第12話 醒めない夢

12.


~深山康文と果歩の結婚生活 ⑨


     凸(突撃)



 どこまで信用していいのか判らないけど、せめて夫の暮らす

部屋から女の影が消えていたら、私のことを少しでも気遣う

気持ちがあれば最低限連れ込むことは止めてくれるはず・・と

そういう想いを膨らまし始めると私はいてもたっても

いられなくなった。




 そして母に娘を預け再度夫の暮らす彼の地へと向かった。

 今回は合鍵がある。


 ドアの前で私は深呼吸した。


 夫がまだ相手を家に入れて現地妻扱いしているとしたら

鉢合わせの可能性もある訳で・・私は少し緊張した。



 ドアノブに手を掛けてみる。

 よしっ、鍵は閉まってる。


 留守の可能性が高くなった。

 鍵を差し込んでみる。



 開いた。

 

 玄関で中の様子を探りながら部屋に入る。


 人の気配が無いことを確認してほっとした。

 私は空港周辺で買った缶コーヒーを開けた。


 旅の疲れを癒した後、部屋の探索に乗り出した。

 まず風呂場。



 浮気を突きつけられてるんだから普通ならあるはず

ないと思うのだけど、やっぱり排水溝には流しきれなかった

長い髪の毛があった。


 それを見て眩暈がした。

 もう探索しなくてもいいかなぁ~これで証拠充分だもんね。


 また 画像に撮った。



 そして寝室に入ってみると、以前来た時には見なかった

派手なタンクトップとショートパンツが散乱してた。


 嫌だったけどゴミ箱を覗いてみる。


 昨日か一昨日か、確実にやったと思われるブツがすぐに

判る形でそのまんま放棄されている。


 だらしのない女とだらしのない男。

 

 

 夫は今まで避妊具を捨てる時、ビニール袋に入れるか

紙に包んで捨てていた。



 異国に来て奔放になったのだろう。

 放蕩の限りをつくしているのだ。



 時間のある時に合う浮気とは違う。

 夫婦のように毎日抱き合って寝ているンだ。


 吐き気がした。


 ここにきて、がっつり〆る為に本当に興信所に依頼することを

私は決心した。


 そして動かぬ証拠を掴む。


 今持っている画像だけでも結構な証拠にはなるけれど

如何せん、夫と女のツーショットが撮れていない。


 私は自分の気配を消して、日本に帰った。


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