11-9
「…こうして悪い魔法使いを倒した勇者様はお姫様を助けだし、平和な世界で末長く暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
防人は絵本を読み終え、そっと閉じる。
「ZZZ……」
どうやらいつの間にか眠っていたようだ。ベットで寝息を立てている妹『リリス』を起こさないようにちゃんと毛布をかけてやる。
「…おにーちゃん」
リリスの目から滴る涙、何か悲しい夢でも見ているのだろうか。
防人は「大丈夫だよ」と彼女に手を伸ばすが、届いているはずなのにその手は届かない。
突如燃え上がった炎に遮られ、彼女はどんどんと遠くへ離れていく。
――待って!!
防人は意を決して炎の中へ飛び込む。
炎の壁を越え、ゆっくりと目を開けるがそこには視界の両端には天に届きそうなほどの高い高い炎の壁、正面には白いロボットが立っている。
突然のことで少し戸惑っていると白いロボットは光線を放ち、防人の手足を撃ち抜く。
防人はその場で崩れ、仰向けに倒れる。
「うぅ…」
自然と口から苦痛の声が漏れ、その場でうずくまる防人に白いロボットは何も言うことなく近づいていくと防人の頭に光線を放った。
◇
「うぁぁぁ!」
僕は叫び声をあげながら辺りを見回す。
どうやら誰かの部屋のようだ。
「夢……か……」
手で頭を支え、僕は安堵の息を吐く。
しかし、ここはどこだろう。青いマットの敷かれた広さ六畳ほどの小綺麗な部屋、僕のいまいるベットの反対側には机とパソコンが置かれており、何かの処理をしているのかボタン横のランプが点滅し、時折モーター音を唸らせる。
「ん?ああ目が覚めましたか」
扉が開き、一人の男性が中に入ってくる。どうやらこの部屋は彼の部屋であの戦闘の後、空から落ちてきた僕を運んでくれたようだ。
「あの時はびっくりしましたよ。なんてったって空から人が降ってくるんですから」
「はぁ…」
ずいぶんと明るい人のようだ。僕はそんな彼の話に相槌を打っていく。
「しかもその時は一人だったから隊長空から!…って叫べませんでしたしね。いやあ残念だ」
「はぁ、それでその隊長さんはその時どうしてたんですか?」
「あ、あぁ…隊長は俺をかばって死んだよ」
そう言う時、彼の声は少しトーンダウンした。
「死ん……だ?」
「あぁ、あの黒いのめちゃめちゃにミサイルやらバズーカやら撃ってきてたろ」
「はい」
「自分新人なもんで避けるのミスった所をかばって隊長はミサイルの直撃を受けましてね。自分は吹き飛ばされて、別々に森のなかに落ちていきました」
「……」
「爆風で壊れたのか自分のGWは動かなくて、それで歩いて見つけた時には死んでいたんです。今、彼は霊安室で眠っています」
「そう、なんですか」
「えぇ…後で報告書、書いて送って戦力の補強してもらっておかないといけませんね」
そう言って彼は両腕をグッと上に上げて伸びをした。
「まぁ、死んでしまっては何にもなりませんけど葬儀…は出来ませんが、納骨はしたいところですね」
トーンダウンしつつも彼は淡々と話す。
「そう、ですね」
僕はそれに頷くことしか出来なかった。
それからしばらくして僕は学園へと戻り、床についたのであった。
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