200 動き出した時間2
「サントリナ公は当初の予定通りとして、うちの両親はエヴィルから来られる代表の方に兄貴を助けて頂いたお礼が言いたいと言い出し、姫様は殿下の婚礼が行われるならぜひとも祝福したいと言い出されて同行が決まった」
「まだ、お2人には内緒なんだぞ?」
「分かってる。その辺は姫様も心得ておられる」
「だと良いけど……」
ルークは懐疑的な視線をユリウスに向けるが、彼は素知らぬ顔をして受け流した。
「本宮は大丈夫なのか?」
「問題ない。今、一番重要な案件がフォルビアなのは間違いないし、留守中はグラナトとリネアリス公、ブロワディ団長がうまく切り盛りしてくれることになっている。朗報のおかげで文官武官問わず留守組のやる気も
「そうか……」
そんな会話を交わしながら着場に着くと、既にラウルとシュテファンが飛竜の装具を整えて待っていた。他にもわざわざブロワディが見送りに来てくれていた。
今回はユリウスの護衛はいない。彼等と実力が違いすぎてついてこれないだろうと判断し、現在はユリウスの代わりにアルメリアの側についているらしい。
「あ、アジュガにも寄りたいんだけどいいか?」
「聞いてる。だから早めに起こしたんだ」
「ありがとう」
ルークが最後に故郷へ立ち寄ったのは、ペラルゴ村で見つけたフレア達の手掛かりを報告に皇都に行った帰りだった。今回、家族に顔を見せて来いと言って後押ししてくれたので立ち寄ることにしたのだ。ルーク自身は言ってなかったのだが、部下のどちらかから聞いていたのだろう。至れり尽くせりで頭が下がる。
わざわざ見送りに来てくれた一同に挨拶を済ませ、手早く相棒の装具を確認してその背にまたがる。そしてもう一度目礼を送ると、早く飛びたくてワクワクしているエアリアルを飛び立たせた。
昼過ぎ、ルークは実家の裏手の草地にエアリアルを降ろした。他の3騎は町長の館に隣接している着場に降りている。エアリアル単騎だとなかなか使わせてもらえないのだが、彼等なら邪険に扱われることもないだろう。
「おや、ルーク」
畑に出ていた母親が彼に気付いて声をかけて来る。いつもと変わらない様子に安堵しながらエアリアルの背から降りた。
「ただいま。でも、すぐに出ないといけないんだ」
そう答えながら騎竜帽を外すと、倉庫を改装したエアリアル専用の竜舎に置いてある桶に水を汲む。それを相棒に飲ませている間に母親は取ったばかりらしい野菜を持ってきてくれた。
「シュテファン君とラウル君は?」
「今日はユリウスも一緒だから着場に行ってもらった」
「そうかい」
ここに立ち寄るのも随分久しぶりだからか、嬉しそうにしている彼女から野菜を受け取ると、それを1つずつエアリアルの口に放り込む。そうしている間にルークが立ち寄っているのを知った家族も集まってきた。
「お帰り」
「変わりないか?」
短く挨拶を交わしている間に母親が用意してくれた野菜は無くなっていた。
「良い事があったよ」
そう言って手短に内乱の終結を伝える。内乱の最中、彼の表情が乏しくなっていたのを知っている家族達は、その穏やかな表情に誰もが安堵していた。
「それから、みんな帰って来たんだ。奥方様も姫様も、ティムも、それからオリガも。それでね、奥方様は冬の終わりにご嫡子様をご出産されていたんだ」
「まあ……」
「それはめでたい」
「殿下にお祝い申し上げてくれ」
「お祝いは何がいいかしらねぇ」
ルークの報告に家族は口々に喜んでいる。エドワルドはここにも一度立ち寄ったことがあるので、彼等は身近に感じているのかもしれない。
「伝えておくよ」
そんな会話を交わしていると、着場から飛竜が飛び立っていた。ルークは騎竜帽を手に取り立ち上がる。
「もう行かなきゃ」
「そうか、気を付けてな」
「落ち着いたらまた帰っておいで。今度はオリガさんとティム君も一緒にね」
「分かった」
家族と抱擁を交わし、ルークはエアリアルにまたがる。そして家族に手を振ると、飛竜を飛び立たせた。そして他の3頭と合流すると、あっという間に飛竜達の姿は見えなくなっていた。
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