそうな彼女の隣には、涎を垂らさんばかりのサイコ系少女が立っている。


「その猫、容赦ないな……」


 頬に引っ掻き傷を作った少女が、恨めしそうにココアを見やる。


 ココアは猫じゃないんだけどね……


 どうやら、彼女からするとココアは猫に見えるようだ。


 その少女は、見た目はちょっと体育会系ぽく、健康的でボーイッシュではあれど、なかなかに可愛らしい女の子だ。


 というか、それ以前に、その少女に見覚えがあった。

 確か、隣のクラスの生徒で、同級生のはずだ。


「な、なあ、く、黒鵜くんだよな? 隣のクラスの……」


「えっ!? 僕の名前を知ってるの? 確かにそうだけど、君は?」


 自分で目立たない存在だと認識していたこともあって、彼女が名前を知っていることに驚くのだけど、それはさて置き、直ぐに彼女の名前を尋ねる。

 僕の記憶だと、名前は分からないけど、運動神経が良くて、おつむは弱い系の女子だったような気がする。


真摩一凛まするいちか


「マッスルイチカ?」


「ちが~~~う! まするいちか! 悪いけど、名字は好きじゃないんだ。一凛と呼んでくれ」


 紛らわしい名前と口調に首を傾げていると、彼女は頬を膨らませる。

 ショートカットで健康的な雰囲気の少女が憤慨する姿は、どことなく笑える雰囲気が漂っていた。

 ただ、どういう訳か、氷華は僕の背中に隠れて、こっそりと彼女を観察している。


 どうしたんだろ? それほど緊迫した状況じゃないんだけど。


 氷華の態度に、少しばかり首を傾げそうになるのだけど、そこで一凛が土下座した。


「黒鵜くん、君を男の中の男と見込んでお願いが……」


「お願い? ん~、難しいことは無理だよ?」


 土下座で頼まれても、残念なことに、できることなんてたかが知れているのだ。


「に、肉を、肉を食べさせてください」


「シャーーーー!」


「うひゃ!」


 僕が返事をする前に、なぜかココアが威嚇の声を上げた。

 どうやら、自分の肉を横取りされると感じたようだ。


 ふむ。ココアはほんとに賢いな……


 ココアの行動に感心していると、威嚇の声で飛び退った一凛がおずおずと話を続けた。


「もう、四日も飲まず食わずなんだ」


 確かに、現在の彼女は、記憶とは違って見事ダイエットに成功したようだ。まるでラ○ザップで大金を叩いたかのようだ。

 ただ、抑々が太っている訳でもなかったので、やつれていると言った方が正しいかも知れない。


「肉なら沢山あるから問題ないけど……」


「やった! ラッキー!」


「シャーーーー!」


「うわっ!」


「ああ、ココア、お前の分を取ったりしないから、そんなに怒るなよ」


「フニ~~」


 賢いココアは分かってくれたようで、逆立てた毛を元に戻すと、自分の食事に戻った。


「よかった~~。猫ちゃんもOKみたいだな」


 ココアから承諾を得たと感じたのか、一凛が安堵の息を漏らす。


 てか、まだ、僕等が食べて大丈夫なのかも分からないんだけど……まっいっか。本人が食べたいって言ってるんだし……


 結局、切り分けた肉を氷華に氷漬けにしてもらい、僕は一ブロックだけ残した肉を焼くことになるのだった。









 結論から述べると、ワイルドボアの肉は予想以上に美味しかった。

 味見をした時は、それほど感じなかったのだけど、コンビニに残っていた塩コショウで味付けをすると、これまでに食べたどの肉よりも美味しいと感じた。


「うまーーーーーーーっ! 天国だよ。最高だよ。こんなに美味しい肉なんて初めてだ」


 一凛はワイルドボアの肉に舌鼓を打つどころか、立ち上がって叫び声を上げている。


「わりとイケるわね」


 初めは胡散臭げに眺めていた氷華も、無理に勧めてみると、一口食べた途端にその美味さに感服したのか、ガツガツと食べ始めた。


 まあ、処理していた時の状況を知っているだけに、氷華が眉をひそめるのも仕方ないだろう。

 しかし、その美味さは彼女を魅了したみたいだ。


「ちょ、ちょ、ちょ~、水沢さん、食べ過ぎだ!」


 次々に焼けた肉を取り皿に乗せていく氷華を目にして、一凛が苦言を述べるのだけど、その一言で場の空気が固まったような気がした。


「ん? 水沢さん? 水沢……どこかで聞いたことがある名前だけど……」


 聞き覚えのある名前に頭を捻っていると、氷華の裏返った声が聞こえてきた。


「な、な、な、何を言ってるの。マッスルさん。私は川上氷華よ! あは、あはは」


「マッスルじゃない! 真摩まするだ! てか、一凛でいい。それよりも、雰囲気が違うから直ぐに気付かなかったけど、黒鵜くんと同じクラスの水沢さんだよね?」


「ち、違うわよ! み、み、み、水沢さん……水沢さんって誰かな?」


 同じクラスの水沢さん……ああ、思い出した。確か、おさげ髪で大人しい子だった。というか、根暗そうな女子で、いつも一人で居て日陰な印象なんだけど……全然違うくない?


 同じクラスの女子を思い出し、思わず首を傾げてしまう。

 ただ、一凛も同じように首を傾げていた。


「あれ? おかしいな? うちの勘違いかな?」


「そ、そ、そうよ。勘違いよ。真摩さんの勘違いよ。私は川上氷華なんだから」


 肉を乗せた皿を取り落としそうにしながらも、氷華は完全否定する。

 そして、あの地縛霊のような女子と氷華が同一人物とは思えず、その話をそこでお終いにしてしまう。


「それよりもさ。これで魔物の肉が食べられると分かったけど、問題は調味料だよね。それほど沢山ある訳じゃないし、これからは塩とかを重点的に集めた方が良くない?」


 一気に現実的な話しに代えたのだけど、そこで一凛の手と口が止まった。


「ん? 一凛さん、どうしたの?」


 銅像のように固まる一凛を見て、思わず問い掛けると、彼女はその拍子に箸を落とした。


「だ、大丈夫? 一凛さん」


「ど、どうしたの真摩さん」


「こ、こ、これって、魔物の肉だったのか……」


 そう、彼女は自分が口にしていた肉が、よもや魔物の肉だとは夢にも思っていなかったようだ。

 こっちから言わせてもらうと、ワイルドボアの解体現場にやってきたのだから、てっきり理解してるものだと思っていた。だけど、空腹は何もかもを見えなくする能力があるらしい。


 今更ながらに、硬直する一凛を見た氷華は、徐に箸で摘まんだ焼き肉を彼女の口の中に入れる。

 すると、条件反射なのか、一凛の口がもぐもぐとそれを咀嚼し、速やかに嚥下した。


「うんぐっ……まあ、美味いからいいか! 美味い物は正義だ!」


 瞬間解凍よろしく、一気に復帰した一凛は取り落とした箸を拾うと、近くに置いていたウエットティッシュで綺麗に拭き、透かさず焼き肉を食べ始める。


 ぐあっ……なんて立ち直りの早いんだ。てか、もしかして食いしん坊万歳なのか? あっ、新しい肉を乗っけなきゃ。


 現金な一凛の態度に呆れつつも、次々に消費される肉の充填をする。

 どうやらこの調子だと、残してあった一ブロックの肉が完全に消費されてしまいそうだ。


 こうして新たな仲間が増えた。

 まるで、黍団子きびだんごに釣られた猿のような存在ではあったけど、それは、猿よりも可愛いボーイッシュな女の子であり、運動神経は良さそうだけど、ちょっと頭の弱そうな隣のクラスの子だった。


 そんな新たな仲間が、親の仇のように肉を喰らい付く姿を眺め、少しばかり赤く染まり始めた太陽を背に受けつつ、僅かばかりの楽しい一時を満喫するのだった。

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