206 群青の空の下で1
前話で但し書きを入れるのを忘れていました。
不快な思いをされた方、申し訳ありませんでした。
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ラグラスに引導を渡した翌日、タランテラだけでなく各国間で多角的な協力を約束した条約が正式に締結された。特に幅を利かせていたカルネイロ商会を排除した後の流通や、礎の里の再構築に関して活発に意見が交わされ、今後も協力関係を続けていくことで各国の意見は一致した。
今までの様にバラバラに対処していたのでは解決できなかっただろう。シュザンナの下、驚きの結束力でかつてない成果を上げた臨時の国主会議は幕を下ろした。
「後は明日の認証式ですね」
フレアが淹れてくれたお茶を飲みながらくつろいでいると、アルメリアが嬉しそうに話しかけて来る。
アルメリアがフォルビアに到着したその日、出迎えたフレアとコリンシアの姿を見て安堵のあまり彼女は思わず泣いてしまった。コリンシアとフレアはもちろん、その場にいたソフィアもブランドル公夫人も、そしてちょうど正神殿から到着したシュザンナとアルメリアももらい泣きしてしまっていた。その為、ご婦人方の化粧直しの為に会議の開始が遅れる事態となってしまった。
ちなみにその待ち時間でエルフレートはエドワルドにブランカとの仲を散々追及された。更には彼女を男だと思い込んでいた事をヒースがバラしたことでダメだしされ、エルフレートは会議が始まる前に気力を根こそぎ奪われていた。
こんなことが出来るのも全ての懸念が払しょくされ、タランテラ側も他国の賓客達も心に余裕が出来たからかもしれない。
「そうだな」
お茶を飲み干したエドワルドは妻から息子を預かって腕に抱く。今は眠っておらず、あーとかうーとか声を出してご機嫌な様子だ。この場には他にコリンシアが居て、赤子のプニプニの頬をつついて遊んでいた。
「それでね、先方から打診されている未解決の案件が一つあるのだけど」
「え?」
アルメリアの言葉に、さて、何の事だろうか? とエドワルドは真剣に考えを巡らせる。片端から思い浮かべてみるが、心当たりがない。真剣に悩んでいると、お茶を淹れなおしてくれたフレアが横からエルヴィンを抱き上げた。
「何か、あったか?」
降参してアルメリアに尋ねると、彼女は少し悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「叔父上と叔母上の婚礼です」
「は?」
「え?」
思わぬ答えにエドワルドもフレアも驚いて固まる。
「いや、
エドワルドは慌てて否定する。何しろ国の状態を
「これは先方から申し出られたものです。既に大母補シュザンナ様から認証を頂いております。そして何より、先代女大公グロリア様の御遺言では叔母上は婚姻なさらないとその地位を継ぐことが出来ません」
それはエドワルドも分かっている。だからこそ昨年、正式なフレアの大公位の認証式は秋の婚礼と一緒に行うつもりでいたのだ。
「ミハイル陛下もアリシア妃の御心情を慮れば、ここはお受けするべきと考えます」
「……準備はどうする?」
「皆様にご協力いただいて進めております」
アルメリアがキッパリと言い切ると、エドワルドは反論できなかった。傍らに立ち尽くすフレアと顔を見合わせていたが、やがて降参とばかりに大きく息を吐く。
「分かった」
エドワルドの答えにアルメリアは満面の笑みを浮かべ、呼び鈴を鳴らした。すると、何かを乗せた銀の盆を手にしたオルティスが部屋に入ってきた。その後にはユリアーナ続き、フレアからエルヴィンを預かる。
「殿下、
盆の上にあったのは見覚えのあるビロード張りの箱だった。北棟の自室に保管していたはずのものが目の前に現れ、2人の婚礼が随分と早い段階で計画されていた事に気付いた。エドワルドはもう一度ため息をつくと立ち上がってそれを手に取る。そしてそれをフレアに手渡した。
「フレア、これを」
フレアはそれを受け取ると、肩に止まるルルーに意識を集中してその蓋を開ける。中に入っていたのは、エドワルドから結納として受け取ったあの大きな真珠をあしらったティアラだった。
「まあ……」
その美しさにフレアだけでなくその場にいた女性陣が感嘆の声を上げる。
「ここまで整えて頂いたんだ。明日の晴れの日に身に付けて欲しい」
「はい……」
フレアは感極まって涙を流し、小さく頷いた。
「では、叔母上、準備があるから行きましょう」
フレアが頷いたのを見届けると、アルメリアは彼女を
「認証式の前に婚礼が行われます。その為の御準備があるので、今宵女性陣は神殿で過ごされるそうです」
オルティスが恭しく頭を下げる。
「そうか……」
エドワルドは呆然として立ち尽くした。
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12時に次話を更新します。
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