第11話

 田中の件から数日後。

 異世界の地球堂にてーー。

「暗殺の件解決したんすか!?」

「ああ、お前らが休んでた間にな」

 覚夢は田中の件で警察に話、週刊誌のインタビューなどで四日ほどバイトを休み、用事を全て済まし、地球堂に来ると、王様暗殺の件はすでに終わっていた。

「犯人は守護兵長のジューブだった。王が死ねば王権は唯一の家族である王子になるがまだ五歳、それまで王代理として好き勝手出来るって、酒場で酔っ払った騎士に聞いた」

「はぁ……」

「それで起きた王に相談して『犯人を見た。明日公の場で言う』と嘘を言わせる。そしたらその日の夜、ジューブの奴短剣持ってベッドに忍び込んだから捕まえて解決した」

「王様と親しいんすか?」

「じいちゃん勇者してたからな。親戚のおっさんみたいなもんだ」

「へぇ……」

 覚夢は暗殺の件があっさり解決したことに拍子抜けした。

「それで……何でまだダグがいるんすか?」

 真奈の後ろには肩を揉んでいるダグがいた。

「なんか恩義だとかで、安くでいいからここで働きたいんだと。ダグ、次は二階の掃除だ」

「はい社長!」

 ダグは真奈の言う通りに二階に行った。

「社長改めて日本での件、ありがとうございます」

 覚夢は真奈にお礼を言った。

「お前は美紗のついでだ。美紗を襲おうとした奴を社会的に抹殺したかっただけだ」

「それに俺きっかけなのにダグの件も……」

「美紗に関わらせるわけにはいかないから早期解決しただけだ」

「社長……」

「何だ」

「社長って妹大好きなんすね」

「ぶっ!?」

 真奈がなに食わぬ顔で紅茶を飲もうとしたが、覚夢の言葉で吹いた。

「んな、んなわけないだろ! 仕事の確認してくる!」

 真奈が珍しく動揺しながら奥に行き、覚夢はその姿に少し微笑んだ。

「あ、サトム君」

 後ろから制服姿の美紗が金の鍵を使って、やって来た。

「今日から復帰なんだ」

「うっす」

 美紗と覚夢は少しばかりお互いを見つめあった。

「……それでどうなの親御さんとか?」

「あれから両親と和解したっす」

「そうなんだ!」

「それで……バイトを辞めて、うちの近所の高校に転校しないかって言われたんす」

「え……」

「元々お互いが顔を合わせたくないから始めた一人暮らしなんで……」

「そうなんだ……」

 美紗は覚夢は辞めてしまう……そう思い、笑顔のまま表情が固まったまま、どことなく暗かった。

「でも断りました」

「……え?」

「俺、ここに来たおかげで救われたんで、だからここにいます」

「そう……よかった」

 美紗が安堵の笑みを浮かべた。

「せっかく仲良くなったんだし、このままお別れって嫌だしね」

「そっすね」

「おいそろそろ行け。今日もジョア達とゴブリン退治だ」

「うっす社長」

 覚夢は青い作業着を着替え、鉄のグローブを脇に抱えて外に出た。


 この異世界のバイトで一人の少年の人生を変えた。

 劇的な恋もなければ、異世界で勇者になったわけでもないが、少年は「普通」を手に入れた。

 与 覚夢は晴れ晴れとした表情で今日もバイトをするのであった。










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異世界バイト 三合 雷人 @raitox3

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