第141話 変態的なパーティ

「正直、ソフィは連れて行きたくないのですが」


 ちらりと様子を見ると、ソフィはうつむいた。

 足手まといだから、とはっきりとは言わなかったが、本人は自覚しているのだろう。


 一方、隣のトビは、一緒に行けると知って少し嬉しそうにしていた。

 暇な時間から解放されるからなのか、あの球が欲しいのか。


「軍の連中がついてくることになった」


 シャルムが嫌そうに言った。


「ソフィには、そいつらの相手を頼みたい」


 今度は俺ではなく、しっかりとソフィを見る。


 なるほど。

 足手まといをあえて配置して、騎士どもが勝手に動き回るのを抑制するわけだ。


「ソフィ、わかったな? 騎士に守られる姫役だ。慣れているだろう?」

「わかりましたわ……」


 役割をもらえたという喜びと、それは役に立たないからであるという悔しさがないまぜになった複雑な表情だ。


「トビのことも頼む。こいつ、人間だと何もできないから」

「はい!」


 こちらには元気よく返事をした。


 トビが騎士たちのおとりとなってくれれば一番なのだが、話せないこともあって、そこまでは上手く立ち回れないだろう。

 かといって、スラグの感知にけているトビを連れて行かないわけにもいかない。

 ソフィに任せるのが一番だ。


「トビさん、よろしくお願いしますね」

「はいっ!」

「よ、よいお返事、ですわね」


 ソフィが動揺していた。

 その理由に思い当たったのは、恐らく俺だけだろう。

 俺も内心驚いていた。


「パースジェラルド殿は、魔法陣の解読を。周囲のスラグを一掃してからゆっくりと調べてもらうのが理想的だが、十中八九そうはならない。僕らがスラグたちを抑え込んでいる間に、手早く調べて欲しい。可能なら、魔術による援護も頼みたい」

「ははは」


 パースからは乾いた笑いしか出てこなかった。


 戦闘中に地面の魔法陣を調べてくれと言われて、はいわかりましただなんて頼もしい言葉が返ってくるわけがない。


 しかも、シャルムの最後の言葉の意味は、「余裕があったなら補助魔術や援護射撃を」という言葉通りではなく、「スラグを取りこぼしてそっちに行ったら自分で対処してくれ」なのだが、そこまでの考えに至っているかどうか。


 同情はするが、これが最善だ。




 翌朝。

 万全の――俺が魔法陣の質に不満がある以外は――準備を整え、俺たちは街門前に集合した。


 早朝にも関わらず、外ではスラグとの小競り合いが続いているらしい。

 夜に森に引き上げるなり、その場で眠りについてくれるなりしてくれれば掃討も進むのだが、そんな楽はさせてくれない。

 交代しながら狩りに出たりその場で眠ったりしていて、通常のスラグと同様に、人間顔負けの集団行動を取っているとのことだ。


 最後に、青い顔をしたパースが現れた。


 逃げ出さなかったことに拍手を送ろうかと思ったが、女王陛下代理のシャルムの要請を断ることはできず、さらに下手をすれば師匠の怒りを買うとなっては、来ざるを得まい。

 俺はパースに再三同情し、心の中で慰めの言葉を送った。


「全員揃ったな」


 シャルムは俺たちの顔を眺めてから、リズを供に門に近づいていった。

 その場にいた騎士の一人を捕まえて何やら話すと、しばらくして、えらく重装備の四人グループが現れた。


 シャルムが彼らを引き連れて、俺たちのところに戻ってくる。


「彼らが、今回同行する国軍の騎士たちだ」

「リーダーのマクレガンだ。よろしく」

「こちらのメンバーは装備を見てくれれば大体わかるだろう」


 シャルムが俺たちを見ながら言う。


 見た目では、魔術師二名、剣士――うち一名はメイス――が三名、街の住人一名だ。


 しかしその実体は、少年の格好をした天才少女特別審査官、国内一の魔法陣の読解力を持ちながらビビりまくって挙動のおかしい特級魔術師、女剣士の格好をしている特級持ちの女王陛下、男剣士の格好をしている魔力ゼロの魔法陣師、メイスを持った金髪の怪力少女剣士兼火力制御不能の魔術師、街歩きの服装で人間のふりをしているドラゴン、である。


 ますます変態的なパーティになってきた。


「今回の指令ににそぐわない人物が二人ほどいるようだが」

「というと?」

「そこの娘は幼すぎるし、なぜ金髪魔術師なのに杖ではなくメイスを持っている? そちらの男に至っては、ろくな装備もしていない」


 マクレガンがソフィとトビに目を向けた。


「娘は回復要員で、男はスラグの感知にけている。二人とも戦闘が得意とはいえないが、必要な人員だ。こちらのメンバーには口を出さない約束だったと思うが?」


 魔術師が重そうなメイスを持っている説明には全くなっていないのだが、そこは突っ込まないでおく。


「その決めごとは聞いているが……ここまで不自然だと不安にもなる。失敗はできない以上、慎重に進めなければならない」


 マクレガンが言うと、それ以外の騎士が、そうだそうだとうなずく。


「だからこそのこのメンバーだ。不満ならついて来なくていい」


 しかしシャルムは一刀両断にした。


「それであんたらが失敗したら目も当てられない。同行はさせてもらう」


 シャルムは無言でマクレガンを一瞥いちべつすると、門に向かって歩き出した。

 俺たちもその後に続いた。

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