第73話オークラとオーク傭兵団
雪が続くが雪山に比べれば何のその。
マルベスト公国の公都にやって来た。
ここへ来るまでの村や街はひどい有り様だった。一年間の大半を雪が積もるこの土地では食料の大部分を輸入で賄っている。
今は経済封鎖で食料が運び込まれ無いこの国では満足に腹を満たす事は出来ない。
立ち寄る村々で、オークの旦那は狩りで捕った肉を村人達に分け与えたりとしていたが
その場しのぎにはなっても数日でまた逆戻りになってしまう。
本当は人目が多い公都には立ち寄らない方針であったが、オークの旦那が向かうと言い出した。
公都の人間はさぞ驚いた事だろう。
オークと47人の男達が武装して公城目指して歩いているのだ。遠巻きに見つめる目がいくつもあった。門番は腰を抜かし
「て、敵襲!!」
と言って這うようにして城へと駆け込んだ。
ゾロゾロと兵士達が城から出てくる。
大事になる前に、学者が白い布を振って城へと1人歩いていった。
誤解は解けたらしい。兵士達の間に道ができ
1人の子供が歩いてきた。
「彼がこの公国の公王だ」
学者も戻っており城内へと通される。
わざわざ出てきたのは、どうやらオークの旦那の姿を見たかったようだ。
「本当にオークなの?被り物じゃないの?
言葉は分かるの?」
公王はまだ子供でオークの旦那に矢継ぎばやに質問している。
「はい。オークの旦那は私達の話す言葉を理解しています。本当に魔物のオークですよ。上位種かも知れませんが」
通訳しているのは学者だ。俺達では敬語でしゃべれないのでこういう時、学者は役に立つ
「オーク傭兵団を公国で雇ってほしいのです」
全ての質問に答えた学者は最後にそう切り出した。
「本当?」
目を輝かせて聞く公王に後ろから
「お待ち下さい公王様、得体の知れない者達を雇うなんてとんでもない!ましてや魔物」
大臣と呼ばれた中年の男から待ったと横槍がはいる。
まぁこちらとしても学者の想定内。
「いつ帝国が攻めてくるかも知れないのでしょう?兵数も圧倒的に不利。このまま蹂躙されるのを手をこまねいて待つのですか?」
押し黙る大臣。少しでも人の手を借りたいとは思っているのだろう。
帝国に占領された国では、王族達は処刑されている。反抗の意思を削ぐ為であり、担ぎ上げる者が出無いようにだ。
このままいけば幼い公王も…。
最終的に大臣が折れた。
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