09-10
結局あれから奇跡の大逆転…なんてこともなく、めだかさんのGWの粒子シールドのエネルギー残量は底をつき決着。
めだかさんは心底悔しそうな顔をしながら僕に制服を返してくれそしてすっかりと暗くなった寮への道をとぼとぼと歩いていった。
制服に僕は着替えて更衣室を出たところで竜華さんと出くわした。
「あ、やぁ慧くん」
「竜華さん…」
「無事、制服は返してもらったみたいだね」
「えぇ、なんだかすいません。僕のせいで色々面倒なことになってしまって」
頭を下げる僕に対して竜華さんは横に首を振る。
「うんうん、君のお陰で逃げ回る彼女を捕まえられたから私はむしろ感謝しているよ。ありがとう」
「え?…あぁっと」
今までに感謝されたこと無いからこういう時はなんと返せばいいのだろうか?
どういたしましてはなんだか違う気もするし、こっちもありがとうといえばいいのだろうか?
…僕には…分からない。
何てな事を頭の中で巡らせている内に彼女は頭を上げ、口を開いた。
「ところでその彼女…愛洲 めだかはどこにいるか知っているかな?」
「?めだかさんなら帰りましたよ」
「そう…分かった。ありがとうね、それじゃあ私はこれから用事があるからまた明日ね」
「あ、はい…また明日」
「それじゃ」
竜華さんはそういうと手を短く降って、急いでどこかへ行ってしまった。
次の日、風紀委員室内には竜華さんに千夏さん、白石と女物の服を着た僕。
そして満面の笑みで僕の頭を撫でているめだかさんがいた。
「って何でめだかさんがここにいるんですか!?」
と言うと千夏さんがモニターを見ていた顔をあげて言う。
「それは昨日の勝負の条件で風紀委員と生徒会の雑用をすることになったからです」
「あー確かそうでしたね。言ってから思い出しました。…でも、僕がこの格好をさせられているのは何故ですか?」
千夏さんにそう言うと竜華さんが申し訳なさそうな顔で答える。
「それは昨日の夜の見回りで彼女に手伝って貰ったんだけどね。就寝時間過ぎているのにブラブラしていた男子生徒がいてね。捕まえて反省文書かせていたらね。いつの間にか彼女共々消。まぁ、彼女につけさせたチョッカー型の発信器ですぐに場所は特定出来たんだけど、私が着いた時には君の時と同じような状況になっていてね。相当その男子生徒は堪えたみたいで泣きながらもう深夜徘徊はしないと誓ったけど…」
「なるほど…」
つまりはめだかさんの病気、気に入った人を衝動的に部屋へと連れていって着せ替え人形にしてしまうたちの悪い病気が発症したのか。
「でもそれとこの状況と特に何の繋がりもないように思いますけど…」
首をかしげる僕に千夏さんが再び口を開く。
「彼女は衝動的にこの行為を行うとわかったので『度を過ぎなければ例の行為を行うことを許可する。ただし風紀委員室内に限る』という約束事を身勝手ながら取り付けました」
「はぁ…そうなんですか。つまりは…」
どういうことだ?
「つまりはワタシが防ちゃんを好きなだけ愛でていいということですわ」
「え、えぇ?…つまりは許可する例の行為の対象に今、僕はなっていると?」
「うん」
いや、『うん』って…
「ここに来るたびに僕はこのような格好をさせられると?」
「うん、そういうこと」
「いや、いやいやいや、いやいやいやいやいやいや、『そういうこと』ないでしょう?何てことを許可してるんですか、竜華さん!」
「いや、ほんとごめんね。君が風紀委員ってことを知らないみたいだったから彼女に教えたばっかりに」
「いや、悪いと思っているのならまだ…まぁ、いいですけど…これ生徒会の方はなんと言っているんですか?」
「『いいんじゃない?』」
「軽いな生徒会!」
「それから『風紀委員には愛洲さんが絶賛する子がいるのなら問題もかなり減るかもしれないし』って」
「それって生徒会の方々はめだかさんに僕を『売ってもいいよ』って言っているようなものですよね」
「あー…確かにそうだね」
「今気がついたんかい!」
「ワタシはこんな可愛い男の娘が手に入るならいくらでもお金は注ぎ込みますわよ」
「うん、少し黙っててめだかさん」
「(´・ω・`)」
「というか僕をめだかさんに売ったところで彼女の病気は衝動的に起こるもの。意味がないんじゃないですか?」
「んーどうだろうね。まだ彼女がここに来るのは今日が初めてだし、少し様子を見ないことには判断出来ないな」
竜華さんが悩んでいると白石が手を挙げながら言う。
「あのっそれじゃあ…一ヶ月ぐらい様子を見たらどう…すかね?一ヶ月の間、悪させずにいたら解放するっていうのは…」
「それだね。うんじゃあそうしよう」
「えぇ、決定なの?」
「今までの彼女の問題行動の日時をグラフにしてみました」
「千夏さんまで…」
こうしてなんかかなりなことが曖昧な気がするまま、めだかさんは一時的に風紀委員メンバーに新しく加わるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます