第7話

 日本、美紗の教室ーー。

「美紗ってホントにその一年と付き合ってないの?」

「ないよ」

 昼休み、美紗は友達と昼食をとっている。

 話題は覚夢のことだ。

 最近になって美紗と覚夢が一緒に歩いているのを何人か目撃し、付き合っているのではないかと、学校中噂になっている。

 そのせいか美紗のクラスの男子が二人の話に聞き耳を立てている。

「私とサトム君とはただのバイト仲間だし、今は誰とも付き合う気はない」

「ふーん」

 美紗の言葉に男子はガッカリした。

「そのサトム君ってどんな子?」

「んー……見た目は普通で真面目だけど、ちょっと無愛想かな」

「ねぇ」

 美紗達が話していると、別の友達が話しかけて来た。

「その男子って与 覚夢って奴?」

「え、知り合い?」

「私同じ学校だったんだけど、あんまいい噂ないんだよね」

「噂?」

「うん、表向きは人を助けてたみたいだけど、裏では不良達を影で操ってた偽善者だって噂よ」

「え……」

「だからあんま仲良くしない方がいいよ」

 そう言って友達は去っていった。

 美紗は信じられずにいた。

 彼は無愛想だが、人に危害を加えるような人ではない。

 そう思ってはいるが、美紗の心の奥底に疑念が生まれた。



 ***



 学校終了後の異世界ーー。

「つうわけで美紗がいないががんばれ」

「うっす」

 ダグの勝負から数日、覚夢は子守り、店番などの仕事をこなし、慣れてきた所で、今日初めて美紗と別の日で働くことになった。

「安心しろマナ、我々がサポートするから」

「大丈夫」

 ジョアとマージが胸を叩き、覚夢のサポートをするようだ。

「とは言っても、今日は依頼がないから店番頼む」

「社長はどこに?」

「酒場」

「まだ夕方っすよ」

 真奈は覚夢の注意を無視し、店を出てしまった。

「まぁマナはいつもそうだ」

「いつも通り」

 ジョアとマージはずいぶん慣れた様子だ。

「そうっすか。じゃあ……」

 とりあえず客が来るまでどうしようか悩んでいたその時ーー。

「俺は無実だ!」

「!?」

 いきなり店の外から大声が聞こえた。

 外に出て、店の前を見渡すと、遠くに人だかりが出来ていた。

 覚夢はその人だかりに向かい、人混みをかき分けると、そこにはーー。

「俺は何もやってねぇよ!」

「ダグ?」

 そこにはダグが騎士風の二人組に捕まっていた。

 覚夢はその辺の人に聞いてみた。

「あの、一体何が?」

「なんでもあの冒険者が王様を殺しかけたみたいなんだ」

「え!?」

 ダグが殺し……覚夢には意味がわからなかった。

「あ、あの!」

「アタエ!」

 覚夢はダグを捕まえた騎士風の男に声をかけた。

「この人がやったっていう証拠はあるんですか?」

「証拠ならございますよ」

 そこに現れたのは金色の刺繍をした派手な服を着た背が低い金髪の男性だった。

「えっと……」

「私はジューブ、この国の王の従兄弟でこの国の守護兵長をしている」

「守護兵長?」

 守護兵長は国を守護・警備する衛兵を指揮する役職のこと。

「証拠はこれです」

 そう言ってジューブが手に出したのは血のついた短剣だ。

 覚夢はその短剣を見覚えがあった。

「それってダグの……」

「そう! この男の短剣が国王の寝室に落ちていたのです! これぞ動かぬ証拠です!」

「これは一昨日からなくなったんだよ! 俺はやってない!」

「嘘をつくな! 殺人未遂犯が!」

「こりゃ死刑だな」

「さっさと死ねばいいだろ」

 涙目のダグに向かって、周囲は罵声と蔑みの見るような目をダグに浴びせた。

 ……似ている。

 やってもいないのに、犯人とみなされ、蔑まされ、誰も味方がいない。

 覚夢はダグと昔の自分を重ねた。

 今ダグには味方がいない。

 この光景に覚夢は我慢出来なかった。

「それって完全な証拠ではないですよね?」

「何?」

「ダグはなくしたと言っているんです。彼がそう言っている以上、その短剣を盗んで別の人がやったという可能性があります」

「それは……」

「彼が盗まれたという嘘を証明できないなら、彼はまだ無罪のはずです」

「ふざけるなてめぇ! ジューブ様は貴族様だぞ!」

「貴族様が言ってることは全て正しいんだよ!」

「そんなのが正しいならこの国はもう終わってんだよ!!」

 騎士達の反論に覚夢は負けず、野獣のような目でジューブ達を睨んだ。

 覚夢の目と叫びに、ジューブ達は怯み、辺りは沈黙した。

 覚夢はゆっくりと頭を下げた。

「……お願いします、彼は俺が責任を持って預かります。もう少し調べてもらっていいですか?」

「わ……わかりました。行くぞ!」

「「ちっ!」」

 騎士達はダグを放し、ジューブ達はどこかに行ってしまった。

「すまねぇ、すまねぇ……」

 ダグが覚夢の足元にうずくまり、泣きながら謝った。

「大丈夫だから……」

 今の覚夢はダグの背中を撫でるしか出来なかった。


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