第8話

 ダグの殺人疑惑から数時間後、覚夢は戻ってきた真奈を含め、地球堂にいたメンバーにさっきまでのことを説明し、土下座した。

「ーーということでこの店に泥を塗る行為をしていまい、すみませんでした」

「アタエは俺を守ろうとしたんだ! だからーー」

「うるせぇよ」

 酒で顔を赤らめた真奈は睨み付け、二人は黙った。

「……飲み屋でお前らを見てた奴等が『よく言ってくれた』って好評だったぞ」

「え?」

「貴族の野郎は金と権力でモノを言わせるのが多いからな。民も税金が高くなったって愚痴ってたし」

「そうなんすか?」

「おまけに王権を狙う貴族だってごまんといるし、ダグが王様の暗殺をするメリットもない」

「じゃあ」

「お前は間違ってないってことだ」

 真奈を含め、ジョアとマージも首を縦に振り肯定した。

「ありがとうございます。それでどうしたら……」

「とりあえず、衛兵行き付けの酒場で情報収集でもすっかな。それまでダグはここにいろ」

「ありがとう女神の姉よ!」

「サトムはもう帰れ。ダグは面倒見っから」

「うっす」



 ***



 日本の夜ーー。

 美紗は近所の本屋で立ち読みをしながら昼のことを考えていた。

 覚夢が偽善者というのを聞き、内心戸惑っている。

(サトム君は異世界でもバイトを引き受けてたし、仕事も真面目にしてるし、大丈夫のはず)

 心の中で覚夢の良いところを考えている。

 だがーー。

(……でももしかして今までのは嘘? 異世界のことをバラす代わりに何かする気かな? もしかして……体目当て!?)

 無意識に悪い方へと考えてしまう。

 美紗は覚夢への不信感が増すばかりで、本の内容に頭が入らない美紗は本屋を出た。

「あ、先輩」

「ひぁ!?」

 偶然本屋の前で覚夢と出会った。

「バイト終わったんだ」

「うっす」

「…………」

「…………」

 お互い静かになった。

 覚夢は王様暗殺の件、美紗は覚夢の件で言いづらく黙った。

「あの!」

「なんすか?」

「サトム君って偽善者だったの!?」

「!!?」

 美紗の思いもよらない言葉に覚夢は心底驚いた。

 美紗も自分が言ったことにビックリした。

「な、何で……」

 覚夢は過去のトラウマにスイッチが入ったのか、顔色が悪くなり、脂汗を流した人。

(やっぱりそうだったんだ!)

 美紗は図星を突かれたと思っている。

「さ、最低! 偽善者! 死ね!」

 気が動転した美紗は覚夢に罵声を浴びせて逃げ出した。

 覚夢は膝から崩れて動けなくなった。

 美紗は走った。

 信用していた人に裏切られたこと。

 でもひどいことを言ってしまったこと。

 美紗は何をすればいいのかわからず、ただ走るしかなかった。

「はぁ……はぁ……」

 気がつけば美紗は人気のない住宅街にいた。

 美紗の家は二駅離れた所のため、駅から離れたこの辺に土地勘がない。

「迷っちゃった。コンビニとかあれば金の鍵でーー」

 ガッ!

「ん!?」

 突然後ろから布で口を押さえられた。

 相手は複数いるらしく、ロープで腕や足を結ばれ、そのまま担がれた。

「んー! んー!」

 美紗はそのままどこかに運ばれてしまった。



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