三日目、第四試合、前半

「強さとは何でしょうか?」


「このカクヨム最強トーナメントは文字通り最強を決める戦いです。しかし、そもそも最強とは何なのか、は三日目の今まで曖昧なものでした」


「今まではなんだかんだで、物理的な強さが示されてきました。搦め手を使ったり、自分の得意分野に持ち込んで戦う。という者もいましたが……」


「そのどれもが前提に物理がありました。相手を戦闘不能にし、そして自分が勝ち上がる」


「しかし、ここで出会ったのは一般人と探偵。どちらも物理的な戦いを望まないものです」


 探偵、毒梨 林檎は、試合が始まる前の時間に、淡々と話している。その手には一切の武器は無く、ポケットにも見当たらない。


「どうでしょう? ここでちょっと形式を変えて、「知能」で戦ってみるというのは?」


 探偵は、そこにいる一般人に問いかける。彼女の対戦相手である、人間の触覚選手だ。


「まあ、確かにそっちの方が俺的にもいいですね。具体的にはどんな感じです?」


「なに、簡単な事です。私が簡単にミステリーの問題を出しますから、あなたにはそれを解いてもらいます。そうですね……大体、このドームがライトアップされるのが午後7時ごろ。今は四時十五分ぐらいでしたっけ」


「丁度いいですね。このドームがライトアップされるまでに、私の問題を解けたらあなたの勝ち、逆に、解けなかったらあなたの負けって事で……」



 探偵が定めた条件の意味は、一般人の彼にもすぐにわかったらしい。彼も彼女もどちらも、戦いを望んではいない。つまり、この勝負。


 


「ええ、自信は無いですが、それで行きましょう。よろしくお願いします」







 冷ややかな緊張が、会場を包む。そして、嫌に機械的な音が聞こえ、


「大変お待たせいたしました。四時二十分。既定の時刻になったため、試合を開始します。……また、お二人の会話をくみ取って、今回は特別ルールで行います。そのため、試合毎トトカルチョは無しという事に……」


 とのアナウンス。それを聞いた人相の悪い一部の観客達からは、「ふざけんな!」という歓声混じりの怒号が飛んだ。そして、


「試合、開始!」


 審判の声と共に、観客の騒音が最高潮になり、試合が始まった。


「それでは、出題します。題して、「フルーツバスケット」」








「まず、事件は一つの館。その広間から始まります」


「広間には、客人のAさん、Bさん、Cさん、Dさん、医者のFさん、探偵のGさんの六人がいます。全員のんびりしてますね」


「ちょっと多くてわかりづらいな、減らせないか?」


「減らしますよ、これから」


 彼女は嫌にニヤついた笑みを浮かべると、話をつづけた。


「さて、そんななかにこの館のメイドであるEさんが食事を運んでくる。全員はテーブルにつき、Eさんが持ってきた食事を食べた」


「そして、なんという事だろう。客人の一人である、Dさんが、突然苦しみだした。皆が駆け寄って声をかける中、Dさんは息絶えてしまった。医者であるFさんがが検死したところ、毒殺だった」


「メイドが犯人だな!」


「まあ、そうなりますよね。さて、それを受けた六人は疑いの目をメイドであるEさんに向けます。ですがまあ、すぐに全員に向きます。毒を入れるチャンスがあるだとか、毒を所持できるだとか。ちなみに、Eさんのほかには、Aさん、Gさんが毒を入れるチャンスがありました」


「さて、そんな疑心暗鬼の惨状に耐えきれなくなった三人……Aさん、Bさん、Cさんが席を立ち、自室へ向かいました。「俺は犯人と一緒にいられるか! 自室へ戻らせてもらう!」っていう風に」


「あ、この三人死んだな」


「はい、お察しの通りなんですが、まあそれは後ほど。取りあえず、残された三人はこの後ずっと広間にいることになります。……が、まあ、不自然ですね。三人で人生ゲームでもしてたことにしましょうか」


「人生の終わりを見た後に人生ゲームをやるのか……」


「確かに、言われてみれば不謹慎ですね……。取りあえず、事件に関係のない話は置いておいて。大体20分後ぐらいの事です。メイドであるEさんがAさんに、コーヒーを運びに行きました」


「しかし、Eさんがいくら扉をたたいても、Aさんの部屋から反応は無し、Dさんの事もあり、EさんはFさんとGさんに応援を要請。Gさんがドアを蹴破りました。すると……」


「中にはAさんが倒れていました。Eさんが悲鳴を上げ、Fさんが駆け寄ります。Aさんは既に息絶えており、死因は毒でした」


「さて、ここで勘のいいFさんがあることに気が付きます」


 と、出題者が言うと、それに反応するように、回答者、対戦相手が言葉を出した。


「……悲鳴を上げたのにBさんとCさんが来ていない事?」


「お、するどい。その通りです。疑問に思ったFさんは腰が抜けているGさんではなくEさんにCさんの様子を確認するように指示。FさんはBさんの様子を確認しに行きました」


「それぞれの部屋の前に立ち、呼びかけてみても反応は無く、鍵が掛かっていました。そのため、ドアを蹴破り、中へ侵入しました。すると……」


「BさんとCさんが頭から血を流して倒れていたそうです。Gさんもこの後二人の死体を確認し、殴打の跡が確認できました。Fさんの検死によると、二人とも死因は撲殺であったそうです」


「さて、三人はこの事件が所謂「密室殺人」であることに気付き、各部屋の探索を始めました。大体の密室殺人は現場に何か重要な証拠品があるものです」


「そして、三人による懸命な捜索の結果……Aさんの現場からは「メロン」と「ピアノ線」。Bさんの現場からは「イチゴ」と「アルコールランプ」。Cさんの現場からは「バールのようなもの」と「ぶどう」が見つかりました」


「大分色とりどりでおいしそうな事件だなー……あれだ、林檎が入っていないあたり、やっぱそういうの気にするんですね貴方」


「やっぱり事件に自分の名前を使うのはちょっとね。……さて、ここでGさんがあることに気付く。そういえば、私達が食べた食事の中にはおいしい「桃のタルト」があったではないか! おそらく、Dさんはそれに入れられた毒によって殺されたのだ! ってね」


「それは各人にそれぞれ切り取られて配られました?」


「いいえ、桃のタルトは大皿に乗せられていて、そこから各々切り取って食べる方式のデザートでした。もちろんすべてがそうという訳でなく、各人にそれぞれ与えられた料理もありましたがね」


 彼女は、その言葉を言い終わると、周囲を確認した。大体言い終わるのに十分ほどだっただろうか。おそらく、考えるのに十分な時間はあるだろう。


「さて、こんなところです。一体、四人を殺した犯人は誰なのか。三人のなかに犯人はいます。当ててみてください」

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