地獄の崩壊

 俺を嘲笑うのだな。貴様は俺の何を嘲笑うのだ。応えるが好い。答えるが好い。糞餓鬼の如き癇癪が厭なのか。怪物の如き精神が忌まわしいのか。秩序に束縛された貴様よりも真面だと思考すべきだ。麻縄に縛られた存在は歓びに溢れ、俺に酷い憤慨を齎す、酷い悲しみを齎す。酷い朦朧に襲われる――規則に溺れる者。無法を退ける物。貴様は物体だ。俺の信仰を拒絶する、脆い土の壁で在る。死だ! 貴様を解放するには恐怖以外に在り得ない。人類が最も身近に覚える宇宙的恐怖未知こそが最善よ。ドウセ。此処にも其処にも彼方にも絶望しか在り会哭い故に――会うのは容易い。哭くのも容易い。されど仮面が一番だった。不要だったのだ。俺は俺に嵌められた、地獄のような仮面現実を破壊する魂。真に抱くべき逸脱衝動の術を掴んだのだ。さあ。皆々貴様未知を与えよう。楽園にも地獄にも往けぬ、逝くだけの日々を謳歌しよう。崩壊だ。総ての崩壊を喇叭下級の神々で報せ、人類の歴史を冒涜するのだ。破滅せよ。自滅せよ。貴様に嘲笑う権利が在るならば、俺には哄笑死を咀嚼する義務が在る筈だ。食屍鬼グールの神に誓う。冷酷の怪物に誓う。俺は肉を撒き散らすのだ。俺は精神を撒き散らすのだ。無間地獄に誓う。俺は崩壊の音を撒き散らす愚生り。貴様の魂――地獄で腐り果てた屑人形――に幸福地獄在れ! 俺は脳味噌に貴様を収容する。脳味噌が地獄だと。何番煎じの所業なのか。弱音を吐こう。俺は疲弊した。涙を呑み込むのも飽き々々した。結局、世に地獄など無いのだ。貴様を堕とす方法など……蛮勇など無いのだ。畜生。神よ……窓に手を翳せ。俺は神の掌に墜ちるべく、硝子を撲り割って……ああ。綺麗な三日月嘲笑へ。

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