第16話黒い心
(ヤベ…。頭が何か、クラクラする…。)
昨日の晩、
俺は、あの後そのまま髪も乾かず寝てしまっていた。
今日は昼勤からだった。
今日も雨のせいか、客が少ないのが幸いだった。
(頭いてぇ…。)
朝から頭がガンガンしていた。
(これ絶対、ヤバイやつ…。)
その時
「井上さ…ん…大丈夫…で‥すか?」
三田倉が目の前に来てくれた。
…けど視界がボヤケてきて…よく見えなかった。
次の瞬間
ガターン
「井上さん!?大丈夫ですか!?井上さん!!」
三田倉の声がはっきり聞こえた。
だけど、どんどん視界がボヤケていく…。
「井上さん!」
そして俺は…目を閉じた。
パチ
しばらくして、俺は目を開けた。
目を開けると、四角い天井が見えた。
身体を起こし辺りを見回すと、ベッドはあったが俺以外誰もいなかった。
「うっ…病院?…何で、俺…。」
ズキ
「痛え…。」
まだ頭が少し、ガンガンしていた。
その時、足元で三田倉が眠っていた。
(三田倉!?何でここに…!)
そして、三田倉が目を覚ました。
「んっ…。あれ…。私…」
子猫のように目をこすっていた。
「…起きたか?」
「井上さん!大丈夫ですか!?目が覚めたんですね!
良かった〜!病院です!熱で倒れたんですよ!
今日にはもう、退院出来るそうです!」
(…そうか。俺、熱があったのか…。)
俺はまだ少し、頭がボーッとしていた。
「あ、少し良くなりしたね!」
そう言って三田倉が、俺の額を触ろうとした。
パシン
俺は手を払い除けた。
「…三田倉、ずっといたのか?」
「はい…。心配だったので…。」
本当は嬉しい…。
けど今は…
…辛い。
俺は少し、冷たくした。
「ありがとう、…けどもう良いから帰れ。俺、寝るから。」
俺はそう言って、ベッドに入り背中を向けた。
早く…。去ってくれ…。
「…嫌です。」
「は?」
俺は思わず、身体を向き直した。
「井上さんこんなにまだ熱もあるのに、放っていけません!
私は井上さんの後輩なんですから、先輩を手助けするのも後輩の仕事です!」
「…三田倉」
お前は本当に良いやつだ。
出来る後輩で頼りになる。
今までの俺ならそれだけ分かれば良かった…。
だけど今、それ以上の感情を俺は持ってしまい、
分からなくていいことまで、分かってしまった。
だから今、お前の顔見るの辛れぇんだよ…。
「俺、一人で大丈夫だから。」
「嫌です!どうしてですか?私、そんな信用ないですか?」
「ちげぇよ!そんな訳ないだろ!…っ辛れぇんだよ!」
「…え?」
三田倉は、呆然としていた。
俺は思わず口に出してしまった。
三田倉は、突き放しても、突き放しても、俺を追いかけてくる…。
だけど追いかけられても…。
俺は、どうすることも出来ない…。
その時俺の中で一つの考えが浮かんだ。
《だったらいっそ…報われない恋なら嫌われた方が良い。》
「お前…本当に帰らない気か…?」
「はい!」
俺は起き上がり、三田倉の手首を掴んだ。
「…え?きゃ!」
ドサ
俺は三田倉を、病室のベッドに押し倒した。
「痛…!」
「お前さ」
そして両手首を、強く掴み追い被さった。
「痛…。…やめて下さい。」
三田倉は、怯えた目をしていた。
「…病室に今、誰もいないの分かってる?
…女一人ってどうゆう状況か分かってんの?」
「え?」
そう言って俺は、三田倉にキスをした。
「んっ!…ふっ…ん!」
三田倉は涙を流し、足をバタバタさせていた。
俺はしばらくしてから、唇を離した。
「ハァ…っ。…何でですか…。井上さん…。」
三田倉はそう言って、涙目になっていた。
「ま、誰もいなくて良かったじゃん。
せっかくだから最後まで楽しもうぜ。
お前もどっかでこうされるの期待してたんじゃねえの?」
「違…!やっ」
プチ
俺は三田倉の首に近づき、着ていたブラウスのボタンを外した。
「…やめて下さい!」
俺は、手を止めた。
「…これで分かっただろ?
二人きりの密室になったらこうゆう事するやつもいるんだよ。
分かったら、学習しろよ。」
パチン
俺は三田倉に頬を叩かれた。
「…俺の事嫌いになった?
ま、これが本当の俺だから。
早いとこ、知れて良かったじゃん。」
「…最低です井上さん…。…見損ないました。」
「……分かったら、早く帰れよ。」
三田倉はベットから起き上がり、持っていったバックを持った。
バタバタバタ
…そして病室から走って、…帰って行った。
三田倉に叩かれた頬が、まだヒリヒリしていた。
「…ははは。だよな…。」
好きな人とのキス
普通は嬉しいはずなのに全然、嬉しくなかった。
こんな…、自分の気持ちを踏みにじったようなキスなんか…。
叩かれた頬の痛さなんて痛くない…。
それよりも…、
三田倉に対しての気持ちを知って選んだ、
この、の応えを出した事が、
今の俺にはすごく痛い。
…三田倉を傷つけた。
そっちの方が…
俺には辛いぐらい痛かった…。
けどこれは俺が決めた事だ…。
そして俺の中で
どんどんと"黒い心"が流れ出た。
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