絶滅願望

 深淵を覗き込むものは深淵に魅入られる。某所の某人の言葉を借りて、私は総てを告白すると決めた。此処に私以外の人類は存在せず、青色の星は支配者に抱擁される。彼等深淵の精神が人類を埋め尽くし、盲目と狂乱に渦巻いた海へ導く。されど海には人類的生命など無く、支配者が紡いだ歴史だけが反芻され――ウボ=サスラに回帰する方が快楽的で痛みが無い――地獄の如き光景が広がる。神よ。旧き神々よ。封印の手助けを成した半端者どもよ。私の脳味噌に術を与える、鍵すらも忘れた愚痴の群れよ。如何か。深淵を覗く前に母の乳房でも啜るが好い。此処には悪夢だけが。支配者が拡散する電波だけが。嬉々と殺し愛される仔どもが在る。理解し難い。違うな。理解不可能だ。人類は最初から破滅を望んで在ったのか。誰に訊いても狂った嗤い。私の肉を切り刻む。何が悦ばしいのか。支配者の触手は焼くと美味なのか。某国の連中は空腹の牙を剥き――またか。私の腕を咬み千切り。再生せねば。狂気どもに貪り尽くされる前に。構築せねば。人間狂喜どもに侵蝕される前に。ああ。私か。私の名は蒼白の仮面……支配者の声が聞こえ――貴様も支配者此方側だろうが。人間の真似事を!

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