第38話商人アルバイ

ゴブ太さん達ゴブリンの列の後を付いていくと、綺麗な花が咲いた広場へと着いた。


なるほど花の蜜などを集めあの酒の材料に

するわけかと1人納得していたら、

ゴブリン達はどんどんと歩くのを止めず

また、森の中へと歩き続ける。


すると直ぐに何やら大きく異様な建物が見えてきた。初めて見るタイプのもので、私には検討もつかない。


するとゴブリン達からは先程の熱気が消え

皆が静かにあの建物に近づいていく。

40匹にも及ぶゴブリン達が皆々音を消し摺り足で少しずつ少しずつ近づいていくのだ。

なにやら緊張感が伝わってくるのを感じる。


私はその緊張感に耐えられず喉をゴクリと鳴らしてしまった。

すると私が喉を鳴らしたせいなのか、建物の大きく口を開けた暗い入り口から「ブブブブブブ」と異様な音が鳴り響いた。

そこから出てきたのはなんだ!!


ゴブリン達よりも一回り大き姿をした

あれは!!蜂!?それも大群!!


姿をみた瞬間ゴブリン達が雄叫びを挙げた

そしてそれぞれが手に持つ武器を振り上げ

大きな蜂達が守る建物へと目指し走り出した

そしてあらゆる場所で戦闘が繰り広げられる。


バタバタと倒れるゴブリン達。

蜂達の大きなお尻の針で突き刺され

ビクビクと痙攣をしながら息耐えていく

何とも恐ろしい光景であった。

横にいるゴブ太さんは凶悪そうな笑顔でそれを見つめるのだ。


そんな中、ゴブリン達も蜂を倒しながら次々と吸い込まれるように建物の中へと消えていった。


暫く続いたこの戦闘も、建物の中から樽をかかえたゴブリン達が出て来た瞬間に終焉を迎えた。


その樽を抱えたゴブリン達は戦い敗れ倒れたゴブリン達に近づき膝を付き口元に何やらしているのが見える。

死んだゴブリン達の形見や、恐ろしくも今もブルブルと痙攣をするゴブリンの最後の遺言を聞いてるに違いない。


倒れて死んでいると思っていたゴブリンが急にムクリと起きあがった。

同じく倒れている蜂達も起き上がる。

戦いが間だ続くのかと身構えるが

先程まで死闘を繰り広げていた双方はお互いの勇姿を讃え合いながら肩を抱き合っている

蜂に肩と呼べる部分があるのかはさておき

羽を羽ばたかせながら器用だ。


普段の森でこんな光景を見かければただただ恐ろしいが、今はなんだか微笑ましい。



見慣れない建物のについてはどうやら

コロニーと呼ばれる女王蜂の巣であった。

ここの女王蜂から巣だった女王蜂は他に3匹

おり、其処にも此処ほどではないが

大きなコロニーが出来上がっているようだ。


しかし、現在はダンジョンマスターの正式な支配化にはなく、蜂蜜の採集はここよりも危険な任務になるらしく滅多に行われない。

ここの女王蜂はゴブ太さんと同じくダンジョンマスターが直々に召喚した魔物であるため

仲良く(と言って良いのか分からないが)しているようで、今のこの光景があるのだ。



突然コロニーの入り口からまたもや「ブブブブブブ」とさっきよりも大きな羽の音が聞こえてきた。

滅多に地上に姿を表すことが無いそうで

ゴブ太さんも少し緊張している風に思える。噂の女王蜂本人の登場だ。


これはデカイ!!


大きな入り口からギリギリ出れるほどで

地上で戦っていた働き蜂のゆうに倍はある。

ゴブリンの2,5倍。


巨体ではあるが女王らしく優雅に此方へ飛んで来た。

私は恐る恐る頭を下げ挨拶をする。

ゴブ太さんが通訳をしてくれた。

訪問した経緯と話してくれると、懐から小瓶を手渡される。

中には琥珀色のとても綺麗な液体が入っており、恐る恐る蓋をあけると中から芳醇な甘い匂いが漂った。

横にいるゴブ太さんはヨダレを垂らさんばかりに私の手元の瓶の中身を見つめていて少し怖い。


女王蜂と物欲しそうなゴブ太さんの視線を感じながら私は瓶の中身を一口頂く…


!!!!!!!




はっ!!

昇天しかける程の美味!!


手元の瓶に、たっぷり入っていた蜂蜜は

いつの間にか無くなっていた。

まぁ、私が全部飲み干してしまった訳だが。


ゴブ太さんは残念そうにしている

少し申し訳ないとも思えるが、いつもお酒にして飲んでいるのでは?と思うが

どうやら、先程の瓶の蜂蜜は特別製であるらしい。なるほど、それでは我を忘れて飲み干してしまったのも仕方がない。


私が感涙の涙とゴブ太さんが悲しみの涙を流している頃、女王蜂はいつの間にかコロニーへと帰っていた。これは私とした事がお礼も満足に言えてなかった。



女王蜂のコロニーの帰り道。

ゴブリン達が抱える樽は3つ。

この樽には並々と蜂蜜が詰まっており

これを持ち帰りゴブリン達がお酒へと仕込む

樽の蜂蜜の味見もさせてもらうが、大変美味しく抜群の甘さ。瓶の蜂蜜と比べてしまえばだいぶ劣るが瓶蜂蜜が別格過ぎるのだ。


私の悩み事はこの蜂蜜との出会いにより

解決する事になる。


この後に砂糖を一切使わない、

はにーミルクあいすが完成することになる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る