第12話初めてのバイト
私は自宅にいる時、晋ちゃんの事を考えていた。
どうして晋ちゃん、清羅さんの事避けているんだろう…。
秀兄ちゃんと再会した時もそうだ。
三人に何があったのか聞きたい…。
だけど私は聞けずにいた。
その時
「円花」
お母さんが声を掛けてきた。
「え?何?」
「晋一君の誕生日プレゼント、今年はどうするの?」
「え?あ…忘れてた。」
(そっか、もうすぐ晋ちゃんの誕生日か…)
「忘れてたって彼氏でしょ?」
あれから年月は経ち、9月になっていた。
「ごめん、ごめん」
「それでどうするの?お金ないなら、お母さん出そうか?」
「うーん…。」
「浴衣買ったから、お小遣いないでしょ?」
「そうだけど…。」
けど、自分のお金じゃないと意味がない気がした。
「ありがとうお母さん、でも私自分のお金で晋ちゃんにプレゼントしたい!だからバイトするよ!」
「あら、そう?円花が言うならそれが良いかもね。分かった、頑張りなさい。
じゃあお母さんは料理頑張るわ。」
「へ?料理?」
「実はこの前ね、晋一君のお母さんと電話で晋一の誕生日の話をしていたの。円花、大人になってから晋一君に会えてなかったでしょ?
その日お父さん達は、残業で遅くなるって知って、
じゃあここで、二人で誕生日パーティーさせましょうって晋一君のお母さんと決めたの。」
「ええ!?いつのまに!?けどありがとう、お母さん。」
「だから、円花もバイト頑張るのよ?」
「うん!」
こうして私は、休みの日にバイト面接を受けた。
そして、駅前のファーストフードで働く事になった。
次の日、皆に話した。
「え?円花、バイトするの〜??」
舞由香が言った。
「そう!駅前のファーストフードで!
良かったら来てね!」
「行く行く〜!!けど何でまた?」
「晋ちゃんの誕生日プレゼントを買うために、働こうと思って」
「円花えらーウチ、そんなん絶対しないわー。」
盟加が言った。
「頑張ってね、円花。」
美菜が言った。
「うん、ありがとう!」
「いつから働くの?」
舞由香が聞いてきた。
「明後日からだよ!だから晋ちゃんには、
内緒にしてて欲しいんだ。」
「りょーかい!」
そして次の日、バイト当日になった。
私は、従業員用ドアを開け、目の前にあるドアをノックした。
コンコン
「はい、どうぞー。」
中から声がした。
私はドアを開けた。
ガチャ
「失礼致します。」
中に入ると、店長が立っていた。
「三田倉さん、待ってたよ。」
「おはようございます、今日からお世話になります!
よろしくお願い致します!」
「お、元気があって良いねー!
こちらこそよろしく!
改めまして、店長の西村です!
じゃあ早速、制服届いたので、着替えてきて貰えるかな?
はい、これね!
着替え終わったら、お店に来てね!」
店長はそう言って、私に制服を渡した。
「ありがとうございます!」
私は貰った制服を受取り、更衣室で着替えた。
そして、着替え終えた後、お店に入った。
「あ、三田倉さんこっちこっちー!」
店長は手招きし、私を呼んだ。
私は店長の所へ行った。
その時、たくさんの従業員が私を見ていた。
(うっ…緊張する。)
「じゃあ、自己紹介して貰おうかな。」
「は、はい!きょ、今日からこちらでお世話になります!
み、三田倉円花です!
よ、よろしくお願いします!」
(噛んじゃった…。最悪だ…。)
その時、一人の女性が口を開いた。
「三田倉さん、初めまして!
よろしくお願いします!」
(わあ…。綺麗な人…。)
「よろしくお願いします!」
「うん、よろしくね!」
その次に、黒髪の男性が口を開いた。
「…
(あれ…、目見てくれない…、けどかっこいいな…。)
「よろしくお願いします!」
「…」
その人は無言だった。
(あ、あれ?また、目、見てくれない…)
その時店長が、口を開いた。
「こら井上、そんな無愛想な態度取るな!
ごめんね、三田倉さん。」
「い、いえ!」
「店長、多分、久しぶりに女の子が入ったから、雪都緊張してるんですよ〜!」
「…うるせーよ、梨絵」
「何よ」
(谷口さんと仲良いんだな…)
「はいはい、そこまで!」
そう言って店長が、手を叩いた。
「相変わらずだなー、お前ら」
そう言って、他の従業員達が笑っていた。
その次に、茶髪の女の子が、口を開いた。
「
(わ、かわいい…)
「よろしくお願いします!」
その次に茶髪の男性が口を開いた。
「
(ち、チャラいな…けど優しそう…。)
「よろしくお願いします!」
そしてその後も、自己紹介は続いた。
そしてようやく、自己紹介が終わった。
「…よし、じゃあこれで自己紹介は終わり!次は物の場所とか、仕事の内容とか教えないとだけど…
井上、お前が教えろ。」
店長に言われ、井上さんはびっくりしていた。
「俺…ですか?」
(え…井上さん!?)
私は少し、不安になってしまった。
「お前がいちばん三田倉さんと年近いだろ?
あ、優しく教えろよ?お前、怖いんだから。」
「……分かりましたよ。」
井上さんは不服そうだった。
「…ったく。三田倉さん、こいつ不器用な所あるけど、仕事に対してはすごく真面目だし、教え方もうまいから大丈夫だと思うから。
あ、もし何かあったら、すぐに俺に相談して。
すぐに、こいつ叱るから」
「あはは…。ありがとうございます。」
「じゃあ、行ってこい。」
「…こっち。」
「え、は、はい!」
井上さんに呼ばれ、私は後を付いて行った。
「ここは、まず休憩室。
休憩は40分、2回目の休憩は20分だから。
弁当持参していいから。」
「は、はい!」
私はメモをした。
「次、ここ従業員用トイレ、
トイレはここ使うのが基本、後ここは…」
(ひいい〜早い)
「次タイムカード、やり方はまず…」
(それにさっきから、全然顔見てくれない…。)
「あ、あの!」
「何?」
井上さんが、睨むように私に顔を向けた。
(うっ…怖い…。)
「…何でもないです…。すみません…。」
「…あのさ、分からないなら言ってくれる?
分かったフリされんの、俺嫌いなんだよ。」
そう言って井上さんは、冷たい目をまた私に向けた。
「す、すみません…。」
それから私は、あの後仕事内容を全部教わった。
あの冷たい目で睨まれるのが怖くて、
その日は一度も質問が出来なかった…。
(私、嫌われてる…?)
その時、店長の声が聞こえた。
「三田倉さん!休憩、井上と二人で行って来てー!」
「は、はい!」
(…二人で、か…。)
井上さんはスタスタ歩き、休憩室に入った。
「私も行かないと…」
私はコンビニで弁当を買って、休憩室に入った。
井上さんは先に食べていた。
「…お疲れ様です。」
「…」
井上さんは一度私の目を見た。
…がすぐにお弁当に貰った。
パキ
「…」
部屋の中は、箸を割る音しか聞こえていなかった。
(…怖いよー!)
室内はとても静かだった。
「あ、あの…」
私は、自分から話しかけた。
「何?」
(うっ…やっぱ怖い…。)
「お、おいくつですか?」
「20」
「へ、へえー。そ、そうなんですね」
「…」
そして会話が終了してしまった。
その時
ガタ
井上さんが椅子から立ち上がり、休憩室を出た。
「び、びっくりした…。」
休憩が終わり、私は仕事に戻った。
あれから、残りの仕事も教わった。
「三田倉さん、お疲れ様!もう上がって良いよ!」
店長に言われ、私は従業員の皆さんに挨拶をした。
「は、はい!お疲れ様です!お先に失礼致します!」
「お疲れ様でした。」
その時、井上さんは奥で作業をしていた。
(お礼、言った方が良いよね?)
私は、井上さんの所へ駆け寄った。
「井上さん、今日はありがとうございました!
明日もよろしくお願い致します!」
「…別に。」
「おい!井上!ったく、お前には引き続き三田倉さんの教育係頼んだからな。」
「……」
「三田倉さん、気をつけて帰ってね。」
「はい、ありがとうございます。」
私は着替えを済ませ、更衣室を出て、帰った。
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「店長ー。何で井上に教育係させるんっすか?
俺、変わるっすよ?」
「武田はチャラいからダメ。」
「え~俺見た目はそうかもしれないっすけど、女の子には一途っすよ?
彼女一筋っすもん!」
「え、武田さん彼女いましたっけ?」
「高畑ひでーな、、。ギャル系雑誌の読モと付き合ってるって話したじゃん。」
「あ、そうでしたねそういえば!名前何でしたっけ?」
「武藤盟加だよ。」
「ああ!そうでした〜!」
「あんた、何で三田倉さんに冷たいのよ。」
「うるせーよ、梨絵。」
「聞かれたくないこと言われると、昔からすぐそれだよね雪都。」
「それ以上言うと怒るぞ。」
「はいはい、分かりましたー。」
「俺は、あいつが嫌いなんだよ…。」
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「はぁ、終わった…。」
私は自転車を漕いで、家に向かっていた。
「緊張したなあ…。」
井上さん、怖かった…。
やっぱり私、嫌われてるのかな…?
これからずっと、あそこで働くのにどうしよう…。
「はぁ…。」
“初めてのバイト"は
似が重く、少し不安になった一日で終わってしまった。
「…私、大丈夫かな?」
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