第72話 醒めない夢

72.

~果歩が消えた日から 23



事故で入院して記憶喪失で押し通して警察や病院関係者

そして溝口啓太にも嘘を突き通した。



 啓太さんはそんな私たち親子の身元引受人になって

くれて住む場所まで提供してくれた。



 啓太さんの家に住めるようになってすぐに私は心配して

いるであろ母親に連絡を入れた。


 母はそんなことせず、こちらに戻って今の暮らしが嫌なら

正式に離婚すればいいのではないか? と極全うな意見を

くれた。


 それはそうなんだけれど、夫の性格や私の父親の性格を

考えると、とてもまともに話が進むようには思えなかったし

これ以上苦しい思いをしたくなかったのだ。



 このまま居なくなったとあきらめて夫が別の女性と

結婚でもしてくれたら、と思う程に私の気持ちは醒めていた。


 

 母は特にこれからの碧のことを心配した。


 

  「大丈夫。ちゃんと住民票とか作れるから。碧連れて

ちょくちょくお母さんには会いに行くし。

 お願い、このことは私とお母さんとだけの秘密にしておいて。

 お母さんを信じて、お母さんだからこうやってちゃんと

連絡してるんだからね。


 

 住民票があれば仕事も出来るし碧だって問題なく学校へも

行けるし。何も心配しなくていいのよ。

 

 それとね、詳しいことはまたおいおい話すけどね

縁あって私たち親子の身元引き受けをしてくれる人も

いるの」



 母には夫の浮気を話していたけれど仲間友紀のことは

知らせていなかった。なかなか言い出せないでいるうちに

あんなことになってしまったから。


 母への説得のもう一押しの材料としてこの時母にかなり

踏み込んだところまで暴露した。これを聞いて母も心から

納得してくれた。



 そして母は、私からこの話を聞いていたので夫の様子見に

時々店まで行ったり、家のほうへも目配りしてくれていた

ようだった。



 それで私は私たちが居なくなったのをいいことに

仲間友紀と夫が夫婦のように暮らしていたことを

知っている。



 そして2人の事実婚が1年しかもたなかったことも。



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