第60話オークラと11人の山賊

俺はちんけな盗賊団のホルド。

元々は農家をやっていたが法外な税金を払えと領主がやって来た。村人と話し合ったが

用意出きるのは村人の半分程で、次男の俺や

数人は奴隷になるのを嫌い話し合いで村を出ていく事に決まった。

しかし、学も無く当ても伝も無い俺たちは

一年も経たずして山賊に身をやつしたのだ。


通る行商人から上前をはね、時には護衛の真似もした。細々と盗賊をしていたが人殺しはしなかった。しかし、残忍で有名なマグナが頭をする盗賊団達に目をつけられてしまった。あいつも盗賊だが、襲った商人や護衛を皆殺しにしたりと酷い奴で、俺達はマグナ盗賊団からのがれるルートを行商人に売ったのがばれてしまったようだ。


最近マグナ盗賊団に若い学者上がりの男が

加わったと聞いた。その学者を参謀として

暴力だけだった盗賊団が知恵をつけ一段と厄介な盗賊団へと変貌してしまったのだ。



今回商人に裏道の情報と護衛で金を貰ったのだがどうやら罠に嵌められたようだ。

マグナ盗賊団に追われ南へと逃走中である。


追われる間に森の奥深くへと迷い混んでしまった。


「お頭!何とかあいつらを撒けましたが

この当たりは魔物も出る危険な所ですぜ」


「分かってる、しかし戻るとマグナの野郎に捕まっちまう」


「そうですが…」



この時無警戒縄張りに入ってしまっていたのか森の主を呼び覚ましてしまった。


「お、お頭!!レッドベアが!!」


なっ、クソッ!!


木々の間からその赤い悪魔は姿を現した

死を覚悟する、簡単に逃げさせてはくれないだろう。よだれを垂らし、人の頭をかぶり付ける程大きな口を開け俺の方へと迫ってきた


「お前達は逃げろ!!」


「でもお頭!!」


でもも案山子もねぇ。


レッドベアが大きな手の爪で切りつける。

その一撃で俺の粗末な鎧は真っ二つになった。


なんて切れ味だ、次は俺の体が真っ二つになっちまう。


「グオオオォォォォー」


レッドベアは雄叫びを上げもう一度俺に攻撃を加えようとした。

その時!


「ブモモモ!!」


レッドベアに匹敵するほど大きなオークがなんと俺とレッドベアの間に割って入ってきたのだ。


そのオークはレッドベアの攻撃をいとも簡単にあしらっていた。右手には大きな棍棒を持ち体勢の崩れたレッドベアの腹に重い一撃を喰らわせた。その一撃でレッドベアは崩れ落ちた。


俺は腰を抜かしてしまった。

のそのそとオークは俺の方へと歩いてきた。

逃げたと思っていた盗賊団の仲間達が

オークに対して武器を構える。

しかし、皆腰が引けていた。


馬鹿野郎逃げろって言っただろ!!


オークはそんな俺達に気にすること無く

俺の横にあった燃えやすそうな枯れ木を集め始めた。枯れ木に火を付け何処から出したのか大きな鍋を出し、水袋から水を鍋に移し火にかけレッドベアを捌き始めた。


俺達は動くに動けず、オークが料理をするのを見つめていた。だんだんと良い香りが辺りに立ち込める。どうやら熊鍋を作っているようだ。出来上がる頃には俺達も腹を減らし

先程から皆グゥグゥと腹がなり、ゴクリと喉がなる。そういやここ二、三日ろくなものを食べていなかったな…。


出来上がった熊鍋をオークが一口食べようとして、見つめる俺達の目線に気が付いた。

どうやら眼中に無かったようだが、物欲しそうな俺達に手招きした。

どうするかと、皆の顔を見るが皆熊鍋に夢中で、これが罠で命を失うことがあっても諦めがつきそうだ。


オークに近寄ると、これまた何処からかお椀を人数分取り出しよそってくれた。



う、旨い!!

なんだこれは今まで食べたことがない!!

このオークは料理の天才だ!!




必死に熊鍋をかきこむ俺達にオークさんはおかわりまでくれた。


代表してお礼を言うと、ブモモと頷く。

このオークさんはどうやら言葉が分かるようなのだ。俺達はオークさんの事が気になり

色々と質問をする。


どうやら旅をしているようで王国よりももっと北へと向かっているらしい。

しかし、オークさん、いわゆる魔物が人の街や国境を越えるとなれば苦労するのでは無いだろうか?


この日は焚き火を囲み満腹で眠りに就いた。



翌日俺は仲間達に別れを告げた。

恩人であるオークさんと共に旅にでて

恩返しをしたいのだ。



「お頭!何言ってんすか?俺たちも一緒にいきますよ!」


「お前はオークさんの旨い料理が食いたいだけだろ」


ちがいないと笑い合う。


本人に了承を得ないまま俺達11人の意思は固まった。

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