うわっ、しなしなのせんべい! 織姫様と彦星様、天の川汚しすぎぃ!

天の川のお仕事

「天の川のゴミ拾いなんてさ。つまんない職業についちゃったな」


 そう言って、ハート型のサングラスをかけている星屑清掃員は苦笑した。


「仕方がないだろう。もうすぐ七月七日の七夕だ。こうして天の川をキレイにして、織姫様と彦星様を美しい川にして合わせてやらなくちゃあいけない」


 真面目そうな、おじさんの星屑清掃員が手を動かしながら言った。


「そうは言ってもなあ」


 サングラス清掃員は辺りを見渡す。

 落ちているのは機織りの糸くず、古い丸ボタン、ボロボロの布きれ、枯れた草。


「どーゆうことっスか。コレ」

「そうだな」

「うわ、しなしなのせんべい」

「ちゃっちゃと掃除をして、美しい川にして差し上げなければな」

「なんで俺たちがー? 織姫様と彦星様が、自分でやればいいじゃないっスか」


 サングラス清掃員はくちびるを尖らせる。

 すると、おじさん清掃員は手を止めると、サングラス清掃員をじっと見る。


「お前、星屑何年だ?」

「えー? えっとお」

「俺はな、もう何億年と言う数えきれない月日を生きてきた。未だ燃え尽きずに、ここまで来とる。いつ燃えてしまうかも分からない宇宙で、屑の俺たちが生き残っていける確率は低い。あの太陽の光のおかげで、広い宇宙のどこかの星からは、ワシらみたいなもんでも輝けて見えているのかも知れん。だったら、もっとかっこ良く輝きたいじゃあないか」


 おじさん清掃員はニッコリと笑み、また手を動かし始めた。


「この川、どこかの星の言葉では、ミルキーウェイと言われとるらしい」

「ミルキーウェイ?」


 首を傾げる、サングラス清掃員。


「【牛の乳】という意味だ」

「彦星様が飼ってる動物?」

「ミルクを零したように見えるからだと。可愛い例えじゃあないか? そんなミルクを零したような川に、ゴミが浮いてみろ。悲しいだろう?」

「でも、何で俺らが……」

「俺たちがやるから、俺たちはそれを誇れる。あの川は、自分らがキレイにしたんだと、胸を張れるじゃあないか」

「まあ、そうっスけど」

「な?」


 おじさん清掃員は、サングラス清掃員の背中をバシバシ叩いて笑った。

 そして、テキパキと天の川のゴミを拾っていく。


「それにしても、ゴミを川に捨てるなんてさ。織姫様も彦星様も、ズボラって言うか、どんな教育されて育ったんスかねえー」

「……」


 おじさん清掃員は、それを黙って聞いている。


「真面目に働いたら、やっと七夕に会えるって話なのに。今、何してるんスかねー」

「そうだな……」

「なんでも、織姫様のお祖父様である天帝様の使いのカササギが七夕の日に天の川に橋を架けることによって、彦星様はやっと織姫様に会えるんだそーですよ」

「おう……」


 そのとき、宇宙の暗闇の彼方から、一匹の鳥が飛んできて、天の川の川岸にとまった。


「カササギだッ」


 ちょうど話していた鳥が現れ、サングラス清掃員は目を丸くする。

 すると、カササギは甲高い声で、こう言った。


「彦星様! バイトの星屑君は、如何か? と、天帝様が申しております」

「……えっ?」


 カササギの言葉に、サングラス清掃員は口をあんぐり開けている。


「おっさんが、彦星さまっ?」

「す、すまん」

「なんで……っ?」


 サングラス清掃員に、彦星と呼ばれたおじさん清掃員は、顔を真っ赤にして俯いた。


「織姫は、確かに真面目だった。だが、年とともにだんだんズボラになってきてな。川にゴミが落ちても、拾わなくなってしまった。だから、毎年七夕前にこうして俺が掃除を……。今年は特に多いから、やむなくバイトを雇ったのだ」


 不甲斐ないと言わんばかりに、落ち込むでいる彦星の肩に、サングラス清掃員は優しく手を置いた。



end

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