閑話 ジーンとリーガス愛の劇場5

第5話 独占欲



「小父ちゃん、だっこ」

「僕もー」

「あたしが先よ」

 幼い声に惹かれて覗いて見れば、リーガスが子供達に囲まれていた。私の優しくて素敵な旦那様は子供達の求めに応じ、その美しい筋肉を駆使して代わる代わる子供を抱き上げ、その惚れ惚れする筋肉に覆われた肩に乗せてあげている。とても微笑ましい光景だ。

「高い、たかーい」

 弾んだ声を上げているのは一番小さな女の子だ。その子が喜んでいる姿を見て、我慢できなくなった男の子が私の旦那様の足元で「早く、早く」とせがんでいる。

「仕方ないな、ほらっ」

 彼はその子も片手でヒョイと抱き上げると、器用に反対側の肩に乗せる。

「小父さん、すごい!」

 これにはニコルや他の子達も驚いたようだ。尊敬の眼差しで私の旦那様を見上げている。さすが、リーガス。その隆々とした筋肉、今日も美しいわ。

「そうか?」

 子供相手でも尊敬されれば嬉しいのか、2人の子供を肩に乗せたまま彼はその場でくるりと回る。きゃあきゃあと子供達は大喜びだ。

「これでお終いな」

 リーガスはそう言って子供を2人共地面に降ろした。まだまだ遊び足りない彼等は不満そうにしているが、それを年長のニコルがなだめている。さすがはお兄ちゃん。

「あの……」

 だが、そのニコルは年少の子達を宥めると、ためらいがちにリーガスへ話しかけた。

「どうした?」

「……小父さんの腕、触っていい?」

「いいが……」

 リーガスは不思議そうに、鋼の様に固く逞しい筋肉に覆われた腕をニコルの前に惜しげもなくさらし出した。

「すごい……」

 ニコルはその硬い筋肉の感触を確かめる様に子供らしい手で撫でている。……いいなぁ。

「あたしも触りたい!」

「僕も、僕も!」

 それを見ていた他の子供達も興味をひかれて我も我もとリーガスの腕を触る。……羨ましい。

「僕も小父さんみたいに力もちになれるかな?」

「うーんと鍛えなきゃダメだぞ」

 まだニコルはリーガスの美しい筋肉をナデナデしている。あー私も触りたい。

「先ずはしっかり食べて大きくならないとな。鍛えるのはそれからだ」

 小さなうちから過剰な筋肉が付くのは好ましくない。リーガスは子供達に優しく教えてやっている。それでも未練がある様で、子供達はまだ旦那様の筋肉をナデナデ……ナデナデ……。なんだか子供達が恨めしい。

 その筋肉は私のよ~



 小屋の陰から覗いていたジーンの怨念の籠った視線に気づいたリーガスは、大いに狼狽うろたえた。

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