探偵にミスは許されない

「そういえば、今日は武闘大会の日でしたね……正式名称忘れたけど」

一大イベントに沸き立った村人たちが、すっかり村から出て行って、寂しくなった村を眺めると、そんなことを思い出した。


「ふーむ」

私は暇であった。開業中といっても、仕事がある訳でもない。こう小さな村で頻繁に事件が起こっていては、困るという物である。

村人たちは出て行って、新しい仕事を見込めるわけでもない。

それならば、その武闘大会という奴を見に行こうかとも考える。

しかし、私は生涯冒険および戦闘という物に関わったことがなく、またそれに対して楽しさという物を見つけることができない人間であった。


そんな人間が行っても楽しめるのだろうか。


少しの間考えた後、一つの結論に至った。


「行きますか……」




少々近未来的な会場は、早くして大盛り上がりであった。

大陸中から観客が押し寄せ、職業人種階級関係なく沸き立っていた。試合はまだ始まっていないというのに、ひどい熱気である。


観客席のチケットを買うために、受付に行こうとする。

……しまった。地図を持って来るのを忘れた。


自身の勘を頼りに受付に行こうとするが、無駄な抵抗。完全に迷ってしまった。

「……こういう時の為に能力があるんですよ」

敗北感をかすかに感じつつ、能力を発動する。

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「この会場」の「受付の場所」のヒント


・入り口の近く。

・人が集まっている。

・3つもヒント要らないよね?

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「あっ……あそこかぁ……」

会場に来たばかりの光景を思い出し、合点した。



「すいません、受付ってここですかね?」


「はい、そうです」

よかった、やっとたどり着けた。

「こちらに名前をお書きください」


と、渡された紙に名前を書く。


ーー自身が、ミスを重ねているとも知らずに。


「これで大丈夫ですかね?」

といって紙を返す。


返された紙を、受付嬢は少々の間見て、

「はい、大丈夫です!エントリーを承りました!」

と言った。


……ん?


「えっと……今、なんておっしゃいました?」


「……?エントリーを承りましたと言いましたが?」


「それって、戦う方の奴ですか?」


「そうですが?」


「あー……すみません、それ取り消ししてもらってもいいですね?」


「取り消しできません」


「えっ」


「それでは、ごゆっくり」


「えっ、あの」


「それでは、ごゆっくり」


そういうと、受付嬢は懐からハンカチを取り出し、音速に近い速さで口に当ててきた。どうやら、そのハンカチには気絶する成分が含まれていたらしく、私の意識は暗転した。



気が付くと、控え室という言葉を空想で思い浮べた時まんまな部屋にいた。

「もしかして……これは……」

自身の思考に、ふっと力を入れる。


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「この状況」のヒント


・ヒントじゃなくなるけど

・つまり君は

・武闘大会に参加させられたってわけだ。

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「……」


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「生き残るため」のヒント


・死んだら蘇生してくれるって、よかったね!

・え?死なない方法?

・んなもんねーよ(笑)諦めたら?

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「……」


死ぬ感覚は嫌そうだなあと思いました。

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