ストーリーの展開を予想する

 さて今回は、ストーリーの展開について。

 

 ストーリーの展開には一定のパターンがあり、実際のところそんなに逸脱したものはなかなか作ることが難しい。逆にいえばそのパターン、テンプレートとでも言おうか、それをなぞることでストーリーは安定するし、上手くそのパターンを壊すことが出来れば、読者に新鮮な驚きを提供することが出来る。


 例えばこんなストーリー展開はどうだろうか。

 主人公は目的に向かって作戦を立てる。怪物を倒すため、殺人犯を捕まえるため、意中の彼氏彼女に告白するため、大きな戦争で自軍に勝利をもたらすため……。そして作戦の成功を祈って、主人公はひとりで、或いは仲間たちと動き出すのだ。

 目的や結果はなんだって良い。小説に限らず、映画、アニメ、漫画などでごくごく当たり前に見かけられるストーリー展開だ。

 このストーリー展開、その後は2パターンしかない。つまり作戦が成功するか、失敗するかだ。

 そんなの当然だろ? と思うだろうが、これは事前に予想が出来る。


 主人公が作戦を立てる時、その内容が先に明かされた時は失敗し、内容が明かされなかった時はその作戦が成功する可能性が高い。


 必ずしも確定ではないが、概ね展開は同じになる。

 何故かと考えれば至極簡単な話で、要するに先に作戦内容を開示しておいて、それからのストーリーがその通りなら、同じストーリーが二度繰り返されることになって読者には驚きがなくなってしまう。

 逆に作戦内容について何の説明もないまま始まって失敗すれば、じゃあ立てた作戦は何だったのか、ということになる。


 具体例を上げればこんなのはどうだろうか。

 『三国志』の中でも屈指の人気を誇る『赤壁の戦い』に関係してこんなエピソードがある。周瑜が諸葛亮の才能に脅威を感じて無理難題を吹っ掛けるのだ。


周瑜「船の大軍を相手にするには大量の矢が必要になる。一週間で一万本の矢を集めて欲しい」

諸葛亮「一週間で一万本? 私なら三日で十万本の矢を集めてごらんにいれよう」

周瑜「三日で十万本? バカな、そんなことが出来るものか!」

 しかし諸葛亮は動じない。そして場面シーンは転換し、闇夜に突然現れた諸葛亮の送った藁の人形を載せた船団に驚き、混乱して矢を撃ちまくる。で、次の日にはその船を周瑜に見せて、

諸葛亮「刺さった矢を集めれば十万本くらいはあるでしょう」

 と言うのだ。矢を手に入れただけでなく敵の矢を浪費させ戦力を削ぐ作戦も兼ねている(※)。


 これは「事前に内容が開示されないため作戦が成功する」典型的なパターンだといえる。読者は諸葛亮がどんな方法を使うのかと興味を惹かれるのだ。


 逆に悪例として、以前に読んだネット小説でこういうのがあった。

 主人公は中学生、電脳空間を支配できる力を巡って闇の組織と対立する。力の鍵は主人公が持っているが、電脳空間にアクセス出来る端末は組織の手に落ちた。組織より先にその力を手に入れるため、組織の建物に侵入して端末から電脳空間にアクセスする綿密な作戦を立てる。

 恐らく作者はこの作戦を余程練っていて読んで欲しかったのだろう、かなり詳細な内容を事前に書いていた。

 そして実際に行動を開始すると、逐一、作戦内容と同じ展開が続いた。つまり全く同じ内容が繰り返されたわけだ。

 その時の既視感デジャブの酷いこと。本当に最後まで同じだったので読むのが退屈で退屈で、クライマックスなのにさっさと終われと念じながら読んでいた(※)。

 こちらはかなりの苦痛だったが、作者にとっては自信作、最高の場面だったに違いない。


 このストーリー展開については、恐らく多くの人が「あ、これは失敗するな?」とか「どんな作戦なんだろう?」と、薄々と気がついていると思う。

 映画ではたまに、行動が開始されてから同時進行で作戦内容を解説する、という手法を見ることが出来る。

 個人的に面白いと思ったのが2010年『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』(※)だ。独特のノリと早いテンポで、ハンニバルの立てた一見無理そうな作戦を飄々とこなしていくのが楽しい。しかも同時に解説が入ることで説得力が上がる。


 逆に作戦内容を先に開示しながら、その通りになることを目的とする例外的なものもある。

 それは作戦が成功しても失敗しても悲劇的な結果しかもたらさない時だ。全滅するのがわかっていて愛する人を逃がすために囮になるとか、どちらにしても主人公が死んでしまうような展開では、よりドラマチックに魅せるために先に展開を開示することもある。


 ストーリー展開としてはなかなか崩しようがないパターンだが、それだけに読者に先を読まれやすい。

 だから不穏な要素、例えば信用できないキャラがほくそ笑むちょっとしたシーンを入れたりして、作戦がどちらに転ぶか読みにくくしたり、成功するとみせかけて失敗……しかしさらに逆転、などと何度もひっくり返す手法もとられる。もちろん事前にはきっちりと伏線を幾つも張っておくのだ。


 今回のストーリー展開の予想については、さほど難しいものではないが、物語を構築する上での基本というのは存在するので、自分で書くにしても誰かの作品を読むにしても、様々なもの(小説はもとより脚本、漫画、アニメ、映画、ドラマなど)に触れて勉強していくのが良いかもしれない。

 そして「自分が面白いと思えるものがなぜ面白いのか」を考えるのが一番の勉強になるだろう。


※『三国志』に関して、六畳ひとまは演出やストーリーの違う幾つかの三国志の作品(小説、映画、アニメ)を観たので、紹介したエピソードについてはその中からかなり適当にちゃんぽんして作ってある。だいたい有名な『三国志演義』ですら創作部分が多いんだし。


※この作品はストーリー展開もさることながら、悪例の見本市みたいなもので、三百年も未来の話なのに世界観は今とほとんど変わらず、電脳空間がどんなものか、それを支配するとはどういうことか、その力とは何かという説明が一切なければ、端末がどういうものかも力の鍵(作品内では指輪)をどうすればアクセスできるのかの説明もない。さらに普通の中学生の仲間(女子も数人いる)なのに特殊部隊並みに武器やトラップを扱い、結局、ラストも主人公が力を手にして大団円みたいに終わるが、何が何やらさっぱり理解出来ない作品だった。付き合いで仕方なく読んだものだが、本当に意味不明だった。


※六畳ひとまの年代だと『特攻野郎Aチーム』には特別な感情を抱く者も多いことだと思う。『白バイ野郎ジョン&パンチ』や『冒険野郎マクガイバー』など、なんか野郎ばっかだな。『ナイトライダー』とか『エアーウルフ』なんてのもあったっけ。どこか牧歌的に感じるのは、今が忙しなく世知辛くなってしまったからなのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー