第48話「彼女達が水着に着替えた時、彼等は立つ」
珍しく空は晴れていたが、日差しが強く照りつけ、焼けるような暑さだった。
遠くでは陽炎が揺れている程である。
「あ、暑い……」
タケルは全身汗だくになっていた。
「……何この暑さ? 溶けそう」
北国育ちのユイはダウン寸前であった。
「大丈夫? お水飲む?」
キリカはユイを気遣い水筒を差し出す。
「ふう。生まれて初めてだな、こんな暑さは」
服の胸元を広げ、手で風を送るイズナ。
見えてるのにも気づかないくらいなので、彼女も相当参っているようだ。
「お? なあ皆、もう少し先に行けば湖があるみたいだぜ」
アキナが地図を片手に持ちながら言う。
「え、本当に?」
「間違いないよ。だからそこまで行って一休みしようぜ」
しばらく歩くと、そこには大きな湖があった。
辺りには森もあり、木陰で休めそうだ。
「おお、助かった!」
一行は湖の水を飲み、顔を洗って一息ついた。
「なあ、汗だくだし皆で水浴びしようぜ」
アキナがそう言うが
「あのねえ、私達水着持ってないんだし、そこに変態がいるんだから裸じゃまずいでしょ」
キリカがタケルを睨みつけながら言う。
「でも水浴びしたいよなあ。どうしよっか?」
アキナがそう言った時、後ろから声をかけてきた者がいた。
「あの、水着ならありますよ」
「え?」
それは頭にターバンを巻いているやや色黒の少年だった。
歳は十二、三歳くらいだろうか。
「あの、君誰?」
タケルがその少年に尋ねる。
「僕は旅のよろず屋をやってるダンといいます。さ、安くしときますよ」
その少年、ダンは腰に下げていた魔法の袋からたくさんの水着を出した。
「へえ、結構品揃え豊富なのね」
キリカがいくつかの水着を手にとって言う。
「はい。あ、テント張りますから着替えはそちらでどうぞ」
「あら、サービスいいわね」
「ええ。お客様の安心が大事だって教わりましたし」
そしてダンが張ってくれたテントで着替えた女子達が出てきた。
「おおおっ!?」
キリカは白いビキニ。
アキナは黄緑色のスポブラと短パン。
ユイは水色のワンピース、と三者三様だった。
「ふふ、どう?」
キリカが尋ねると
「うん、皆似合ってるよ!」
タケルは興奮気味に叫んだ。
ちなみに彼はトランクスの水着を履いている。
「わたしはすっぽんぽんでもよかったのに、皆が止めるから……シクシク」
ユイがわかりやすい嘘泣きをしている。
「あのねえ、似合ってるって言ってくれたのだからいいでしょ?」
キリカがやや呆れながら言う。
「……うん。(わたしのが一番、と言ってくれたらもっと良かったけど)」
「ん~、眼福眼福。あれ、そういえばイズナは?」
「まだ選んでたわよ。あ、出てきたって、え?」
「ふう、おまたせ」
「!?」
テントから出てきたイズナは赤いビキニ、というか面積が小さい水着を着ていて、見えそうなくらいだった。
「……ふふ、タケル、どうだ?」
イズナはニヤり、と笑うとその大きな胸を腕で持ち上げ、タケルに擦り寄る。
「ぶっ!」
タケルはあまりの刺激に思わず鼻血を出し、倒れてしまった。
アレはムクりとたったままだが。
「な、まさかあなたがそんな手を使うなんて!?」
「抜け駆けすんなよ!」
「おのれ、わたしに散々怒っといて、ずるい」
「何とでも言え。遠い国の偉人の言葉に『武士は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つことが本にて候』というものがあるのだぞ」
「それ何か違う!」
女子三人が揃って叫んだ。
「えーと、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。ってダンも大丈夫か?」
「ええ、なんとか」
タケルを抱き起こしたダンは鼻にティッシュを詰めていた。
――――――
所変わって、
「ふう、あいつらは相変わらずですね」
「そうね。しかしいきなり暑くなったわね。あ、もしかしてあいつが何かしたのかもしれないわ」
「え?」
「あ、何でもないわ。ところでイヨ。それ似合ってるわよ」
「そんな。タバサ様の方こそ」
イヨとタバサがいる場所は冷気のバリアで覆われていたが、それでも暑いようだったので水着に着替えていた。
イヨはその豊満な胸を黒いブラで覆い、下は紐パン。
それに十七歳とは思えん大人の色気があった。
そしてタバサは年齢不詳だが、見た目はどう見ても二十代後半位。
桃色の髪に優しげな顔立ち。
普段は白いローブを着ているが、今は黄緑色のビキニにパレオという格好だった。
あとついでに、彼女はひんぬー……。
「……しかし育ち過ぎね、それ」
タバサは鋭い目つきでイヨの胸を睨みつけていた。
「え、そう言われましても、勝手に大きくなったし」
「そう。羨ましいわね、えい」
タバサはイヨの胸をわし掴みにし、揉みしだく。
「え、あ、あの?」
「こんないけない子はお仕置きしないと」
そう言ってイヨを押し倒し、紐パンの紐を……。
「ちょ、あ、やめ」
「何してんですか、あなた達は」
「え、あ?」
イヨが声のした方を見ると、黒鎧の少年が鼻を押さえながら立っていた。
ついでに違うところもたっていた。
「あら、おかえりなさい。ミッチー」
タバサが振り向いてその少年の名を呼ぶ。
「ええ。ただいま戻りました……も、もう我慢出来ない。二人纏めて」
少年、ミッチーは勢い良くタバサとイヨに飛びかかったが、
「何しようとしたのかしら、この子は?」
ミッチーはタバサにあっさりふっ飛ばされ、床に倒れていた。
「えと、何も思わなかったらそれはそれで傷つきますが」
イヨは乱れた水着を直しながら言う。
「それもそうね。さて、起きたら神剣士達のところへ行ってもらいましょ」
「えと、こいつあの娘達を襲わないでしょうね?」
「もしやりそうになったら止めるわ。女としてそれは許せないから」
――――――
その頃
タケル達は湖で泳いだ後、ビーチバレーをしていたが、
「なあ、一緒に遊ばないか?」
タケルが皆の荷物番をしていたダンを誘う。
「え、僕はいいですよ。仕事中だし」
「そんな事気にすんなよ。何かが近づいてきても俺達ならすぐわかるしさ」
「え? ……はい、わかりました。では」
そしてダンも皆と一緒にビーチバレーに興じた。
そして夜になり、いくらか涼しくなった頃。
タケル達はダンと夕食を取りながら話していた。
特にタケルは歳の近い男同士というのもあって気が合うようだ。
「なあ、ダンはこれから何処へ行くつもりだよ?」
タケルが乾パンを食べながら尋ねる。
「人の多い所へ行こうかなと。もっとたくさんお金を貯めたいし」
「へえ。それでどうしたいんだ?」
するとダンは暗い顔になり、少し間を置いてから口を開いた。
「僕は強い人を雇いたいんです。領主を倒すために」
「え?」
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