第6話

 覚夢達はゴブリン討伐の時に来た草原に移動した。

「えーこれより決闘を始める」

 覚夢と男性が遠くから向き合うように立ち、中心にやる気のない真奈が審判をすることになり、隅にいる美紗はただ見守るしかなかった。

 ちなみに店はジョアとマージが来たから任せている。

「ルールは降参するか、戦闘不能になるかだ。サトムと……お前何て名だ?」

「ダグだ」

((そんな名前だったんだ))

 覚夢達はこれから決闘する人、そして告白してきた人の名を初めて知った。

「お互い準備はいいか?」

 お互い死なないよう、ダグは木で出来た短剣、覚夢は日本のボクシンググローブをはめている。

「はぁ……」

 何でこうなったんだろう……そう思い、覚夢はため息をついた。

「そんじゃ始めー」

「うぉぉぉぉらぁぁぁぁ!」

 勝負が始まったとたん、ダグが猛ダッシュで覚夢に近づいた。

「うぉっ!?」

 ダグは短剣を横に振り、覚夢は腰を後ろに下げて避け、その後も短剣を振るも、覚夢は紙一重に避け、ダグの短剣は空を切った。

「避けんな!」

「いや、避けなきゃ当たるから」

 ダグの攻撃は続き、覚夢は必死に避ける。

 それから約十分後ーー。

「「はぁ、はぁ……」」

 ダグが攻め、覚夢が避け、お互い無傷なままで疲れだけが残った。

「お前やる気あるのか!」

「いや……」

 覚夢は正直言ってやる気はなかった。

 美紗に好意はないし、覚夢は過去のこともあり、人のために戦うことに後ろ向きだった。

 だから両方疲れて引き分けに持ち込むことにした。

「くそう……お前は女神を手に入れる! ここで勝たないと最強になれない!」

 ダグは疲労に耐え、めげずに立ち向かう。

 かなりの自信家で自分勝手ではあるが、ダグは何事にも一生懸命だ。

 いっそ美紗を渡そうとさえ思った。

「おいサトム、もし妹取られたら殺すぞ」

「うっ……」

 だが、真奈の脅しで負けるわけにはいかなくなった。

「行くぞぉぉぉぉ!」

 ダグは攻撃を再開し、覚夢は木の短剣を初めてボクシンググローブで防いだ。

「甘い!」

「ぐっ!?」

 だがダグはもう片方の手で覚夢の腹にパンチした。

「うおっら!」

 ダグは怯んだ覚夢の腕を持ち、一本背負いで投げ飛ばした。

「ぐあっ!」

「どうしたアタエ! そんなんで女神を救えるか!」

「う……」

 覚夢は立ち上がるが、ダメージが大きい。

「お前は勝って悔しくないのか! 女神を取られるだけでなく、敗北ということに!」

「…………」

「お前は本気を出さないと俺は勝っても嬉しくない! やるなら自分が勝つためにがんばれよ!」

 ダグの言葉に覚夢は考えを改めた。

 覚夢は美紗のために戦うから過去のトラウマの影響で戦いづらくなった。

 負けるのは悔しい、だから純粋に負けたくない、勝ちたいとーー。

 そう思うと不思議とやる気が出て来た。

 覚夢はダグに睨み付ける。

「ようやく本気を出すみたいだな。行くぞ!」

 ダグは木の短剣に向かって覚夢の胸元に向かって刺した。

「でやっ!」

「なっ!」

 覚夢はその寸前でダグの手を蹴り、木の短剣は空高く打ち上げられた。

「まだだぁ!」

 ダグはもう片方の手で覚夢の顔を思いっきり殴った。

「ぐっ……!」

 覚夢は一瞬よろたが、目はまだ死んでいなかった。

「ぐ、おぉぉぉぉ!!」

「ぶっ!?」

 覚夢はダグの拳をめり込ませたまま、ダグの鼻に思いっきりパンチを繰り出した。

 ダグは吹き飛びズザザザザと地面を引きずった。

「「はぁ……はぁ……」」

 お互い息を切らし、鼻血をたらし、ダグは倒れたまま動かなくなった。

「はい、サトムの勝ち」

 真奈が覚夢側に手を挙げ、勝負がついた。

 勝負がつき、覚夢はダグに近づき、手を差しのべた。

「いい勝負だった」

「ふん!」

 ダグは差しのべた手をはたき、起き上がった。

「今度は……負けないからな!」

 そう言ってダグは走り去った。

「はぁ……」

「サトム君!」

 美紗の覚夢の元に来た。

「鼻血大丈夫?」

「はい……」

「それにしてもひどい目にあったね」

「そうっすね、何か今日、先輩系のトラブルが多いっすね」

「え? たしかに今回は私のせいだけど、他にあるの?」

「ええ、まぁ……」

 日本ではクラスの男子、異世界ではダグ。

 覚夢は改めて美紗がモテるということが改めて知りながら、鼻血をふくのだった。

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