この喫茶店で、もういちど (完結)

私が経営する喫茶店は、今にもつぶれそうだった。そこへ、一人の少年がやってきて……。

1話

 私が長年営んでいる喫茶店は、祖父の遠坂和重が亡くなった何年か後に、孫である私、達朗へと受け継がれたものだ。


 ここ、愛知県津島市には、大きな神社がある。津島神社と言う。

 大きな赤い鳥居がここからでも見える。昔、織田信長や豊臣秀吉に愛された、多くの参拝客が訪れる神社だ。


 さて、それなのに、津島神社近くの我が喫茶店には、何故こんなにもお客さまが来ないのか?


 祖父から受け継いだこの喫茶店には多くの問題点があった。

 人目を惹かない地味な外観に、センスのない看板。

 まるでくつろがせる気のない質素な店内…。


 祖父の時代は、常連しか相手にしていなかったためそれでもよかったのかも知れないが、私の代になってからは、常連のお客さまの足も遠のいてしまった。


 そこで新規のお客さまに来てもらうためにも、私の貯金を切り崩して直し、ようやく内装は昭和時代のレトロな喫茶店と言ったイメージに仕上げた。

 もちろんトイレだけは、最新機能だ。

 トイレ設備の充実は、集客につながるらしい。


 こうして、着実に良い店へと近づいているハズ……と言うのに、お客さんに気づかれていないのか、まったく誰も来てくれない。

 祖父の時代から名物だったコーヒーも続けているのに、何故こんなにも店内はガランとしているのか。


「今日も、誰も来なかった」


 夜になり、店のカウンターでぐったりとする。

 もう店をたたむしかないのか。ここまで改装したのに。


 それはないだろう、神さま。


 神さまか…。

 近くの津島神社は確か、商売繁盛の神様だったな。

 行ってみるか…。


―――チリンチリン。


「え?」


 長らく鳴っていなかった店のベルが鳴り、私は思わず声を上げてしまった。

 喫茶店だと言うのにお客さまが来て驚くとは、どうしたことだ。


 ドアの方へと目をやると、そこには十歳くらいの少年が一人で立っていた。

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