第38話 醒めない夢
38.
~深山康文と果歩の結婚生活 (35)
あれこれ考えている間にいつもより早い帰宅の夫が
帰ってきてしまった。
・・・
男子学生の菅田(スダ)が帰りがけにボソッと囁いてきた。
それは報告という名の言い方とは違っていた。
言うか言うまいか迷ったけど一応言っときますわ、という
ような、どうでもいいような言い方に聞こえた。
なんだよ、あいつ。
俺が奥の部屋から出て来て、仲間を帰してから
今のいままで2時間もあって、客足も無くなって話す機会は
あったのに、帰り際にぽそりと大事なことを話しやがる。
何か知らないが、大人しいのが取り柄だと思っていたのに
ボソッと呟いただけ、のような報告に棘が感じられたのだ。
あんな大人しいのが案外怒らすとトンでもなく怒り狂って
発狂して暴力的になるのかもなぁ・・なんてそんな思考に
はしっていたが、おぉ何てこったい、俺のマヌケ!!!
果歩はいつ来たんだ?
誰も俺に声かけてないだろ?
奥の部屋にいたのに誰も声をかけてなくて・・
だけど菅田(スダ)は果歩にきっと俺の居場所を聞かれて
正直に奥の部屋にいると言ったはずだ。
見られたのか? 俺たちの痴態を。
ヤバイ、やばいぞぉ~これは、
ヤバイヤバイ。
見られたとしてどの辺りを見られたのか。
俺は脳内をフル稼働して仲間友紀との痴態の初めから
記憶を呼び戻し、知らず知らず言い訳のできるシーンを
捜していた。
ガクッ、俺達ふたりの行為に言い訳のできるような
シーンは見当たらない・・か。
しかし、なんだよ、怖いもの無しの俺様なんだから
落ち着けぇ~。
果歩が怒っても泣いてもほうっておけばいいだけだ。
いい加減浮気ぐらいって免疫つけてもいい頃だろ?
俺とは何だかんだ言いながら別れられないんだから。
・・・
「ただいま」
「お帰りなさい。
今日お店に行ったわ」
「・・らしいね」
やっぱり男子学生、夫に報告してたんだ。
じゃあ、夫は浮気の現場を見られたって知ってるよね?
「私に何か言うことはないの? 」
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