緊縛(師匠の受け売り)

 正直言うと興味が薄いので、本気になって練習したのは後手縛りまで。

 見よう見まねで吊ったりも出来ますが、危ないので不特定多数の人には絶対にやりません。ちなみに、吊らない緊縛をグラウンドと言ったりもします。

 それほどまでに、緊縛=吊るということなんですね。恐ろしい事に……。これは、縛る側はもちろん、受ける側にも問題があるのですが、それぞれに安全な技術というものがあります。知らないと事故ります。絶対。


 さて、私が囓っているのは古典緊縛。ここから先は師匠の受け売りですが、発祥は江戸時代と言われ、主に犯人捕縛のための技術として発展してきました。

 ただ拘束するだけなら、西洋の枷の類いが効率いい、早い、技術は要らない、と三拍子揃っているので、日本独自の文化と言えます。「お縄を頂戴しろ」と言われたら、素直に従わないと「切り捨て御免」となってしまいますので。

 ちなみに、使うのは麻縄ですが、染め縄といって着色も可能で、役人も季節によって違う色の縄を使うなど、さりげなくおしゃれをしていたようです。侮れません。今でも、朱縄はよく見かけますね。

 

 その縄の技術ですが、当然のように犯人に「自白」を迫る拷問用としても使われる事になります。今見かける「~縛り」なんて言うのは大抵はそれ。四十八手みたいなものです。

 有名な亀甲縛りですが、あれも責め縄の一つです。ちゃんと縛れば、恐るべき苦痛を与える技になる、上級者向けのマニアックなものなのです。

 なお、お腹の辺りで縄が六角形になっているものが「亀甲縛り」です。よく似た菱形の「菱縛り」とは別物です。やってみれば分かりますが、凄まじく亀甲は難しいです。


 ここで現在に至るわけですが、緊縛はもはやアートの域に達しております。安全に縛る事を最大限に考慮すれば、自ずと綺麗な縛りになり、それはある意味もう「作品」です。非の打ちようがありません。

 しかし、それだけ見て真似してダイナミックな事をしようとするのは、ピカソの絵を見てただ真似するようなものです。ちゃんとその裏には理論、知識などに裏打ちされた技術があります。無数の細かい小手先の技もあります。見て真似出来るほど簡単なものではありません。


 酷い輩が本当に多いのもまた緊縛。まあ、私はひよっ子なので誰がどうやろうと知った事ではないですし、それで痛い目を見たらざまーみろと密かに思っていますが、ハサミだけは用意しましょう。縄切れない? なら……縛るな。ボケナス!!

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