民は預言者を造る為、数多の犠牲を払った。幾度々々も肉が捧げられ、神々への供物と成った。供物は無音を貫き通し、怪物の如き神々の胃袋へ呑まれ――永劫の溶液で融解と再生を繰り返す。可笑しい。民の一人が呟いた。何故、神々は預言者を創造しないのか。違う民が吐いた。供物が足りないのだ。人間の魂ではムングを満たせぬ。民が涌い涌いと言葉を荒げる。ならば人間は駒だと嗤うのか。神は人間を玩具だと楽しむのか。長が哄笑し、狂乱する皆に叫びを――黙れ! 神々に供物を捧げる事で生命は成り立つと知るが好い。我等人類は神々の仔で在るぞ。仔が親に贈らねば不幸が訪れる。さあ。皆の意見は死んだ。神を謳い続けるのだ――預言者は造られず、民は日々減って逝った。猟犬が過ぎ、遂に長の貌だけと成り果てる。白昼堂々。太陽アザトース堂々。彼は最期の祈りを唱えた――神よ。異厭! 異厭! 神々よ。如何か。我等に炎を齎し給え。預言には必要不可欠な栄養素だ。神よ。神の為ならば。神々の為ならば。我は死も恐れず! 失礼。我の愚言を忘れ給え。は慈悲なのだ。如何か。我にも慈悲を――長は現状を忘れない。忘れられない。何故か。莫迦には要らない。


 猟犬が回転する。

 は不死の如く。

 鎖炎アフォーゴモンの逆を繰り返す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る