第10話

「はぁぁぁ!」

 覚夢は叫びながら不良達と乱闘している。

 不良の攻撃を華麗に避け、すぐさま反撃をし、一人ずつ確実に倒していく。

 さっきまで殴られてふらついてたのが嘘のようだ。

「あいつ強え! まるで戦い慣れてるみたいだ!」

(そりゃあれだけゴブリン倒してたら……)

 覚夢は四週間、約二十日のバイト中、店番、子守りなどは合わせて四日。残り十六日は全部ゴブリン退治だった。

 ゴブリンは小柄ですばしっこく、始めは攻撃が当たらなかったが、今は確実に倒せるようになり、覚夢の戦闘力は相当な物になっている。

「くそがぁ!」

「うらぁ!」

「ぐふっ!」

 そして最後に不良に蹴りを入れるとーー。

「はぁ……はぁ……」

 気がつけば、残った不良達は覚夢が倒した不良達を担いで逃げていった。

 残ったのは殴られてからずっとその場にいる田中だけだ。

「な、殴ったな……この俺を殴ったな! パパに言いつけるからな! お前の人生終わりだバーカ!」

 田中は捨て台詞を吐き、逃げていった。

 今この場には覚夢と美紗しかいない。

「…………」

 覚夢はその場に立ち尽くし、辺りは沈黙に包まれた。

 このまま覚夢は明日からまた嫌な噂が立ち、今度こそ居場所がなくなる……そう思った。

「サトム君……ごめん、私誤解してて」

「……大丈夫っすよ」

 だが今の覚夢には味方がいる。

 一人でも味方がいるだけで覚夢の心のあり方が全く違った。

「も、もし居場所がなくなったら、いっそ異世界に住みなよ。地球堂の二階が空いてるし」

「ありがとうございます」

「勝手に決めんな」

「「!?」」

 廃工場の奥からスマホを持った真奈が現れた。

「お姉ちゃんいつから!?」

「お前の帰りが遅いからスマホのGPS機能で探したらこの廃工場にいたから、金の鍵で異世界経由であいつらが来る前の時間まで戻って、待ち伏せしてたんだよ」

「もう、いたなら助けてよ!」

「アタシいなくてもなんとかなっただろ。それに副業の材料集めにちょうどよかったし」

「副業ってなんすか?」

「ん? ○ーチューバー」

 真奈はそう言ってスマホを見せびらかした。



 ***



 次の日、真奈が録画した田中の行動が人気動画サイトにアップされていた。

 動画は田中を中心に撮影されていて、タイトルが「某警察署長の息子の真実」と書かれていた。

 真奈はそれなりに人気のある動画投稿者らしき、再生回数五百万と大勢の人に見られた。

 それがマスコミ関係なども見て、夕方にはニュースにもなり、マスコミに囲まれた田中の父親が写っていた。

 また次の日、田中は逮捕されたことがニュースでわかった。

 警察は田中を調べ、田中の部屋には麻薬が見つかり、これまでの悪行も芋づる式に露となった。

 ニュースで暴れながら逮捕された田中の姿が写り、覚夢は安心した。

 その日の放課後、学校で職員室に呼び出されると、田中の父親が来ていて、息子のことで謝りに来た。

 覚夢はそれを許し、内心満足した。

 そのまた次の日の休日。

 覚夢の父親から「今日会わないか?」とメールが来た。

 覚夢は了承し、学校の裏にある人気の少ない喫茶店で先に待っていると、覚夢の両親が現れた。

 お互い気まずい雰囲気の中、覚夢の父は席に座ってすぐに謝った。

 両親は田中の父親がわざわざ家まで謝罪に来て、今回の件を聞いたらしい。

 覚夢は許した。

 これまで悪かったのは田中であり、皆田中に騙された被害者だと言って家族と和解。

 そして覚夢に笑顔が戻り、久しぶりに会話を楽しんだ。


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