第4話 部活動のじかん
強く引かれる手に何とか転ばないようにするのが精一杯だった。階段に辿り着くもあの何かを見て同じように逃げようとする連中でごった返し、とてもじゃないが降れそうもない
「おい、アレがこっちに来るぞ!」「お前ら早く通れ!殺される!」「押さないでよ!転びそうになったじゃん!」
「流石にこれだと通れないな・・・、しゃーないから上から行かないか?」
ちょうど彼も同じことを考えていたようで、私もすぐ賛同した。
「そうだね、なら良いこと考えたんだけど、どうせ向こうに行って降りても昇降口はごった返しているはずだと思うんだよ。なら私の入ってる部室に行かないかな?いざって時に鍵も締められるし何とかなるかも」
なるべくアレから遠ざかりたいのと、出来るだけ安全な方法を考えた結果、それが一番の私の中でのベストだった。そう言うと彼は。
「分かった、取り敢えず上にあがってそこからの部室への案内頼むよ」
彼はそう言うと私の腕を引きながら駆け足で3階へとあがった。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「おー、ここだね。」
特別棟の4階にある化学講義室と書かれた部室に辿り着いた。一緒に上がった藤宮さんは息があがったようでハアハア言ってる。
「こ・・・ここのな、の?鍵、閉まってるけど」
「うーんと、ここの鍵、実は掛けていないんだよね。だからほら」
ギシッ、と軋みながら引き戸を開けた。
「色々不用心ですね・・・こんな時は助かりますけど、それよりいつまで手を握っているつもりですか?」
「ああ、ごめん!気持ち悪かったよね」
跳ねるかのように手を離し、取り敢えず教室の中に入った。
「別に汚いとかそういう事じゃ・・・」
「ん?何か言ったかな?」
「いえ、結構埃っぽいですね、でも机とかは綺麗・・・?」
入るなり部室の感想を言う彼女に結構冷静だなぁと思いつつ、綺麗になっている理由を説明した。
「ああ、基本使うところだけは綺麗にしてるよ、自分はやったことないけど」
「結構意外とズボラなんですねー、ちょっと引いたかも」
「いや座敷童子がやっててくれるから綺麗なの」
別に変なことじゃないよと補足で説明しただけなのに、藤宮さんの顔には「何言ってんだこいつ」と書かれているかのような表情で。
「座敷童子・・・、何ですかそれ、ここ科学部ですよね」
「なんじゃい人のこと座敷童子言いやって、好きにいる訳では無いわ!」
バシッ!
「うひゃっ!何ですか急にあなた誰ですか!?」
彼女の背に急に小学生にしか見えない狐の耳をつけた和服の少女が現れた。余りの驚愕をしすぎて若干過呼吸になってた。
「毎度毎度影を薄くさせないで下さいよ、初対面の人毎回驚いて大変なんですから」
「えっ、この子なに!?なんで耳ついてて制服なんですか!?要素多すぎてお腹いっぱいなんですけど!」
半ば興奮気味にマシンガンみたく次々に疑問を投げかけてくる。まぁ、初めて会う人にはいつもこうなるのだが。
「あ゛、だれが座敷童子と・・・、まあ、いい。それよりなぜここに来たんだ?まだ授業中だろ」
「いや大変なことがあって授業どころじゃ」
次の言葉を問いかける前になにやら襟元をゴソゴソし、胸元のまな板を、いやiPodを取り出した。
「(キッ)なにやら変なこと考えたか・・・、それは後で問い詰めるとして、これか?お前らが言っとるやつ」
パットに書かれている英文を見たらとたんに声を失った。なんだこれ?
「ごめんなさい、何書いてんか分かんないっす」
書かれていたのは全文英語であった。上の方に辛うじてニュースと書かれているのがわかる程度だ。
「なんで英語が分かんないんだ、世界共通の言葉と言っても過言では無いだろ、ほら、日本版出したぞ」
「それ絶対分かっててやってますよね、もう怒りますよ」
クックッと笑いながら、iPodをまた渡してきた。絶対わざとやったな、今度泣かしてやろう。
「ったく、ええっと・・・、なんなんすかこれ。エイプリルフールってこんなに早かったですかね?」
ただ思いついたことを無意味に口にした。それほど現実味のなく、全然信じれないものだったからだ。
「わしも最初はそう思ったさ、けれどな、このサイトはどっかの大統領の言うフェイクニュースとか出すところじゃなく歴史ある、それこそこんなニュースを出すはずのないところなんじゃが・・・」
「なんて書いてあったのですか!?私をこれ以上のけ者にするとこの耳引っこ抜いてライオンのフレンズたちに食べさせますよ」
「ちょい耳さわんな!、感覚繋がってるんだよ!、ええっと、書いてある事を簡単に言うと、とある国で作られた細菌兵器をテロリストが買って、それを色々なところにばらまいてるのが今日の朝わかったんじゃとよ。症状は極度の空腹、痛覚の無効化、理性が低下して力のストッパーが無くなる、非感染者が別のものに見える幻覚、ただし個人差によるが極わずかな確率で低下しなかったりする場合もある、感染経路は主に血液、体液等からで一部の動物にも伝染る。発症率は99%で治療法はまだ作ってない。お前らが大好きなバイオ系だと思えばわかりやすいだろ」
まさか・・・、と考えたが隣で震えている彼女が
「それって、あの加藤くんがなってたのともしかして・・・」
あの加藤がしていた異常な行為、それと当てはまるところが多すぎて、そのニュースが嘘ではないことの証明な気がした。
しかし、あまりにも非現実すぎて、笑みしか表情を作れなかった。
「そんな気持ち悪い顔をさらすな、で、まさかと思うがこの学校にキャリアが出たんじゃ無いよな・・・?」
あの教室ので怒ったことを一通り話そうと思い口を開こうとしたその時であった。
ガチッ、ゴン。
ガチャガチャガチャ。
コン、コンコン。
明らかにドアから音がした。この向こう側に何がいるのか、恐怖心からかとても喉が乾き、唾を飲み込んだ。
白壁の校舎 きりみ @tacatan_1
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