第22話 醒めない夢加筆

22.

~深山康文と果歩の結婚生活  ⑲



 相続のお話のあった日、お義父さんがおっしゃった。



 「あいつはもう駄目かもしれん! 」



 駄目かもしれん、という言葉は、その後度あるごとに

思い出してしまう。


 悲しいほど、この言葉が胸に染みる。

 たぶん、私も心のどこかでそう思っているからかも

しれない。



 お金の切れ目が縁の切れ目・・じゃないけれど

 お金が底をついてやっと夫は女と切れたようだった。



 夫の新しい就職先が決まった。

 お給料は以前の半分にも満たないけれど、収入があるって

だけで安心感が半端無い。


 決まった収入があるのはすごく有難くもある。

 私も早期復職を考えている。



 2人の収入を合わせれば何とかなるはず。

 早く元の穏やかな暮らしに戻りたい。


 なのに・・

勤め始めて半月過ぎた頃から夫の不平不満が徐々に増えていった。


 帰宅して食事中の会話といえば、同僚や会社への

不満ばかり。



 給料は前の会社より半分以下なのに仕事の量は逆に増え

同僚や上司の資質はレベルが低く低脳ばかりと、悪口三昧。



 そんな夫の罵詈雑言を聞きながら私は心の中で呟いた。


 

 仕事もそっちのけで浮気に夢中になり、家族や会社に

迷惑をかけ5年も勤めずクビの人間のどの口が・・と

思ってしまうのは意地が悪い?



 そんな夫の発言に危機感を抱いていたのだが

とうとう3ヶ月目に帰宅するなり私にこう言った。




 「今日上司と揉めて会社辞めてきたから」



 はぁ~ぁ???



 

 「えっ?

 ほんとに?

 そんな引継ぎも無しに辞められるの?」




 「喧嘩したんだからいいんだよ。

 誰が引継ぎなんかするかよ!

 困ればいいんだよ」



 「どうするの? これから」



 「あぁ、それは大丈夫。

前々から考えてたことがあるから。

心配しなくていいよ」



 心配しなくていい?

 当たり前に心配するよ、心配しますって。


 やっと雇ってくれた会社を喧嘩して辞めるってどうなの?

 次の会社を決める時に不利なんじゃないの?

 次のことを考えてるって言ったけどほんとに?


 気が付くと不安とイライラとで大きなため息を5回も

吐いてた。

 

 次から次へとストレスフルな原因を作ってくれる夫に

呆れるしかなかった。



 そんな中、1週間後夫から次の仕事の話を聞かされて

私は益々ストレスフルになったのだった。



 夫からの話しは、脱サラした遠い親戚筋で知人のような

位置づけの人物のサクセスストーリーから始まった。



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