第67話 醒めない夢

67.

~果歩が消えた日から 18




 「達彦ちゃんに会いたい・・ぼちぼち結婚の話も

進めたいなぁ~」


 友紀から2ヶ月振りにきたメールがこの内容だった。


 確かに俺もぼちぼちだなぁ~っていうか1年前にこの

境地になっていたんだよなぁ。

 今となっては幸か不幸か、友紀の提案で結婚が1年延びた

わけなんだが、延びたこの1年あまり友紀が他の男との子

を身ごもり、暮らしていた事実を知った。



 どう考えても俺が保険代わりにされていた事実は

消えない。惨めだ・・惨め過ぎる。


 こうなると友紀のおやっさんにも腹が立ってくる。

 あんたが結婚までは清い身体でと拘ってたあんたの娘

とんでもないビッチじゃないかよって、言ってやりたい。



 小学生の頃からの長い付き合いの相手にこんな仕打ちを

されて結婚できるほど俺はできた人間じゃない。


 現実を知った当初は衝撃的過ぎて驚きと戸惑いが勝って

友紀に対してどういう対応をとればいいんだ、なんて

腑抜けでヘタレなことを考えていたような気がする。



 ・・が、どういう対応もこういう対応も無いじゃないか。


 答えはひとつだ、と自分のヘタレ具合を戒め固く決心

した。


 例え自分の心がまだ友紀を好きであったとしても

離れるのがつらいと感じたとしても、ここは人としての

筋道を通さなければ、いつか後悔することになるんじゃ

ないかと思う。


 友紀は俺を裏切ってたんだよ?


 なのに黙って俺と結婚しようなんていけしゃあしゃあと

言える人間なんだ。俺を男と破局した時の為の保険にした

女だよ。



 よもや自分がこんな最悪な経験をするとは夢にも

考えたことなどなかった。悔しい、惨めだ。



 こういう時はあんまり先を見据えない方がいいのかも

しれない。

 ひとまずは、1つずつだ。

 1つずつ片付けていけばいい。



 俺は仲間友紀に会いに行った。 


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