百物語

 以下の話は、怖い話でもふしぎな話でもないかもしれない。

 しかし、個人的には、森鷗外の「百物語」を怪談的な意味で怖い話とするのならば、以下の話も怖い話にしてよいと思ったのだ。


 小学生のときの話。

 町内で、小学生向けの盆踊り大会があった。

 何事もなく終わったが、参加していた小学生たちの一部は家に帰らず、暗い中、となりの公園で遊んでいた。

 私は、四五人の友人たちと、雑談をしていた。 

 すると、エヌくんが怪談をひとつずつ話そうと提案してきた。

 ほかの者は乗り気ではなかったが、日頃おとなしいエヌくんがあまりにも熱心に誘うので、それではやろうか、ということになった。

 順番がまわってきたので、私は落語の死神を手短に話した。

 それで終わりかと思ったが、話者が一巡して、再度、私の番となった。

 私は、何か話さなければならないということに囚われすぎてしまい、結果、趣旨を忘れて、同じく落語の、まんじゅうこわいを話してしまった。

 私があの有名なオチを言い終えると場はしばらく無言となったが、沈黙はエヌくんの一言で破られた。

「そういうことか」

 なぜか興奮気味にオチを話すエヌくんの姿がそこにはあった。

 その後、他のグループの者が、持っていたライターで落ち葉に火をつけたところ、燃え広がってしまい、みんなで消した。

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