第20話壁
私はスマホを持ちながら、新堂さんを待っていた。
「新堂さん、お仕事終わったかな?」
トークを送ろうとしたその時、
「うわあああん〜!!」
近くのコンビニで、子供の泣き声がした。
その男の子は、コンビニの前で立って泣いていた。
「どうしたんだろう…?迷子かな?」
私はその男の子の元へ、走った。
「どうしたの?大丈夫?迷子…?」
「ぐすっ…ぐす‥っ…お兄ちゃんが…帰って…こない…。」
「お兄ちゃん?…どんなお兄ちゃんか分かる…?」
その時、後ろから声が聞こえた。
「清太!?」
振り向くと、涼汰君がコンビニ袋を持って立っていた。
「美菜…。」
「涼汰君…。」
「お兄ちゃ〜ん!!」
「清太、待たせたな。…何でここに?」
「…彼氏と待ち合わせしてて。
…待っている時、そこのコンビニで泣き声がしたから…。
だから、来たの。」
涼汰くんとはあれ以来、会わなかった。
…あの事があってから、会うのは気まずかった。
「…そうなんだ。ありがとう。」
「じゃあ、私、行くね」
「待てよ!」
涼汰君はそう言って、私を呼び止めた。
その時、清太君が私達をじーっと見ていた。
そして口を開いた。
「お兄ちゃん…。僕…、あそこの公園で遊びたい…。」
そして清太君は、公園に指を指した。
「…よし、行くか。…とりあえず、一旦話そう。」
「……」
そして私は、涼汰君について行った。
《もう今日で話し合って、終わらせる。
二度と関わらいように…》
私はそう決心した。
そして私達は、公園に向かった。
そして公園に着いた。
「よし!清太遊んで来い!」
「わあ〜い!」
そして清太君は、すべり台で遊び始めた。
その時涼汰君が口を開いた。
「…座ろ。」
「…うん。」
そして私達は、近くにあったブランコに座った。
「……」
「……」
ブランコに座った途端、二人共無言になった。
「弟さん、いたんだ…。」
「ああ、俺が高1の時父親再婚したから。
清太は俺の義理のお母さんの連れ子。」
「そう…。」
私の知らない涼汰君が、そこにいた。
「花火大会の時悪かったごめん…。
けどあの時言ったこと、全部本音だった。」
「……」
私は黙ってしまった…
(どうして…。何でそんな事今更言うの…?)
「…やめて。…どうして今更そんな事言うの…?」
思っていたことを、口に出してしまった。
「…美菜と別れた後、
俺本気で後悔したんだ…。
だけど…、忘れないとダメだと思った。
だから、今の彼女と付き合った。
でもやっぱり出てくるのは…美菜なんだよ…。」
「…やめて。…私達にはもうお互い相手がいるんだよ…?」
「分かってる…。今更こんな事言ったって、一緒に過ごした時間が帰って来る訳じゃない…。」
(そうだよ…帰って来ないんだよ…。)
「…美菜と再会した時、中学の時を思い出したんだ。」
「…」
「再会出来て嬉しかった、奇跡だと思った。」
「…」
私も涼汰君と再会した時、
時間が戻ったのかと思った。
…奇跡だと思った。
「だけど…
再会した時にはもう、
俺の知らない美菜だった。」
私も再会した時は、もう私の知らない涼汰君だった…。
清太君とのことだってそうだ…。
涼汰君の【今】を、私は知らない。
涼汰君も【今】の、私を知らない。
もうお互い【過去の人】なんだ…。
もっと遅くに出会っていれば…。
また違う道を歩んでたのかな…。
「あの後、キスした事反省したんだ…。
だけどもう一度、ちゃんと会って俺の気持ち伝えたかった…。」
「…そうだったんだ。」
「…だから今日で最後にする。今まで困らせてごめんな…。」
「ううん…。」
「…今までちゃんと…、大事に出来なくてごめんな…。」
そう言った涼汰君の顔は、悲しそうだった。
そんな顔…。見せないで…。
私は、胸が締め付けられた。
「…私も、突き飛ばしてごめんなさい…。
彼女と幸せになってね…。今までありがとう…。さようなら…。」
「ああ、新川さんも…。彼氏と幸せにな。」
「さようなら。」
これでもう最後。
《新川さん》…そう呼ばれたのが、
私達の関係が切れた合図だ。
そして私は、公園を出た。
ポタ…
その時、一粒の雫が落ちた。
「雨…?」
だけど空を見上げると、雨は降っていなかった。
頬を触ると、涙がついていた。
「え…。どうして私…。」
涼汰君と別れた後、
私も本当はずっと考えていた。
何で別れたんだろう…。とか、
どうしてもっと、涼汰君の事理解できなかったんだろうとか、
…別れた後はすごく泣いた。
けど後悔をしても…、時間は戻って来ない…。
…花火大会で再会した時、
見た目は変わっていた。
でも…
強引で、不器用で、
だけど本当は優しくて…。
そこだけが…
昔から何年経っても、全然変わっていなかった…。
私は涼汰君のそういう所が、大好きだった。
花火大会の帰り道、
突然キスをされた。
いきなりでびっくりして、
…あの時、身体が動かなかった。
だけど私は…
あの時の唇の感触が、忘れられなかった。
新堂さんに抱かれても…。頭の中は…。
…そして今更、本当の自分の答えに辿り着いた。
でももう私達には、お互い相手がいる。
だから…
これ以上はもう…
超えられない、
分厚い”壁“が私達の目の前には今あった。
そして、私達はもう決して関わることはないと思っていた。
だけど、そんな事なかった…。
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