第83話マルベスト公王

オーク傭兵団は旅立った。

このままこの国で、私に仕えて欲しいと頼んだが彼等にも目的があるのだろう。

オークの旦那と呼ばれているオークの団長からは数ヶ月であったが近くで多くの事を学ぶ事が出来た。


リーダーとは画してあるべきか、周りから尊敬され不思議な魅力で人を惹き付けた。

私も惹き付けられたその1人であるが。


そういえば、初めてオーク殿を見たときに

父王が話されたおとぎ話を思い出した。

公国の建国王の話である。



数百年以上も昔々、公国が建国された時の話

初代公国王は元々は王族の庶子に生まれたが

王になる資格は無しと王位継承権を持たされなかったが、戦争で父王が倒れ敵国の暗躍により継承権を持つ兄弟姉妹も倒れ、残されたのが初代公王と、まだ年ばもいかない腹違いの妹のみ。


そこで周りの大人が仕方なしと妹御が成長なされる間の繋ぎに庶子であった初代公王を御輿に担ぎ上げた。


統治は順調であったのだが成長された妹御との争いに発展しかけ初代公王はそれを嫌い小さな領地に御隠れになられたのだ。


しかし、その後その国は戦争に敗れ公王が治める公国のみが残った。その土地は現在の公国より南の山脈を越えた辺りである。

今では南の山脈は雪に覆われているが

初代公王の時代には大変緑豊かな所であった

それが何故かと言うと、南の山脈にはドラゴンが住んでいたのだ。

ここでおとぎ話の本題であるのだが

初代公王とそのドラゴンとの間に何かしらの繋がりがあったと言うのである。


戦争で公国が生き残れたのはドラゴンが守護をしたとか、時々初代公王の元へとドラゴンが遊びにくるだとか信じられないような話ばかりが語り継がれていた。


そういう話を思い出した。

初代公王にとってのドラゴンは、私にとってのオーク殿であるのかもしれない。


数百年後に私とオーク殿との話が語り継がれる頃にはおとぎ話だと思われてしまうのかな

それとも、また違った形で残っているのかは私には分からないが。今この瞬間には全てが真実である。


また会う約束をして…。





この別れがオーク殿との永遠の別れであったとは、約束は永遠に叶うことがなかったとはこの時の私は欠片も疑うことはなかった。

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