閑話 ジーンとリーガス愛の劇場1

第1話 逆プロポーズ



 武術試合の出場を承諾なしに決められてしまった。澄ました顔で事後報告する上司に腹が立ち、自室の寝台でふて寝を決め込んでいた。

「リーガス」

「……」

 そっと扉が開いて恋人のジーンが姿を現す。彼女が相手ではさすがに無視も難しい。仕方なく無言で体を起こすと、彼女は隣に腰を下ろした。

「触っていい?」

 無言で頷くと、ジーンは腕に手をわせる。二の腕に触れた時に力を込めると、彼女はうっとりとしてなでまわしている。

「……ねぇ、リーガス」

「何だ?」

 ひとしきり体……正確には筋肉をなでまわして満足した彼女は、胸にそっと寄り添ってくる。

「結婚しましょ」

「は?」

 突拍子もない彼女の言動になれているが、さすがの私も言葉に詰まる。

「だってぇ……武術試合に出るのはもう決定なのでしょう?」

「……それはそうだが」

 事後承諾させられた怒りがまた沸々ふつふつと沸き起こってくる。

「そうしたら、貴方のかっこいい姿をみんなが目にしてしまうわ」

「……」

「きっと、いろんな人に言い寄られると思うの」

 この容姿ではその心配はないと思うのだが、そんな事を心配する恋人がとてもかわいい。

「だったら出場を取りやめればいい」

「それは嫌」

 即答だった。

「……何故?」

「一度は貴方が活躍する姿を見たいの」

「……」

 我儘だなぁ……。そこがまた可愛いと思ってしまうのは惚れた弱みだろうか。

「だから、結婚しましょ」

 どうしてそんな結論になるのか甚だ疑問だが、上目づかいでお願いされれば断れない。

「分かった」

「嬉しい!」

 喜んだジーンが抱きついて来て、その柔らかな唇を重ねてくる。

 私の理性がもったのはここまでだった。

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